木曽川の絶滅危惧種 イタセンパラ
イタセンパラは日本固有の淡水魚で、国の天然記念物に指定されています。板のように平らで(イタ)、鮮やかな(セン)、腹をもっている(ハラ)ことが、名前の由来といわれています。タナゴの仲間であるイタセンパラは、「ワンド」と呼ばれる河川敷内の水たまりをすみかとし、二枚貝の中に産卵します。しかし、密漁や外来種の増加、産卵のために必要な二枚貝の減少、生息環境の悪化などによって年々その数の減少が深刻化し、現在では富山平野と淀川水系、濃尾平野の木曽川など限られた場所でしか見つかっておらず、環境省レッドリストで絶滅危惧種IA(ごく近い将来に絶滅する危険性が極めて高い)に指定されています。
三井住友信託銀行は、2016年7月、愛知県立木曽川高等学校総合実務部の生徒など25人を対象に、ICT(情報通信技術)を活用した環境教育の授業を開催しました。総合実務部では、イタセンパラの定期調査やパトロール、イタセンパラの飼育展示に取り組んでおり、2016年9月には、日本魚類学会での研究発表を予定しています。今回のESDプロジェクトは、生徒たちの研究サポートを目的に行われました。
授業では、世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ 学芸員の池谷氏がファシリテーターを務め、木曽川流域の豊かな自然とその歴史、河川と私たちの暮らしのつながりやその変化が生態系に与えた影響などについて、映像教材などを用いて説明しました。
生徒たちは、かつて日常的に見ることができたイタセンパラが、河川整備や外来種の増加、密漁の影響で減少し、一時は絶滅したと思われていたこと、個体が再発見されてからは地域の人たちが力を合わせて個体の保護・増殖に取り組んできたことを学びました。
池谷氏は、次世代を担う生徒たちに向けて「イタセンパラが多いということは、川全体の自然が豊かだということ。まずはイタセンパラが安心して暮らせる環境をつくろう」と呼び掛けました。授業を受けた生徒たちからは「イタセンパラだけでなく、さまざまな生物が住みやすい環境づくりをしていくことが今後の課題だと思った」「初めて聞くことばかりで驚いたが、自分の住む地域について知ることができて良かった」などの感想が寄せられました。