新潟県新潟市にある「佐潟」は、砂丘のくぼ地に水が溜まってできた国内最大の砂丘湖といわれています。外部から流入する河川はなく、水質は淡水で、水源は周辺の砂丘地からの湧水や雨水に頼っています。ここでは貴重な水生植物のほか、200種以上のさまざまな鳥類が確認され、特に冬は渡り鳥の大切な中継地点となっています。中でもコハクチョウの越冬数は全国有数で、毎年2,000~3,000羽が越冬します。佐潟は水鳥の生息地として国際的に重要であると認知され、1996年ラムサール条約登録湿地になりました。

三井住友信託銀行は2017年7月、新潟市立赤塚中学校の生徒約40人を対象に、ICT(情報通信技術)を活用した環境教育の授業を実施しました。赤塚中学校は佐潟に隣接した場所に位置し、佐潟に飛来する白鳥の保護活動や、「潟普請(かたぶしん)」と呼ばれる潟の定期的な保全・整備活動、湿地に生息する生きものの飼育や調査に取り組んでいます。今回のESDプロジェクトは、生徒たちのこうした活動をサポートし、佐潟の大切さを地域へ広めるためのお手伝いを目的として企画したものです。

授業では、公益財団法人日本生態系協会の関事務局長がファシリテーターを務め、佐潟の水辺環境が生きものと人の暮らしにどのような意味を持っていたのかを説明しました。また、天然記念物「トキ」をシンボルとした佐渡市の稲作の取り組みについても紹介し、「自然と共生する地域づくりとはなにか」と問いを投げかけました。

公益財団法人日本生態系協会の関事務局長がファシリテーターを務めました 公益財団法人日本生態系協会の関事務局長が
ファシリテーターを務めました

生徒たちは、普段自分たちが整備している佐潟がなぜ国際的に評価されているのかを改めて知るとともに、「潟」が地域の生態系ネットワークの形成に不可欠であること、新潟の生態系保全に大きく貢献していることを学びました。

トキをシンボルとする佐渡市の稲作 トキをシンボルとする佐渡市の稲作

授業を通じ関事務局長は、「トキ・コウノトリに代表される高次消費者が確認できれば持続可能な環境といえる。いったん自然のバランスを崩してしまうと、どれだけのお金と労力をかけても取り戻すことができない。皆の周りには"里潟"という考え方が根付いている。それを大切にしてほしい」と呼び掛けました。生徒たちからは、「生活の質の向上のためによかれと思ってやったことが、実は環境に悪影響を与える場合があることを知った」「全ての生きものにとって完璧な環境づくりは難しいかもしれないが、一つでもよいことを増やし、よい潟づくりをしたい」等の感想が寄せられました。

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