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高金利は家計所得を守る?

戦後初めて空席になっていた日本銀行総裁の席が、4月に入ってからようやく決まりました(副総裁と政策委員それぞれ一人分は、4月上旬現在まだ空席です)。
与党が提出した人事案に野党が反対し、何人かの総裁・副総裁候補が否決されましたが、野党が候補者の一部を否決した理由の中に「過去の低金利政策で家計の所得を奪った。だから不適格だ。」というものがありました。「金利を低くしたから家計が本来受取るべき利子を受取れなかった」というのがその趣旨で、「90年代前半の預金金利が維持された場合と比べると、家計が失った利子所得は数百兆円」という指摘もされているようです。この考え方は正しいのでしょうか。

過去10年ほどの間に日本が経験した景気後退局面に、97年からの金融システム危機の時期や、2000年終わりからのITバブル崩壊があります。この時期のことを記憶している人は多いでしょう。このような景気後退局面で「家計の利子所得を守るため」として金利を下げなければどうなるか、少し考えてみましょう。

確かに、預金を持つ人の利息は減りません。その点では家計にメリットがあります。これが「低金利が家計所得を奪った」という主張の前提になっているわけですが、重要なのはここから先の動きです。あれだけ景気が悪化した時期に金利が下がらなければ、支払金利負担でより多くの企業が倒産し、更に多くの人が失業したのは確実です。そうすると、家計所得の中核である雇用所得を失う人が急増します。
持っている預金から得られる利子は減りませんが、一般世帯が保有している預金額は、400〜500万円というケースが一般的です。もし預金金利が3%未満に下がらないようにしたとしても、得られる利息はせいぜい年間15万円です。こんな額では到底生活できませんから、失業すれば500万程度の貯蓄が底をつくまでに、それほど長い時間はかかりません。仕事から得る収入だけではなく、預金からの利息もゼロになり、あっという間に生活に困るようになります。また、もっと経済的に弱い立場にあって生活費のために借り入れをしている人は、金利上昇で更に厳しい立場に追い詰められてしまいます。

つまり、景気が悪くなって金利を下げるべき時に「家計の金利収入が減ってはいけない」という理由で金利を下げないと、失業して雇用所得がゼロになるだけでなく、貯金の取り崩しを余儀なくされることで金利収入までも失ってしまう人が増えるのです。この間、失業率の増加とともに景気悪化ペースは加速しますから、株などのリスク性資産の時価も下落し、こういった資産の保有者は損失を被ることになります。
こう考えると、「低金利が家計所得を奪った」というのは、預金金利という面しか見ていない一面的な考え方と言わざるを得ません。「90年代前半の預金金利が変わらなかったとすると…」という前提も、全く意味がないことがわかるでしょう。

金利の上げ下げ一つとっても、実際の経済においては、多くのところに様々な影響が出ます。新聞などでこういった情報を読む際、あるいは経済の動きを考える際には、一面的な見方にとらわれないようにしたいものです。

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