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原油価格上昇の影響を考える
−第1次・第2次石油危機との比較から−

原油価格が上昇し続けています。国際的な指標であるニューヨークの原油先物価格(WTI)は一時1バレル=140ドルを超え(2008年6月末現在)、この1年間に2倍の水準となりました。国内ではガソリン価格が1リットル=170円台(2008年6月末現在)となり、食料品価格や運送費を押上げる要因ともなっています。

原油価格の上昇と言えば、1973〜1974年の第1次石油危機、1979〜1980年の第2次石油危機を思い出される方も多いと思います(→図1)。
第4次中東戦争を機に、原油価格が1バレル=3ドルから11〜12ドルに上昇した第1次石油危機時には、「狂乱物価」と言われるほど物価が急騰し(例:食パン1斤50円→90円、油揚げ1枚10円→20円)、消費者のパニック的な買いだめ行動によってスーパーから洗剤やトイレットペーパーが消え、経済成長率は戦後初めてマイナスとなりました。
イラン革命による中東情勢の悪化から、原油価格が1バレル=30ドル超に上がった第2次石油危機時には、ガソリンスタンドの休日一斉休業、エレベーターの使用制限、ネオンサインの消灯、“省エネルック”の登場(ほとんど普及しませんでしたが)など、世相は省エネ一色となりました。

物価の推移(前年同期比変動率)

(注)08年2Qは08/4 (資料)日本銀行「企業物価指数」 総務省「消費者物価指数」

こうした往時の出来事と比べると、現在はまだ比較的落ち着いた状況です。モノ不足が起こっているわけではなく、消費者物価上昇率も1%程度です。ガソリンスタンドやエレベーターは休日でも稼働しており、景気も停滞気味ではありますが、大崩れはしないだろうとの見方が大勢です。
原油価格が未曾有の水準まで高まったにもかかわらず、さほど大きな混乱や影響が見られないのではなぜなのでしょう。

まず、原油価格が実はさほど上がっていないことが挙げられます。私たちがメディアで見聞するWTI原油価格は、 1.ニューヨーク商品市場における、2.先物価格であり、3.ドル建てで見た価格−ですが、私たちが実際に受ける影響の度合いは、1.日本の港に到着する、2.先物ではなく取引時点の、3.円建てで見た価格−が目安となります。
こうした値動きを示す輸入原油価格の推移を見ると、4月は1キロリットル=63,745円となっています。今回の上昇局面以前のピークが56,960円(1982年11月)ですから、WTIベースでは約4倍になったように見える原油価格も、輸入原油価格で測ると12%高くなったに過ぎないということになります(→図2)。
これは、1.輸入原油価格には、原油価格が大幅に上昇する前に締結された長期契約によるものが含まれていること、2.円レートが第1次石油危機時(1ドル=280〜290円)、第2次石油危機時(1ドル=210〜240円)と比べて、大幅な円高水準となっていること(1ドル=103〜110円)−によるものです。

輸入原油価格の推移

(出所)日本経済新聞デジタルメディア「NEEDS Financial QUEST」

また、輸入している原油量も90年代半ば以降はほとんど横ばいであり、その量も2007年度では過去のピーク(1973年度)より16%も少ない水準です(→図3)。この間の経済規模の拡大を考えると、日本の経済活動における原油の占めるウェイトや影響度はかなり低下していると考えられます。

原油輸入量の推移

(資料)財務省「貿易統計」

さらに、日本経済は原油価格上昇によって海外に流出した所得を取り戻す術を身につけています。
貿易収支の推移を見ると、第1次・第2次石油危機時には、原油価格上昇に伴う輸入金額の増加により、貿易収支は赤字に転落しました。しかし今回は、輸入金額は増えましたが輸出も伸びたことから、あれだけ原油価格が上昇した2007年度でも貿易収支の黒字幅は拡大しました。
また、対外純資産の積み上がりにより(日本は世界一の対外純資産保有国です)、海外との利子・配当の受払いを示す所得収支は、近年は黒字幅が大幅に拡大しており、2005年以降は貿易収支黒字を上回っています。原油で失った所得を、海外からの利子・配当収入で埋め合わせているわけです(→図4)。

貿易収支と所得収支の推移

(資料)財務省「貿易統計」 日本銀行「国際収支統計」

今回の原油価格の上昇は、1.中国、インドなど新興国の需要が大幅に増加している、2.新たな油田開発など供給力増強がすぐには見込めない、3.いわゆる投機マネーなど金融要因が加わっている−など第1次・第2次石油危機時には見られない構造的な要因を内包しており、より長期化する可能性もあります。
このため、日本経済や私たちの暮らしに今後どのような影響が出てくるのか予断を許しませんが、少なくとも原油価格上昇に対する耐性は、かつてよりもかなり備わっていると見て良いでしょう。

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