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消費者物価の先行きをどう見るか

5月の全国消費者物価(生鮮食品除く)上昇率は前年同月比+1.5%となりました(図1)。
消費税率引き上げ時を除けば、約15年ぶり(1993年3〜4月)となる高い伸びです。暫定税率が復活したガソリン、食パン・マヨネーズ・チーズなど食料品価格が大幅に上昇したことが主な要因ですが、この背景には、原油・主要農産物など、輸入原材料価格の高騰があることは言うまでもありません。

ついこの間までデフレ、デフレと騒いでいたのに、近い将来、インフレの世の中が来るのでしょうか。今回は、今日と同様に原油価格高騰に見舞われた第1次・第2次石油危機時と比較しながら、物価上昇の中身を分析し、今後の推移を考えてみましょう。

消費者物価上昇率の推移(除く生鮮食品、前年同月比)

(資料)総務省「消費者物価指数」

物価には、消費者物価、企業物価、輸出入物価など様々なものがありますが、「輸出品や在庫品を除いた国民が直面する物価」という観点に立つと、1.国内で生産された国内向け商品の物価(国内物価)、2.海外から輸入された商品の物価(輸入物価)−に分けられます。この1.と2.を総合的に表した物価(少々難しい用語ですが「国内最終需要デフレータ」と言います)の動き、並びに1.と2.がそれぞれどのくらい同デフレータを押上げたかを見ると、次のことが分かります(図2−1.2.3.)。

国内最終需要デフレータ変動率の変動要因

(注)国内最終需要=GDP+財・サ輸入-財・サ輸出-民間在庫品増加

(資料)内閣府「国民経済計算年報」

まず、今回は国内最終需要デフレータの上昇率が低い水準に止まっています。第1次石油危機時には25%弱、第2次石油危機時でも8%強の上昇率だった同デフレータの上昇率は、今回は1%弱に過ぎません。

また、原油価格高騰という条件が同じである中で、今回は輸入物価が国内最終需要デフレータを押上げる度合いがかなり小幅なものとなっています。これは、輸入物価の上昇率が第1次・第2次石油危機時には80%前後まで高まったのに対し、今回は円高ドル安の進行も手伝って、20%程度に止まっているためです。また、日本の輸入に占める原油の比率がかなり低下した(代わって製品の輸入比率が上昇)ことも、原油価格上昇の輸入物価への波及を緩和しました。
今後も、為替レートがよほど円安に振れない限り、輸入物価が国内最終需要デフレータを押上げる度合いは第1次・第2次石油危機時に届くことはないでしょう。
さらに、国内物価を見ると、第1次石油危機時には国内最終需要デフレータを10数%、第2次石油危機時でも数%押上げています。
これは、第1次石油危機時には春闘賃上げ率33%(昭和49年)に象徴されるように、物価上昇を取り返すべく労働側が賃上げを要求する→企業側はその要求を受け入れる→企業側は製品価格を賃上げ分以上に引き上げる・・・という具合に、賃金と物価のスパイラル的な上昇が起こったためです。輸入インフレが国内インフレを誘発し、悪性インフレを招いたと言えます(第2次石油危機時には学習効果が働き、春闘賃上げ率を数%に止めたため、国内インフレを低レベルに抑え込むことができました)。
これに対して今回は、国内物価は国内最終需要デフレータを引き下げる方向に寄与しています。消費者物価や企業物価は表面上プラス幅が拡大していますが、「企業は原材料費の増加分を製品価格に転嫁しきれていない」「本来、もっと上がっていいはずの製品価格が上がっていない」という意味でのデフレが続いているとも言えます。

このように見ると、今後、物価上昇がさらに加速するかどうかはは、海外の原油市況や円相場だけではなく、私たち自身の行動にもかかっていると言えます。
企業が製品価格を原材料コストアップ分以上に引き上げる(いわゆる便乗値上げ)、家計は企業体力を超えた賃上げを求める−など、企業と家計が負担を押し付けあうようになると、国内インフレが鎌首をもたげ、輸入インフレと相俟って私たちの生活を圧迫することになります。インフレの加速によって日銀は利上げに踏み切らざるを得ず、金利上昇や株価下落を招く恐れもあります。

現在は輸入原材料価格の上昇を、一部は企業収益を減らし、一部は家計が物価上昇を受け入れることによって吸収しています。賃金もやや増えてはいるものの、物価上昇をカバーしきれないという微妙?な程度であり、企業と家計が痛みを分かち合っている形です。
原材料価格上昇という環境下で、マクロ的に見れば日本経済は上手く対応しているとも言えるでしょう。

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