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米国住宅金融公社問題とは何か

サブプライムローン(米国における低所得者向けの住宅ローン)の焦げ付き増加に端を発した米国金融市場の動揺は、発生から1年経過した現在も収束するには至っていません。
サブプライムローンの延滞率は20%前後にまで上昇しており、所得や信用力の高い階層向けの住宅ローンであるプライムローンにおいても、延滞率がじわじわ上昇しており、最近10年間では最も高い水準となっています。

今年前半には、住宅ローンを裏付けとした証券化商品の劣化によって、同商品に対する保険・保証業務を行っているモノラインという業界に対する不安が広がり、市場関係者を緊張させました。同業界に対する資金負担が増して財務状況が悪化し、モノライン各社の格付が低下すると、モノラインの保証を受けている証券化商品の格付が低下し、金融機関に多額の損失が発生するのではないかと懸念されたためです。

さらに、最近は米国住宅金融公社2社−ファニーメイ、フレディーマックという愛らしい俗称がついています※1−の経営不安が新たな懸念材料として浮上しています。
住宅金融公社は政府後援金融機関※2(GSE:Government-sponsored enterprises)の主要機関であり、民間の銀行・ノンバンクが実行した住宅ローンを買い取り、これを裏付けとした証券化商品の発行・保証を主要業務としており、米国における住宅ローン証券化市場の中核的存在です。米国の証券化市場の8割弱は住宅ローン関連ですが、その約3分の2は住宅金融公社によるものです。

昨年来、この住宅金融公社2社が保有している住宅ローン関連資産が劣化し、多額の損失が発生しました。この住宅金融公社の経営状態や、住宅金融公社が発行・保証した証券化商品に対する不安の高まりが、米国の金融市場を揺るがす恐れがあるのは次のような事情があるためです。

第1は、その規模の大きさです。
住宅金融公社が発行している証券化商品は約4兆6,000億ドル。サブプライムローン(約1兆5,000億ドル)をはるかに上回るものとなっています。さらに自分自身の信用力を拠り所に発行している社債も約2兆9,000億ドル※3に上ります。

第2は、それらの証券化商品や社債を保有している主体が多方面に渡っていることです。
米国内だけでも、一般個人(約8,400億ドル)、商業銀行(約1兆ドル)、機関投資家※4(約9,900億ドル)、投資信託(約9,000億ドル)、さらには住宅金融公社自身(約7,200億ドル)が買い手となっているだけでなく、欧州・日本などの海外投資家も約1兆5,000億ドル保有しています。住宅金融公社が発行した証券化商品・社債の格付が大幅に下がると、一般個人や機関投資家は含み損を抱え、内外の金融機関は多額の損失を計上する可能性があります。

図 米国金融住宅公社関連の資金調達・運用

(注)GSEsとAgency-and GSE-backed Mortgage Poolsの合算値。

(資料)米国FRB「Flow of Funds」

このため、米国政府やFRBは住宅金融公社の信用力補完に全力を上げ、7月下旬には、債務保証、資金繰り援助、必要と認められた場合の資本注入−などを柱とする支援策をまとめました。これによって市場の動揺は一応の沈静を見ました。

このような経過を見ると、問題の根源は、サブプライムローンのみならず米国の住宅ローン全体が劣化し続けていることです。この間、雇用情勢の悪化、物価の上昇など米国景気は後退色を強めており、米国の住宅ローンの質を巡る環境は厳しい状況が続いています減税の実施というプラス材料はありましたが、景気浮揚効果は一時的との見方が大勢です。

これまでのところ、米国の政策当局と金融機関の対応はともに迅速かつ大胆なものであり、今後の行方を過度に悲観する必要はないと思われますが、米国ひいては世界の金融市場の動揺が収まるまでには、もう少し時間がかかりそうです。

  • ※1 ファニーメイは連邦住宅抵当公庫(FNMA)、フレディーマックは連邦住宅貸付抵当公社(FHLMC)。この2社以外の住宅金融公社としては連邦住宅貸出銀行(FHLB)がある。
  • ※2 住宅取得促進、農業・教育振興など公共的政策推進を目的とした民間金融機関。“民間”ではあるが、連邦政府が設立した経緯や法的な位置付けから、政府後援金融機関と称され、連邦政府から「暗黙の保証」を受けると考えられることが多い。
  • ※3 住宅金融公社2社を含むGSE全体の発行額。
  • ※4 生命保険、年金基金、公務員退職基金。

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