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米国経済の3つの困難・3つの希望

世界的な金融危機と景気後退に対する懸念が急速に強まる中、先進各国は、(1)10カ国の中央銀行の協調利下げ、(2)個人預金の全額保護、(3)銀行への公的資金注入、(4)短期金融市場における上限無しのドル資金供給−など、文字通り“何でもあり”の施策を矢継ぎ早に打ち出しました。
これを受けて、短期金融市場の緊張はやや緩和し、株価はまだ上げ下げの波が大きいものの、底抜けする恐れは小さくなりました。

それでも市場では「金融市場の混乱や信用収縮がやや収まっても、景気自体が悪くなってしまったので、事態の改善にはまだ相当の時間がかかる」という見方が大勢です。確かに今日の事態を招いた震源地たる米国経済を見ると、次のような3つの困難に直面しており、景気回復、株価上昇につながる道筋はまだ見えてきません。

第1は、実体経済と金融の負の連鎖です。
これまでは、銀行の貸出態度が厳格化する→企業や個人の経済活動を制約する−という金融から実体経済に向かう悪影響が心配されました。今後は、景気悪化に伴い失業率が上昇する→家計向けのローン(住宅ローン、オートローン、クレジットカードなど)の延滞率が高まる→家計向けローンを裏付けとした証券化商品の質が劣化する→銀行に損失が発生する−というような実体経済から金融へ向かう悪影響が心配されます。

第2は、金融商品と時価会計の悪循環です。
時価会計とは、保有している資産の価格を決算時の時価で評価して、それが取得時の価格より低くなっていれば、評価損を計上する会計手法のことです。
今後の景気悪化により、株式や証券化商品など金融商品の価格が下落すると、金融商品を保有している銀行に評価損が発生する→銀行やファンドが保有している金融商品を投売りする→金融商品の価格が一層下落する−という悪循環に陥ってしまいます(この動きは昨年来、世界の金融市場で続いています)。

第3は、財政と金融の矛盾です。
米国内では、景気を早く立ち直らせるべく、減税など追加的な財政支出を求める声が徐々に強まっています。しかし、今春実施された大型減税の影響もあって、連邦政府の財政見通しは2008・2009年とも大幅な赤字が見込まれています(→図1)。今後、追加的な減税を実施すれば、米国の財政事情はさらに悪化し、これは米国国債市場の市況悪化要因、すなわち国債利回り(長期金利)の上昇要因となります。
金融政策面では、金利面から景気回復や金融システムをサポートすべく、米国政策金利は5.25%→1.00%まで引き下げられ(11/4現在)、さらなる利下げ観測も台頭しています。減税など財政出動は、こうした金融政策の効果を打ち消してしまう恐れがあります。
ちなみに米国の長短金利推移を見ると、大胆に引き下げられた政策金利とは裏腹に、米国10年国債利回りの低下幅は小幅で、住宅ローン金利はほぼ横這いとなっています(→図2)。住宅ローン金利が下がらないどころか、上昇するようなことになると、住宅ローンの延滞率をさらに高めてしまうかもしれません。

米国の連邦政府財政見通し

米国政策・長期・住宅ローン金利の推移

このように考えると、米国経済は悪化の動きが止まらず、世界経済は底なし沼に落ち込んでいくかに見えますが、米国経済及び世界経済をつぶさに見ると、これを食い止め、回復のきっかけを作る希望も拾い上げることができます。

第1は、企業部門はさほど大きな痛手を受けていないことです。今回の米国の景気後退においては、家計部門は大きな打撃を受けました。しかし企業のバランスシートは健全であり、企業収益の水準も過去最高圏内にあります。

第2は、新興国の経済成長率は高めの水準を維持することです。高成長を続けた新興国経済も、先進国経済の景気後退の影響からは無縁ではなく、成長率はスローダウンしてきました。それでも、IMFの世界経済見通し(2008年10月)によれば、アジア地域(除く先進国)の成長率は、2008年:8.4%→2009年:7.7%と、先進国の1.5%→0.5%をはるかに上回るものとなっています(→表)。

IMFの世界経済見通し

第3は、原油価格が大幅に下落していることです。国際指標となるニューヨークの原油先物価格は、11月上旬現在1バレル=60〜70ドル前後で推移しており、ピーク時の半値程度となっています。先進国経済の景気後退の要因となっていた産油国への強制的な所得移転は、一服したと言えます。

こうしたことを考えると、米国経済回復のシナリオとしては、(1)米国のグローバル企業が新興国市場で堅実に稼ぐ、あるいは同市場向け輸出を伸ばす、(2)これによって米国内の生産・雇用が回復する、(3)家計部門の所得が持ち直す、(4)住宅需要・住宅価格が底入れする、(5)銀行の損失が止まる−という展開が描けます。
中国向け輸出の急拡大を機に景気が回復し、これが不良債権処理を後押しし、政策効果とあいまって金融システム不安を払拭させた90年代末の日本経済と似た姿です。

今回の金融危機は、米国のサブプライムローン問題が契機となり、経済のグローバル化がそのマイナスの影響を世界に広げましたが、これを救うのも経済のグローバル化ということになるのでしょうか。

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