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主要国の政策対応の効果をどう見るか

世界経済の落ち込みと金融危機はさらに深刻の度を増しています。日本でも、鉱工業生産や輸出数量が急速に低下し、大企業の業績見通しも大幅減益あるいは赤字転落に修正されるところが相次いでいます。

こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)は事実上のゼロ金利政策に踏み切り、日本銀行も政策金利を0.3%から0.1%に引き下げ、企業のコマーシャルペーパー(CP)買い切りという「異例中の異例(白川総裁)」の措置も決定しました。
すでに欧米主要国では様々な政策対応がなされており、米国のオバマ次期政権も数十兆円規模の経済対策を策定すると見込まれています。主要先進国の政策対応のメニューはほぼ出揃ったと見てよいでしょう。
「史上空前の世界的規模の経済金融危機」に対する「史上空前の世界的規模の政策協調」はどのような政策効果を上げるのでしょうか。世界経済は現在の危機的な状況を脱することができるのでしょうか。

世界経済は次の3つの問題に直面しています。
第1は、金融市場の機能不全です。換言すれば、世界の金融市場は経済実態に即した適正な価格を発見できなくなっているということです。
米国の社債市場では、AAAクラスの企業ですらバタバタ倒産することを想定したような価格(=クレジットスプレッド)が付いています。欧州のインターバンク市場では、そもそも民間銀行同士の取引が行われず、流動性が枯渇する状況が続いています。いずれも互いに疑心暗鬼となり、少々リスクを取ってでもリターンを得ようという市場参加者がいなくなったことが主因です。

第2は、世界的な自律的景気後退です。
景気が良くなるには需要の創出(有効需要)が不可欠ですが、それには企業・家計部門が支出を増やす必要があります。しかし現在は支出を増やすにも“先立つもの”たる所得が減っているので、支出・需要はむしろ減るという状況です。
世界経済が、金融危機や米国の景気後退を契機に、こうした所得と需要の悪循環に入ってしまいました。

第3は、金融と実体経済の負の連鎖です。
これは、借りる側(企業・個人)の業況が悪化し、債務返済可能性が低下する中で、貸す側(銀行)においても、サブプライムローン問題以降の損失拡大により、リスク引き受け力の源泉である自己資本が細ってきたためです。最も顕著に起こっているのが米国で、米国の銀行は住宅ローン、クレジットカード、オートローンなど家計向けローンの審査基準を厳格化しており、消費・住宅建設・乗用車販売の低迷を招いています。

出揃った主要国の政策対応は、「後手に回った」「規模が小さい」など評判は今ひとつですが、その中身を見ると、十分に良く考えられツボを押えたものと評価できます。それは、世界経済が直面する上記3つの症状に合った処方箋を用意しているためです。

まず「金融市場の機能不全=民間の銀行・投資家におけるリスクの取り手の不在」に対しては、政策当局自らリスクの取り手としての役割を果たそうとしています。米国・ドイツ・英国では金融機関の新規発行債務の政府保証、米国ではFRBによるCP買取制度の創設が打ち出されました。各国中央銀行の協調によるドル資金供給のスキームも立ち上がり、流動性不足に対する懸念を和らげようとしています。

「世界的な自律的景気後退=有効需要の大幅減」に対しては、政策当局が積極的に需要創出に乗り出しています。米国では前述のように大型景気対策が打ち出されると見込まれるほか、英国は3兆円弱の付加価値減税を決め、ドイツでは雇用対策を主眼に6兆円強、中国では住宅建設・農業基盤整備を中心に57兆円の経済対策が実行されようとしています。

「金融と実体経済の負の連鎖=銀行の自己資本の減少」に対しては、資本注入が米国(大手行やAIG等に30兆円)、英国(大手行3行に5兆円)、ドイツ(10兆円の資本注入枠確保)、日本(金融機能強化法成立)で実施されつつあります。

このように見ると、世界的規模で実施されつつある政策対応は、問題の根源に正面から立ち向かうものとなっており、相応の政策効果が徐々に現れてくることが期待されます。今後公表される各種経済データは、2009年1−3月期のものが出る同年5月下旬までは相当厳しい数字が並ぶでしょうが、その後は政策効果の発現によって、悪化の度合いが緩和するものも散見されると予想されます。

ただ、それが景気や金融市場の順調な回復・改善につながるかどうかは不透明です。米国の家計が負債削減に本腰を入れれば、米国の個人消費は容易に立ち直らないかもしれません。また、投資銀行モデルの消滅や各種規制強化によってリスクマネーが十分供給されず、需要創出を抑制してしまうかもしれません。

「大恐慌突入」「世界(日本)経済崩壊」といった過度な悲観論に振り回される必要はありませんが、まだまだ慎重なスタンスは崩せないようです。

表:世界経済の3つの問題に対する世界各国の政策対応

1.金融市場の市場機能喪失に対して
→政府・当局がリスクを取る
2.景気後退に対して
→政府が需要を創出する
3.実体経済と金融の負の連鎖に対して
→銀行の貸出余力を創出する
米国
  • 金融機関の新規発行CP等を政府保証。
  • FRBによるCP買収制度創設。
  • 政府による住宅ローン証券化商品購入。
  • オバマ次期政権、数十兆円規模の景気対策策定へ。
  • 大手行・AIG・地銀に約30兆円の資本注入。
  • 緊急経済安定化法に不良債権買取を規定(実施は当面凍結、ビック3救済に転用?)。
ドイツ
  • 銀行間融資に対する政府保証(約50兆円)。
  • 6兆円強の財政支出(雇用対策、減税等)。
  • 約10兆円の資本注入枠を確保。
英国
  • 金融機関の新規発行債務を政府保証。
  • 付加価値税率の引き下げ等(3兆円弱)。
  • 大手3行に約5兆円の資本注入。
日本
  • 日本政策投資銀行通じたCP買取検討。
  • 日銀によるCP買取。
  • 定額給付金(2兆円)。
  • 金融機能強化法成立。
その他
  • 中央銀行協調によるドル資金供給(各国)
  • 57兆円の財政出動(中国)。
 

(資料)内閣府「世界経済の潮流2008年II」、各新聞報道より作成。

※本資料は、作成時点(2008年12月24日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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