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銀行貸出はなぜ増えているのか

世界的な経済金融危機は未だ沈静化の兆しが見えず、日本でも景気後退は深刻の度合いを強めています。昨年10−12月期の実質成長率(速報値)は戦後ワースト2の▲12.7%(年率換算)となり、企業業績も大幅な下方修正が相次ぎ、倒産件数も2桁の増加が続いています。

ところがこうした中、銀行貸出が増加しています。日本銀行「貸出・資金吸収動向等」によると、2007年半ばから2008年初にかけては概ね横這いだった銀行貸出残高は、2008年半ば以降徐々に伸びを高め、2008年12月には前年同月比+4.1%と92年の統計開始以来、最大の伸びとなりました(→図 1)。

欧米諸国では銀行の資産の傷みがひどく、おカネを貸し出す意欲も余力も著しく低下しているのに、なぜ日本では銀行貸出が伸びているのでしょうか。

銀行貸出残高の増減率

これは、景気が急速に悪化したがゆえに、金融危機が続いているがゆえに、企業の資金需要が高まっているという、一見奇妙な現象が起こっているためです。
企業では、1.販売収入が減る一方、諸経費はそれに比例して減らないため、不足分を埋め合わせる資金が必要となり、2.企業間信用(売掛金・買掛金・手形などによる企業同士の信用供与)が萎縮し、現金による支払や決済が増え、3.親会社(主に大企業)は、資金繰りに窮している子会社や系列先を支援する必要性に迫られ、4.今後の事態の悪化に備えて、手元現預金を確保したいとのニーズが強まっています。
これらのことは、企業にとって資金需要の増加要因です。

通常であれば、企業は銀行からの借入だけでなく、社債やCP(注)を発行して必要な資金を調達します。ところが昨年秋以降、社債・CPの発行が難しくなってきました。金融危機の影響を受けてリスク許容度が低下した投資家は、企業の発行する社債・CPを購入することに慎重になったためです。
このため、企業は銀行借入へ頼らざるを得なくなりました。銀行でも投融資損失が増えていますが、資産の痛みは欧米の銀行ほどではないため、借入申込に応じる体力を備えています。
こうして不況下の銀行貸出増加という珍現象を見るに至りましたが、景気拡大時のような、運転資金・設備資金需要の拡大による貸出増加とは性格が異なり、やや後ろ向きの資金需要に対する対応と言えます。

こうした姿は、日本銀行「貸出先別貸出金」−銀行がどの業種・どの規模の企業に貸し出したかを示す統計−に顕著に表れています。
昨年10−12月期の姿を見ると、1.製造業大企業向けが突出して伸びており、2.製造業の中では電気機械、輸送用機械(自動車)が目立って増え、3.その使途を見ると設備資金以外であること−が分かります(→表)。世界経済の悪化と円高の直撃を受け、産業界の中で最も業績悪化が著しいセクターに対する貸出が、上記の事情により伸びているわけです。

こうした資金需要は持続的なものなのでしょうか。
世界的景気後退と金融危機はしばらく続き、社債・CP市場も停滞し続けるので、企業の銀行借入への依存という構図は変わらないとの見方があります。
その一方、景気自体が悪く、企業の設備投資も大幅に減るので、銀行貸出はいつまでも伸びるものではないとの見方もあります。ちなみに今後のマクロ景気の見通しに基づき、企業部門全体の資金過不足を試算すると、景気拡大を映じて2006・2007年度は資金不足となりましたが、2008・2009年度は再び資金余剰になるとの結果になりました(→図2)。企業収益の大幅減少により自己資金の蓄積は減るものの、設備資金需要が大幅に減少するため、収支尻は資金余剰となるためです。

(注)コマーシャルペーパー:企業が発行する短期資金調達のための約束手形。

どちらの見方に沿って展開するのか、銀行の貸出担当者、企業の財務担当者にとってヤキモキする時期が続きそうです。

貸出先別貸出金の動向

企業部門の資金不足

※本資料は、作成時点(2009年2月19日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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