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製造業の減産緩和は景気回復の兆しか

昨秋以降、過去に例を見ない急速な落ち込みを見せ、景気悪化を牽引していた鉱工業指数(製造業の生産活動を表す指標)に改善の兆しが見え始めました。在庫指数が1・2月連続して減り、大幅低下が続いた生産指数も3・4月は増産を見込んでいます(→図1)。実際に、鉄鋼・自動車・化学業界では減産の手を緩め、生産水準を引き上げる企業が出てきました。
生産指数は景気の一致指標と言われるだけに注目される動きです。この動きがさらに各分野に広がり、意外に早く景気が回復するという展開になるのでしょうか。

鉱工業生産指数の推移

この半年間、生産指数が急低下したのは、消費者や企業が財布の紐を締めたことに加え、商品の製造から流通に至る全ての段階で、在庫調整(削減)の動きが同時かつ大規模に起こったためと考えられます。この事情を図2の簡略図に基づき説明しましょう。

在庫調整の概念図

在庫が適正水準にあり、在庫を減らす必要がない時(【適正在庫局面】)は、最終需要が100発生すれば、

  1. 小売業者は卸売業者へ100発注し
  2. 卸売業者は加工メーカーに100発注し
  3. 加工メーカーは100生産すべく素材メーカーに100の原材料を発注し
  4. 素材メーカーは100の原材料生産を行います

100の最終需要が100の生産にそのままつながります。

ところが、先行きの景気や販売状況を慎重に見て、皆が一斉に在庫を減らしておきたいと考えるようになると(【在庫調整局面】)、100の最終需要が発生しても、

  1. 小売業者は卸売業者へ90しか発注せず、残り10は自分の商品在庫を取り崩して対応する
  2. 90の発注を受けた卸売業者は加工メーカーに80しか発注せず、残り10は自分の商品在庫を取り崩して対応する
  3. 80の発注を受けた加工メーカーは素材メーカーに70生産する分の原材料しか発注せず、残り10は自分の製品在庫を取り崩して対応する
  4. 70の発注を受けた素材メーカーは60しか生産せず、残り10は自分の製品在庫を取り崩して対応する

という具合に、100の最終需要が60〜70の生産にしかつながらなくなります。

このように、在庫は生産と流通の結節点にあって、その削減の影響が川下から川上へ累積していく結果、在庫調整局面では生産水準は最終需要を大きく下回るものとなってしまうのです。

いわゆるリーマン・ショックを機に、景気の先行きや資金繰りに関する懸念が急速に強まりました。このため、個人消費、設備投資、輸出といった最終需要が収縮しただけでなく、流通業者・製造業者も軒並み在庫の大幅圧縮に走りました。結果として、上記のような典型的な在庫削減時の減産メカニズムが強く働き、生産指数はとてつもない落ち方を見せたのです。

ここに来て、在庫水準の過剰度合いが低下し、図2の【在庫調整局面】色が薄まり、【適正在庫局面】にシフトしてきました。このため減産圧力が緩和し、生産水準をこれ以上下げなくても良い状況になってきました。3・4月の生産計画が持ち直したのはそのためです。

では、このまま生産も景気も順調に回復していくかと言うと、まだ楽観はできません。【在庫調整局面】から【適正在庫局面】へシフトと言っても、最終需要がなかなか上がらない、あるいは再び下がる懸念があります。これは

  1. 企業の今年度設備投資計画は極めて慎重である
  2. 賃金・雇用情勢は一段と悪化しており、個人消費の低迷は続く
  3. 輸出にも過大な期待はできない
  4. 政府は15.4兆円の経済対策を打ち出したが、日本経済の需要不足(約30兆円:当部試算)を埋めるには至らない

ためです。そうなると、在庫調整の動きが強まり、減産圧力が再び高まる恐れがあります。要するに今後については最終需要次第ということです。

このように見ると、昨年10−12月期、今年1−3月期が景気の大底となる可能性は高まりましたが、生産指数ひいては景気回復の持続性については慎重に見ておく必要がありそうです。

※本資料は、作成時点(2009年4月21日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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