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日本の財政事情をどう見るか

昨年12月25日、政府は一般会計総額が過去最大の92兆円となる2010年度予算案を決定しました。
その中身を見ると、税収が前年度予算(当初)の46兆円から37兆円へと大きく落ち込む一方、国債発行は33兆円から44兆円に膨らみ、国債依存度は過去最高の48%に達しました。財政“赤字”の姿がさらに鮮明となり、財政事情の悪化を懸念する声が強まっています。
財政事情がどのくらい悪いのかを見る上では、次の3点がポイントとなります。これに沿って現在の日本の財政事情をチェックしてみましょう。

第1は、財政赤字の大きさと、その発生要因です。
財政赤字は、景気の良し悪しによって変動する循環的赤字と、根雪のように溜まる構造的赤字に分けられます。前者のウェイトが大きければ景気が良くなれば税収が増し、財政赤字は縮小することが期待できますが、後者のウェイトが大きければ、景気が良くなっても財政赤字は縮小しないことになります。
日本の財政赤字は名目GDP比▲10%と規模が大きいだけでなく、構造的赤字だけで▲8%と、米国と比較しても構造的赤字のウェイトが高くなっています。景気が良くなっても財政事情が格段には好転しないことになります(図1-1、1-2)。

図1-1 日本の財政赤字の推移(対GDP比率)

図1-2 米国の財政赤字の推移(対GDP比率)

第2は、プライマリーバランスというモノサシでみた財政収支です。
プライマリーバランスとは、現在の歳出(除く国債費)を現在の税収で賄っているかどうかを見るものです。これが均衡していれば、新たに借金(国債発行)を増やす必要がないことを示します。
日本のプライマリーバランスの推移を見ると、92年度以降マイナスが続いており、2009年度から2010年度にかけては、過去最大のマイナスに落ち込むことは確実で、均衡への道筋が見えなくなっています(図2)。

図2 中央・地方政権のプライマリーバランス(各目GDP比)

第3は、債務残高の大きさと、その行方を左右する2つの変数(名目GDP成長率と長期金利)です。
日本の政府部門が抱える債務残高の名目GDP比率は上昇傾向が続き、直近では200%超となっています(図3-1、3-2)。これは米国の2倍以上の水準です。サラリーマン世帯にたとえて言えば、年収に対する住宅ローン残高の割合が、日本人は米国人の2倍ということになります。サブプライムローンやクレジットカードで膨れ上がった米国の家計部門の過大負債を批判できない状況です。
問題なのは、この上昇傾向に歯止めがかかる目途が立たないことです。分子(債務残高)は少なくとも長期金利分は増えていきますが、分母(名目GDP)は、日本経済がデフレ傾向を強めていることを反映してマイナスの伸びが続いているためです(図4)。
長期金利は歴史的低水準にあるとは言え、プラスの領域にありますので、債務残高の名目GDP比率は上昇し続けてしまい、過大債務の度合いがますます高まってしまいます。

図3-1 日本の債務残高の推移(対GDP比率)

図3-2 米国の債務残高の推移(対GDP比率)

このように、日本の財政事情は極めて深刻であるばかりでなく、持続可能性にも疑問符がつく状況です。このままでは国債に対する信認が失墜し、国債価格が暴落して長期金利が大幅かつ急速に上昇する事態を招きかねません。しかし実際には、海外投資家が日本国債を一斉に売り払ったりすることはなく、長期金利は低水準かつ安定的に推移しています。

これは、日本という国家・経済・政府・国民が、今のところは世界(含む日本)の金融市場・投資家からの信認を、曲がりなりにもつなぎ止めているためなのでしょう。と言っても、それは「日本の財政事情がいつ改善するかは分からないが、いつかは何とかするだろう、破綻という事態には至らないだろう」という漠然としたものに過ぎないかもしれません。しかし、金融市場・投資家というのは気まぐれで、その信認が急速に変化しないとも限りません。
このように考えると、政府は1日も早く、財政事情の改善に向けた取り組みに着手し、ロードマップを示すことが重要な課題となっています。

※本資料は、作成時点(2010年1月8日現在)で入手可能なデータに基づき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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