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景気全体の回復と二つの「格差」

2008年9月にいわゆるリーマンショックが起こってから、世界中の景気が急速に悪化しましたが、昨年前半頃から、新興国を筆頭に世界経済の回復が続いています。日本もその例外ではありません。これを、注目度の高い統計である日本銀行「企業短期経済観測調査」(以下では「短観」とします)で見てみましょう。

短観で調査している数多くのデータの中でも、注目度が最も高い大企業製造業の業況判断DI※は、リーマンショック後の混乱期に過去最大のマイナス幅▲58を記録しましたがその後順調に回復に向かい、2010年3月調査において▲14まで回復し、そして3か月先の予想に関しては▲8と更に改善しています。この数字がマイナスということは、業況が「良い」と答えた企業よりも「悪い」と答えた企業の方が多かったことを示しますから、状態としてまだ厳しいのは確かですが、「100年に一度」とも言われた状態からは脱して、普通の厳しさになっていることを示しています。

大企業製造業 業況判断DIの推移(「良い」-「悪い」)

この業況判断DIが改善した背景には、中国をはじめとする日本からのアジア向けを中心に輸出が伸びていることを反映した動きと言えます。他にも、2010年度の経常利益計画が前年比+49.3%と大幅な増益の計画になったことや、設備投資計画が▲0.9%とわずかなマイナスになった(ほぼ下げ止まった)ことなど、景気の正常化が進んでいることを示すものでした。

しかしこれと同時に、いくつかの面で部門間の格差が残っている、あるいは広がっていることも示されました。

(1)企業規模間の格差
製造業大企業の業況判断DIは、現在の▲14から先行きは▲8と改善していましたが、製造業の中小企業は▲30から▲32と、逆に悪化しています。売り上げに占める輸出の割合が高い大企業は、世界経済改善による輸出増加の恩恵を真っ先に受けられる一方で、それが中小企業に波及するまでには時間を要するため、このような方向性の違いが出ています。なお同じ傾向は、非製造業においても確認できます(非製造業大企業の業況判断DI:▲14→▲10、中小企業:▲31→▲37)。

(2)製造業と非製造業間の格差
短観の集計は基本的に3か月に一度行われており、前回は12月でした。2009年度の経常利益計画値を、前回と今回で比較すると、製造業は前回よりも+18.9%増えていたのに対して、非製造業は逆に▲2.6%減少していました。非製造業の利益計画値が前回よりも減ったのは、主に電気・ガス業の利益計画の下方修正です。世界経済の回復によってエネルギー価格が上昇したため、利益計画の下方修正を余儀なくされたものと思われます。このように、世界経済の改善という現象が製造業にはプラスに働き、一部の非製造業にはマイナスに働いています。この格差は、輸出型産業と内需型産業間の格差とも言えるでしょう。

リーマンショック後の混乱から世界経済が立ち直ってきた恩恵は、今のところ国内の大企業製造業に集中していますが、景気回復期間が長くなるにつれて、大企業から中小企業へ、製造業から非製造業へと波及していきます。従って、経済全体、あるいはそれぞれの部門全体というマクロの視点から見れば、これらの格差は徐々に縮小していくことになるでしょう。

しかし、ミクロの視点、つまり個別企業の業績という観点から見た格差は、むしろ拡大していくケースが増えると思われます。例えば、同じ輸出型産業でも、新興国富裕層の増加をうまく取り込めるかどうかは、各企業の業績を大きく左右します。逆にサービス業などの内需型産業でも、ネットの活用などで新興国需要に上手く応えることで、業績を伸ばす余地が生まれます。また、国内ではデフレが続く中で、原油をはじめとする資源価格は再び上昇してきています。「コストが増加する中での販売価格低下」という厳しい環境に、如何に速く適応できるかも、各企業の先行きを分ける要因となります。

同じ「格差」でも、業種や規模などに起因する「属性の格差」から、個々の企業の力の差から生じる「個性の格差」が目立つケースが増えていくと見られます。

今後の経済の動きを見る際には、このような視点も重要でしょう。

  • ※短観調査対象の企業に、業況が良いか悪いかを尋ね、「良い」と答えた企業割合から「悪い」と答えた企業割合を引いて算出する。高ければ高いほど企業部門の業況が良いことを示す。
  • ※本資料は、作成時点(2010年4月16日現在)で入手可能なデータに基づき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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