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最近の円高について考える

8月下旬、円ドルレートが一時1ドル=83円台に乗りました。円ドルレートで見れば、15年ぶりの高水準です。一般的に円高は、輸出した時に得られる手取り額の減少を通じて、短期的には輸出企業の収益の足を引っ張ります。特に、日本は輸入よりも輸出が多い貿易黒字国ですので、円高が問題視される傾向が強く、最近の株価下落にも大きく影響しているのが現状です。

しかし、今回の円高の実態と、日本の輸出に実際にどの程度の影響を及ぼすか、つまり今回の円高で日本経済が壊滅的な打撃を受ける可能性はどの程度かについては、以下のような観点から、もう少し詳細に見ておく必要があるでしょう。

第一に、円レートに対する見方です。マスコミなどで報道されるのは円ドルレートが殆どですので、円レート水準に対する我々の印象は、円ドルレートのみに大きく左右されます。

しかし、為替レートが実際の輸出にどの程度の影響を与えるかを見る際には、

  1. ユーロや元など、米ドル以外の通貨が存在し、全ての通貨に対して円ドルレートほど円高が進んでいるとは限らないこと
  2. 輸出先でインフレが進んでいる場合、日本からは高値で輸出することができるため、円高による手取り額減少分をある程度補えること

を念頭に置く必要があります。この二つを考慮した円レート(実質実効レート)の推移を見ると、8月時点での円レートは過去20年の平均よりもまだ低く、1ドル=79円を付けた1995年前後の水準よりも大幅に低い水準にあります。また上昇率の観点から見ても、リーマン・ショック期には半年で30%上昇したのに対して、ここ半年の上昇率は+5%と小幅なものに留まっています。

円の実質実効レートの推移

第二に、日本の輸出全体を牽引しているアジア向けの輸出の特徴です。アジア向けの輸出は、1.円高によってアジア向け輸出の採算が悪化しても、高成長が続くアジアへの輸出数量が増えるため、最終的な収益は伸びると思われること、2.アジア向け輸出は全取引の半分弱に当たる48.1%が円建てで、米国の14%、ユーロの30%よりも高いため、直接的な円ドルレート上昇の影響を受けにくいこと、3.アジアの物価上昇率は全体として先進国よりも高いため、円高による採算悪化が起きにくいこと(先に見た2の考え方に沿ったものです)—といった特徴を指摘することができます。

こうした要因を踏まえると、最近の輸出は、過去よりも円ドルレート上昇の影響を受けにくくなっており、アジアの高成長が維持される限り、輸出が腰折れる可能性は低いと思われます。

もっとも、為替はリスク要因として一切考慮する必要はないというわけでもありません。円ドルレート上昇は、輸出企業の採算悪化懸念の高まりから株安につながり、これが消費・投資の足を引っ張る逆資産効果や、輸出企業を中心に経営者のマインドを萎縮させ投資を減退させるなど、他のマイナス効果があります。円ドルレート上昇がこれ以上進んで史上最高値を更新するような事態に至れば、輸出ではなく国内需要への悪影響が顕在化してきます。従って、今回の円高に関する国内経済への影響としては、輸出企業の収益そのものよりも、株安に伴う企業・家計のマインド悪化を通じた経路の方に注意すべきということになるでしょう。

※本資料は、作成時点(2010年8月26日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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