とっておきのマネー情報

新興国への投資資金流入について考える

2008年秋のリーマンショックで世界経済が大きな混乱に陥った時、各国中央銀行は政策金利の大幅な引き下げを含む積極的な対策を講じました。その結果、日米欧をはじめとする先進国では金利は過去にないほどの低水準まで下がりました。それら対策の効果もあって、2009年に入ってから世界景気は回復に転じましたが、その回復ペースが思わしくなかったために、先進国の政策金利は今も過去最低水準のままで推移しています。

このような環境の中で、投資マネーはより高い金利を求めて、新興国・資源国に向かう傾向を強めています。国際間資金の動きを見られる統計の一つに、主要国の銀行部門がどの国に、どの程度の与信を行っているかを集計した国際決済銀行(BIS)「国際与信統計」があります。これを用いて、各国向け与信額がこの1年でどの程度増えたかを増加額順に並べると、中国・香港、インド、ブラジルといった新興国が上位を占めます。逆に減少額が大きい国を見ると、殆どが欧米先進国で占められています。投資資金が低金利の先進国を脱して、新興国・資源国に集中していることがわかります。

各国向け与信残高の動き(2010年6月末残高の1年前比)

新興国・資源国への多額の資金流入は、流入先の景気を押し上げる要因となり、最近ではその程度が強まって、株価や不動産価格の急激な上昇やインフレが懸念されるなど、景気が過熱気味になっています。新興国・資源国の多くは、この事態に対応するために、政策金利の引き上げなどの金融引き締め策を取っており、中にはブラジルのように直接的に資金流入を規制する動きも出てきています。

国外からの資金流入のスピードと規模があまりに大きくなりすぎると、景気が過熱した後の反動で、景気悪化のスピードが急激なものになる可能性が高くなります。またその際には、今まで流入していた資金が急激に国外に逃げ出すことで、景気悪化ペースに拍車をかける恐れも強まります。新興国の政府や中央銀行が、この先の景気過熱を緩やかに抑えていけるかどうかが、今後の新興国景気を見る上でのリスク要因の一つとなっています。

経済が非常に良好なパフォーマンスを続けていて、先行きへの期待から多くの資金が国外から入ってきている時に、不動産バブル崩壊などをきっかけとした景気悪化と同時に急激な資金流出が発生し、経済の混乱に拍車がかかった実例が、1997年にタイや韓国、インドネシアを中心として起きたアジア通貨危機でした。現在、これらの国の経済情勢は様々な点で当時よりも改善していますので、今の時点でアジア通貨危機と同じことが起こる可能性が高いわけではありません。またアジア通貨危機で一旦は縮小した経済規模もその後は大幅に拡大していますので、長い目で見れば、新興国にはまだまだ発展の余地が残されているのは確かです。しかし短期的には、このようなリスクが隠れているという視点も必要でしょう。

インドネシア・韓国・タイのGDPの推移

※本資料は、作成時点(2010年12月1日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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