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米国経済の耐久力と円ドルレート

欧州債務問題の悪化により世界全体の金融市場が動揺するなか、ドルは堅調に推移し、円ドルレートも急激な円高が進むことなく75円〜78円のボックス圏内を推移しました。この間の円ドルレートの安定した動きは、米国株価の不安定な動きと比べると際立っています(図1)。

米株価水準(S&P500)と円ドルレートの推移

ドルが底堅く推移したことには、2つの背景があると見られます。第一は、欧州債務問題が悪化したことで、より安全な資産へと投資資金が退避する中でドル通貨に対する需要が高まったことがあります。これは、銀行間短期金融市場においてより顕著にみられ、欧州の金融機関が3ヶ月のドル資金を市場から調達する場合の調達コストは、6月までの1.5%前後の水準から8月以降は2.5%前後まで1%ポイントも跳ね上がりました(図2)。金融市場においてドル資金を確保しようとする動きは、ドル通貨価値を高める一因になっています。

欧州金融機関のドル調達コストの推移

第二の背景は、株式市場が悲観的となる中で、実際の米国経済指標は、今のところ堅調さを保っていることにあります。以下では、米国経済の耐久力について少し詳しく見てみましょう。

米国株価は図1が示す通り7月から8月にかけて1割以上も下落し、市場マインド悪化の実体経済に及ぼす影響が懸念されていましたが、9月の民間部門の雇用者数は前月比13.7万人増と市場の予想を上回って増えました。これは単月の動きですが、連邦債務残高上限問題や米国債の格下げが起きた8月も含め均してみれば民間部門は概ね月平均10万人のペースで雇用を生み出しています。また、週当たり労働時間も増えており、労働市場は緩やかながらも改善の流れは途絶えていません(図3)。

米国民間部門の雇用増減と労働時間

金融市場が動揺するなかで、民間の雇用増が比較的堅調であることは、経済活動自体は改善が続いていることを示唆しています。とりわけ、金融を除く民間企業部門の収益は、公表されている直近の4〜6月期まで増加トレンドにあり、環境悪化に対する耐久力が企業部門に備わっていたことを示しています。米国非金融企業の名目GDP比でみた収益水準は7%と過去10年では最も高い水準となっています(図4)。

米国非金融法人企業収益の推移

低成長下でも企業収益が減らなかったのは、リーマン・ショック後、企業は雇用や投資を手控えたことも大きな要因ですが、別の見方をすれば、雇用や投資をこれ以上削減できない水準まで絞ったため、設備投資や雇用は緩やかながらも増加を続ける可能性が高いことを意味しています。もっとも、先の図3に戻って、改善が続いている週当たり労働時間水準に着目すると、未だリーマン・ショック前の水準までは回復していないことも事実です。過去において本格的に雇用が増えた時期の週当たり労働時間は概ね33.8時間ですが、9月平均は33.6時間と足りず、経済活動の増加に対して労働時間を増やすことで調整が効く領域に止まっています。民間部門の雇用が本格的に増えるには今一歩足りない状況です(前掲図3)。

さて、ここ数ヶ月の金融市場の混乱のもととなっている欧州債務問題への対処は、ギリシャ債務元本の削減と、これにより毀損が避けられないギリシャ国債を保有する銀行資本への資本注入支援案など、このところ包括的な対策への動きと期待が高まっています。欧州債務問題が改善に向けて進展すれば、金融市場の改善を通じて米国経済にもプラスに働くため、円ドルレートに対してドル高・円安への力が働きやすくなります。但し、米国経済の耐久力は既に織り込まれつつあることを考えると、現在の75〜80円のボックス圏を超えてさらにドル高・円安方向に反転推移するには、更なる経済環境の改善が必要で、その実現にはもう少し時間がかかりそうです。

※本資料は、作成時点(2011年10月21日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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