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欧州経済悪化が円ドルレートに及ぼす影響

12月13日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)において連邦準備制度理事会(FRB)は、現行のフェデラルファンド(FF)レートの誘導目標(0〜0.25%)を据え置き、異例に低水準のFFレートを少なくとも2013年半ばまで維持する方針の継続を確認しました。公表された声明文のなかで、併せてFRBは「世界の成長に一部明らかな減速がみられるものの、米経済は緩やかに拡大している」との現状判断を示しました。

この2ヶ月間の円ドルレートの動きを振り返ると、10月に一旦75円台まで円高が進みましたが、米国経済指標の改善を受けて78円前後とやや円安方向に戻っています。この間の株価の推移と比べてみると、日米とも金利があまり動かないなか、円ドルレートは概ね米国株価の動きに連動して推移しました。米国S&P500株価指数は、経済指標好転を受けて不安定ながらも徐々に上昇傾向にあります(図1)。

図1 米国株価水準(S&P500)と円ドルレートの推移

他方、欧州経済に目を転じると、欧州債務問題の長期化に伴い、ユーロ圏経済は景気後退局面に向かっています。先行指数である製造業景況感(PMI)指数は、8月から4ヶ月連続で拡大と後退の境目である50を割り込み、ユーロ圏全体の生産指数が今後前年比マイナスに陥ることを示唆しています(図2)。

図2 ユーロ圏の生産指数と製造業景況感(PMI)指数

こうした欧州経済悪化が米国経済に及ぼす影響についてはどのように整理したら良いでしょうか。

第一は、欧州経済の景気後退に伴い欧州向け輸出が減少するという実体経済を通じた経路が考えられます。米国を含め欧州向け輸出規模を各国GDP比でみて大きい順に並べてみると、米国の2010年の欧州向け輸出金額はGDP比の1.6%に過ぎず、欧州自身やアジア各国に比べて直接的な影響は軽微であることがわかります(図3)。

図3 各国のGDPに占める欧州向け輸出規模(2010年)

対して、ASEAN諸国(インドネシア・シンガポール・タイ・フィリピン・マレーシア他)や台湾、韓国、中国の欧州向け輸出金額は名目GDP比の5.3〜6.4%にのぼり、欧州経済悪化の直接的な影響が大きいことがわかります。こうした国々はまた中国向け輸出規模も大きいため、欧州の景気悪化が中国に波及すると、更に経済活動に下押し圧力がかかることになります。従って、欧州向けの直接的な輸出規模が小さい米国ですが、アジア経済の成長が鈍化すれば、時差を伴いながら徐々に影響が出てくることは免れません。

第二は、金融市場の悪化を通じた経路があります。12月9日のEU首脳会議で、将来の財政統合に向けた協定締結とIMFによる2,000億ユーロの融資枠の方針が確認されたにもかかわらず、欧州系金融機関が市場でユーロを調達し、これをドルに変換してドルを調達するコストの上昇に改善の兆しはみられていません(図4)。今のところ米系金融機関が、ロンドン銀行間3ヶ月物取引によりドルを調達するコストは、欧州金融機関のドル調達コストと比較し低い水準にありますが、水準が徐々に切り上がっています。

図4 欧米金融機関のドル調達コストの推移

このように、欧米金融機関の資金調達環境の悪化が続けば、貸出態度の厳格化や投融資の鈍化といった金融チャネルを通じて、実体経済の改善を遅らせ景気低迷が長引くことになります。

こうした現状とリスクを円ドルレートの見通しに引きつけてみると、どのような展望が描けるでしょうか。今のところ欧州経済悪化の影響を免れ日米欧の中で最も良好な米国経済ですが、年明け以降、欧州経済悪化が他国の景気減速を通じて徐々に米国にも波及していくとすれば、このまま一本調子でドル高が続くのは難しいということになります。短期的には米国経済の改善に伴い円高圧力は緩和されると見込まれますが、欧州景気後退に伴う先行き経済減速とこれを受けたFRBによる追加金融緩和の可能性を織り込み、来年前半に再び円高ドル安となるリスクを考慮しておく必要がありそうです。

※本資料は、作成時点(2011年12月14日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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