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円ドルレートと日銀の金融緩和政策

一時1ドル=75円を割り込んで円高が進むのではないかとも言われた円ドルレートが、2月中旬以降円安に転じ、3月中旬には同80円台に戻っています。

転換のきっかけとなった国内要因として重要なのが、2月14日に決定された日本銀行の金融緩和強化です。日銀は、中長期的な物価上昇率の望ましい水準について、これまでは、「消費者物価上昇率で+1%程度」を「中長期的な物価安定の理解」と称していました。これを今回「物価安定の目途」と言い換え、「当面は+1%を目途とする」と宣言し、同時に長期国債の買入額を10兆円積み増すことによって、市中への資金供給額を増やすことを決定しました。この決定が為替市場において「日銀は物価目標を設定し、金融緩和の強化に踏み切った」という期待を高めたことが、円安のきっかけになったのです。

また、海外要因も無視できません。このところ欧州債務問題の起点であるギリシャへの金融支援に進展の動きが見られているために、国際金融市場におけるリスク回避姿勢が弱まっていることに加え、米国でも雇用情勢が改善するなど、世界経済に対する見方が明るいものになってきたことも、円高の修正に寄与したと見られます。海外経済・金融情勢の改善という円安が進みやすい条件の下で、実際に円安へのきっかけをつかんだ点では、2月の日銀の決定はタイミングが良かったと言えるでしょう。

尤も、これで「日銀が更に金融緩和をすればもう一段円安になる」と考えるのは早計です。

この先、海外情勢の改善が止まれば、円高圧力が再び強まるでしょう。この場合、日本経済への悪影響を防ぐために日銀が更なる追加緩和に踏み切る可能性はありますが、欧米の経済金融情勢が悪化している時には、欧米の中央銀行も金融緩和に動くと考えるのが自然です。その緩和の度合いが日本よりも強いと判断されれば、再び円高に転じる可能性も十分考えられます。

今のところ回復に向かっている米国景気にも、住宅市場回復の遅れや原油高などの懸念材料があります。欧州債務問題についても、ギリシャの財政再建が本当に実現できるのか、ギリシャ以外の国の債務減免が本当に回避できるかなど、欧州債務問題収束のための課題はまだ多く残っています。日銀がもう一度金融緩和をしても、更に円安が進むかどうかは海外情勢次第の面が大きい点に留意する必要があります。

また、海外景気の減速などで再び円高圧力が高まった際には、今回の金融緩和が円安のきっかけになったという経験があるだけに、日銀に対して追加緩和を求める声が強まると見られますが、この圧力があまりに強くなり過ぎると、日銀の独立性に対する疑念が高まるという別のリスクが生じることには留意が必要です。

この先、追加的な金融緩和に踏み切るとすると、その手段はこれまでと同様に国債の買い増しが中心になると思われますが、日銀は既に70兆円を超える長期国債を保有しています。この状態から更に国債買入のペースを速め、しかもその決定が日銀自身の意思よりも外部からの圧力によるものであると判断された場合、通貨に対する信認維持に必要な中央銀行の独立性が損なわれる恐れが強まります。更なる追加緩和が行われる場合に、その手段や周りの状況によっては、深刻な副作用を招くリスクがあることにも注意を払っておく必要があります。

※本資料は、作成時点(2012年3月14日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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