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欧州中央銀行(ECB)による金融機関向け資金供給の功罪

この2ヶ月間、円ドルレートは円高に歯止めがかかり、一時84円台まで円安に推移したあと、80円に向けてやや円高に戻す値の荒い展開となりました。この動きを米国株価の推移と比べてみると、米国S&P500株価指数の上昇・下落を後追いするかたちで円安・円高が進みました。言い換えれば海外市場で楽観的な見方が広がると円安方向に振れ、悲観的な見方に傾くと円高に振れる動きであったといえます(図1)。

昨年末からの米国の株価上昇をもたらしたのは、米国自身の経済指標の好転もありましたが、他方で、欧州中央銀行(ECB)が昨年12月以降に欧州金融機関向けに実施した、3年間の年利1%による無制限の流動性資金供給によって欧州金融市場が安定を取り戻したことも大きな要因でした。

ECBによる昨年12月と今年2月の2回にわたる資金供給(累計で100兆円強)のおかげで、流動性不安を抱えた銀行はこれを活用することができ、昨年11月には3%まで上昇していた欧州インターバンクの3ヶ月短期ドル資金の調達コストは、1%台まで急速に低下しました(図2)。上の米国株価の推移と比べると、欧州銀行のドル調達コストの低下に伴い米株価上昇と円安が進んだことがわかります。

このように、ECBによる金融機関向けの流動性供給は、金融市場の安定に大きく寄与したことは間違いありません。ただし、一方で大量の資金供給は長期的に見て欧州のリスクを大きくした可能性もあります。というのも、今のところ、ECBにより供給された資金はもっぱら国債の購入に向かっているからです。

例えば、イタリア、スペイン、ポルトガルの銀行全体の国債保有残高と民間向け貸出残高の推移をみると、銀行全体として貸出減のかわりに国債残高が増えています(図3・図4)。銀行はECBが供給した低利資金を高利の欧州国債や社債で運用し利ザヤを稼ぐことができるので、銀行による国債購入は、一面で国債需給を改善させ、ECBによる国債購入を避けつつ国債市場の安定化を実現する側面もありますが、欧州の金融機関が多くの国債を抱え過ぎると金利上昇に伴う経営リスクは増大することになります。

ECBによる資金供給は、これがもし発動されなければ、確実に流動性危機が収まらずに国債金利も急騰し、短期の資金調達に窮する銀行や国債時価下落によりバランスシートが悪化する銀行が増え、破綻の連鎖が生じていた可能性を考えると、金融危機の連鎖を断ち切り金融市場の安定をもたらした点でプラスであったといえます。一方で、これが欧州経済や債務問題の改善に繋がらなければ、銀行部門の国債保有の増加に伴う欧州のリスクを高め、むしろ将来の不安定化要因になってしまう可能性があります。こうした構造を投資家が心配し悲観的な見方につながると、米国の株価や長期金利を低下させ、円高要因として作用しやすくなる点には注意すべきでしょう。

※本資料は、作成時点(2012年4月11日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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