とっておきのマネー情報

米国の雇用増加ペース鈍化の背景と先行き

ここ数ヶ月、米国の雇用者数の伸びが鈍ってきています。農業を除いた非農業部門の雇用者数の増加数は、今年1〜3月の月平均22万人から4〜6月は7万人と3分の1にまで鈍化しました。こうした雇用改善ペースの遅れは、米国のさらなる金融緩和の可能性を高めるので大きな注目を集めています。そこで今回は、米国雇用増加ペース鈍化の背景や特徴について整理してみました。

国内総生産でみた米国経済活動は、既にリーマン・ショック前の水準を上回っています。ところが、経済活動がリーマン・ショック前の水準を超えているのと対照的に、雇用については未だリーマン・ショック前の雇用者数を下回っています(図1)。これにはどのような背景があるのでしょうか。

ひとつの背景は、米国経済の成長率がやや低いことが挙げられます。米国経済の平均的な成長率は2%後半から3%というものですが、2012年1〜3月期の成長率は前期比年率1.9%まで鈍化しています。加えて、欧州をはじめ世界経済の先行きが不透明であるために、グローバルに展開する企業が雇用拡大に慎重となっていることが大きいとみられます。

ただし、リーマン・ショック後の回復局面で、米国企業は雇用を手控えた結果、企業収益はむしろ大幅に拡大しました。図2は名目経済規模に占める国内企業収益の割合を示していますが、企業の取り分がここ数年高まっていることが読み取れます。

このように、米国企業は収益確保を優先して雇用を手控えたということですが、どういった業種で顕著なのでしょうか。下図3はリーマン・ショック後の景気後退によって失われた民間部門の雇用者数とその後の回復局面の雇用増加数を業種別に比較したものです。2008年1月から景気の底の2010年2月までの間に民間部門の雇用は累積で887万人失われましたが、そこから今年の6月までに437万人増えています。民間部門合計でみた雇用回復の達成度はちょうど五合目であることがわかります。

ただし、業種別に詳しく見ると、いくつかの特徴が浮かび上がります。回復が最も進んでいるのが民間サービス部門です。民間サービス部門では、景気後退により459万人の雇用が減りましたが、景気の底から今年6月まで372万人の雇用が増えており、八合目まで回復したことになります。一方で、製造業や建設業はそれぞれ226万人減、195万人減と合計420万人減りましたが、その後の雇用回復は半分にも満たない状況です(図3)。

つまり、世界経済減速の影響を最も受けやすい製造業と、住宅バブルの崩壊を直接受けてきた建設業で、とりわけ企業が雇用拡大に慎重になっていることがわかります。先行きについてはどうでしょうか。

欧州ばかりでなく中国など新興国の景気も減速していますから、今年後半も総じて米国企業の慎重姿勢は変わることはないと思われます。但し、明るいニュースとしては、ここにきて米国住宅市場がようやく底打ちしていることが挙げられます。住宅着工件数、新築住宅販売、中古住宅販売いずれも前月比で増加が続いており、建築需要も上向きつつあります。従って、雇用増加ペースの大幅な改善は望めないものの、国内サービス部門や住宅市場の改善に伴い、緩慢ながらも雇用回復そのものは失われないと考えられます。

※本資料は、作成時点(2012年7月13日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

窓口でのご相談・お申し込み

窓口でのご相談・お申し込み

  • お近くの三井住友信託銀行の店舗を探す。
  • お近くの店舗を検索

新規口座開設をご希望のお客さま

新規口座開設をご希望のお客さま

新規口座はお近くの三井住友信託銀行の店舗やメールオーダーでお申込みいただけます。

  • 口座開設について
  • お近くの店舗を検索

ページトップへ戻る