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市場を落ち着かせたECBの国債買い入れ策

2009年秋の発生以来、良くなったり悪くなったりを繰り返してきた欧州債務問題の波は、2012年に入ってからも続いています。1月から3月までは欧州中央銀行(ECB)による大規模な長期資金供給(LTRO)によって改善し、4月頃からスペインの銀行不安やギリシャのユーロ離脱懸念の高まりで悪化し、そして7月末からは再び改善に向かっています。こうした動きは、イタリアとスペインの国債利回りの動きからも窺うことができます。

7月末から状況が改善したのは、ECBが表明した新たな国債買い入れ枠の効果に対する期待が高まったためです。その具体的な内容が、9月に明らかにされました。「OMT(Outright Monetary Transaction)」といわれる今回の施策は、どのようなものなのでしょうか。

OMTの目的は、金融政策の適切な波及と単一の金融政策(ユーロという通貨)を支援すること、とされています。ECBはかねてより、欧州の金融市場が財政に懸念があるスペイン・イタリアなどの周縁国とドイツ・フランスなど比較的財政に余裕がある中核国の間で分断されていると指摘してきました。これが各国の国債レートの大きな差となって表れていました。今回の措置はその分断を是正し、金融市場の不安に対して、金額に上限を設けずに国債の買い入れを行うことを決めたもので、債務問題に対応するECBの明確な姿勢を示したといえるでしょう。

一方で、買い入れ対象とする際には条件が付けられました。その条件とは、財政不安に対する救済基金として現時点で機能する欧州金融安定ファシリティ(EFSF)と、その後継機関として10月8日に発足が予定される欧州安定メカニズム(ESM)のいずれかに支援を要請し、財政再建に向けて厳格かつ効果的な監視下に置かれている国であること、というものです。また、買い入れ対象とする国債の残存期間は、1年から3年程度の比較的短いものに限っています。財政支援の役割はECBではなく救済基金にあり、その対象国は欧州各国の認可を受けるべきであること、そして中央銀行が政府の財政赤字を補填するようなことはしないという、これまでのECBの考え方に沿ったものです。

現時点ではOMT導入後に支援要請を行った国はないため、従って買い入れの対象国もまだありません。候補となる国の中では、銀行不安が燻り、10月末に200億ユーロを超える国債償還を迎えるスペインがその筆頭で、財政再建に厳しい監視を受け入れてまで支援を求めるかが、OMTを活用した問題解決のプロセスが進むかどうかを見る上での注目点となります。

今回のOMTは、金融市場の不安が財政再建の足かせとなることを防いだ点では評価できる一方、あくまで「問題解決までの時間を買った」に過ぎず、各国の財政再建を直接的に進めるものではないことを忘れてはなりません。

というのも、そもそも財政収支を好転させるのに必要な経済が悪化していることにあります。ECBによる2012年経済成長率見通しの中心値は前回6月時点ではマイナス0.1%でしたが、9月にはマイナス0.4%に下方修正されました。欧州の実体経済は3ヵ月前に想定されていた以上に悪化しているのです。実体経済の悪化は、銀行の不良債権を増やし金融システムの不安定化につながるだけでなく、税収減を通じて各国の財政再建をより困難なものにします。また、OMTの枠組みが設けられたことによって財政再建への取り組みが後退すれば、危機を一層深刻化させるリスクもあります。この先も、各国政府の対応に厳しい視線が向けられていることに変わりはなく、再び緊張化の局面を迎える可能性はまだ残っていることを念頭に置く必要があるでしょう。

※本資料は、作成時点(2012年9月13日現在)で入手可能なデータにもとづき当社調査部が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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