とっておきのマネー情報

アメリカの出口戦略と新興国通貨

1.先進国経済の回復と新興国経済の鈍化

アメリカの金融緩和スタンスの変更(金融政策の出口戦略)に対する思惑から、為替を中心として金融市場の変動が大きくなっています。

その背景としてはアメリカ経済の回復と中国経済の停滞から、世界経済の枠組みが、これまで続いてきた「低迷する先進国+高成長の新興国」という組み合わせから「(欧州を除く)先進国の回復+成長ペースが鈍化する新興国」に変化してきたことがあります。

アメリカ経済はリーマンショックの影響で大きな痛手を負いました。特に家計部門においては雇用の悪化に加えて、住宅価格(資産価格)の下落から家計の資産と負債のバランスが悪化したために、家計は消費を減らして借金の返済を優先せざるをえなくなりました。

その結果、個人消費を中心にアメリカの景気は悪化し、中央銀行である連邦準備理事会(FRB)は三度に及ぶ債券購入措置からなる量的金融緩和(それぞれQET〜QEVと呼ばれています)を行い、債券購入により市中に大量の資金供給を続けました。

この間、アメリカ経済の停滞が続く中で世界経済を支えてきたのは、中国を中心とした新興国で、特にBRICsと総称される4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)が世界経済を牽引する主役となりました。

新興国の多くは国内での資金不足が経済成長の抑制要因となることが多く、海外からの資金流入が増加すると成長率が加速するという経済体質にありました。そのため、アメリカを始めとした先進国の大規模な金融緩和は新興国経済の高成長を支える追い風となりました。

2.下落が続く新興国通貨、資源国通貨

アメリカはこれまで好景気の時は輸入の増加を通じて世界に需要を提供する一方で、不況になると金融緩和を通じて世界にマネーを供給してきました。そのため、アメリカの金融引き締めが新興国からの資金流出につながり、過去においては通貨危機や金融危機のきっかけとなるようなケースがありました。特に1994年のアメリカの金融引き締めは、メキシコ危機(テキーラ・ショック)、アジア通貨危機、ロシア危機、中南米危機など新興国に通貨危機が連鎖波及する遠因となりました。

今回も、アメリカ経済の回復、復調の動きが鮮明化してくるとともに、アメリカの金融政策が緩和から引き締めに変わるのではないかという観測が高まり、新興国を巡る資金の流れに変化が生じています。

新興国通貨の下落は大きく分けると2つのパターンに分けられます。

一つは中国経済の成長ペース鈍化により、これまで中国の高成長を前提にした価格上昇が続いていた非鉄金属などの価格の下落につながり、これらの資源の産出国であるオーストラリアやブラジルなどの通貨が下落するパターンです。

もう一つは、米国の金融緩和スタンスの修正によって新興国からアメリカなど先進国へと資金が回帰することで通貨が下落するパターンです。とりわけ、通貨下落は資本の海外依存度が高い国(=経常赤字が大きい国)を中心に生じやすい特徴があります。そのため、ブラジルやインドネシアなどのように海外からの資本流入減少、国内からの資本流出抑制のために、先進国よりも早く利上げを実施する国も出てきています。

こうしてみると、為替市場は当面経常赤字額が大きい新興国や資源国通貨を中心に変動の激しい動きが続くことが予想されます。もっとも、今のところはアメリカ国内のインフレが落ち着いていることなどから、本格的な金融引き締めが行われる公算は低いうえ、新興国でも過去の危機の経験から備えも相応にあることから、かつてのような新興国の通貨危機、金融危機にまで発展する可能性は低いと考えられます。

※本資料は、作成時点(2013年7月1日現在)で入手可能なデータにもとづき当社が執筆したものであり、将来の見通しおよび正確性、完全性を保証するものではありません。

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