住まいの理想は、住み慣れた環境での生活をなるべく長く継続する「エイジング・イン・プレイス」と言われています。家庭内での事故を未然に防止するためには、年齢や身体状況に合った安全性の高い環境を整え、危険を最小限に押さえておくことが重要です。大和ハウスリフォーム株式会社・企画部の松田健太課長に「バリアフリーリフォームのポイント」について解説いただきました。

大和ハウスリフォーム株式会社
東京本社 営業本部 企画部 課長
福祉住環境コーディネーター2級
松田 健太氏
松田 健太氏

家庭内事故の予防

平成27年度の交通事故の死亡者数が4,117人(※警察庁 交通局)に対し、家庭内事故による死亡者数は13,952人(※厚生労働省 人口動態調査)と約3.3倍と意外と多いことがわかります。年代でいうと65歳以上の占める割合が約85%弱と大半を占めており、65歳以上の事故種別では、「不慮の溺死」が約4,700件(約40%)、「転倒・転落」が約2,200件(約18%)と60%近くに上ることから、浴室などの水まわりや移動の安全性を高めることが重要と言えるでしょう。ひとくちにバリアフリーといっても「手すりをつける」「段差を解消する」といった比較的簡単な工事から「エレベーターの設置」「浴室リフトの設置」などの大掛かりな工事まで、生活される方の身体状況によって、やるべきリフォームの内容は異なります。今回は比較的健常な方が自宅内で安全に生活できるリフォームのポイントをご紹介します。

玄関

土間からの昇降や靴の脱ぎ履きのために縦型の手すりを設置します。あわせて、座って靴の脱ぎ履きができるよう、ベンチの設置も効果的です。

ベンチの設置

廊下・階段

廊下用の水平手すりは設置の高さ75cmを目安に、できるだけ連続させて設置します。手すりは体重がかかるので、設置する壁に下地があるかを確認する必要があります。

廊下に手すりを設置する場合

階段は、勾配が緩く踊り場があるものが安全ですが、架け替えるとなると上下階の間取りにも影響するため大掛かりな工事になることもあります。階段の手すりの設置はできるだけ両側に連続して設置することがポイントです。

登り階段の場合

浴室

最近のユニットバスは、洗面脱衣室との段差が無い出入り口や滑りにくい床 、低い浴槽のまたぎ高など標準でバリアフリー仕様になっているものが多くありますが、浴室内での移動、浴槽への出入り、洗い場・浴槽での立ち座りなど要所に手すりを設置することが必要です。また、ヒートショックが原因となる冬場の浴室の事故が多いため、浴室暖房や洗面脱衣室暖房などの設置も検討しましょう。

手すりやベンチを設置する場合の画像
東京都23区における入浴中の事故死のグラフ
  • 東京都福祉保健局東京都監察医務院のホームページに公開されている「東京都23区における入浴中の事故死の推移より過去10年間 (平成16年~平成25年) の月当たりの平均件数」から作図した(小数点第一位以下四捨五入)。
    http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kansatsu/oshirase/index.html新規ウィンドウで開く(外部のウェブサイトに遷移します)
    この図における入浴中のデータは、脱衣所、洗い場、湯船に漬かっている、その全行為時における死者数を集計しています。

補助制度を活用して賢くリフォーム

バリアフリーに関する公的補助制度の主なものをご紹介します。

介護保険

補助金の受給対象者になるのは要支援・要介護に認定されている方で、助成限度額は20万円です。そのうち9割が支給されますので、最高で18万円の補助金を受け取ることができます。(一定以上の収入がある方は2割もしくは3割の負担となります)介護保険が適用される工事には条件があり、手すりの取り付け・段差の解消・滑りにくい床への変更・引き戸などの扉への取り替え・洋式トイレ等への取り替え工事が対象となります。必ず事前に申請が必要で、審査結果前に着工してしまうと補助を受けられないので注意が必要です。

地方自治体による保険

介護保険加入や高齢者でなくてもバリアフリーリフォームに補助金を支給する地方自治体があります。各地域によって支給額や対象の工事内容は異なりますので、お住まいの地域がどのような制度を設けているかよく調べておきましょう。

バリアフリー税政優遇

バリアフリー税政優遇居住中の住宅のバリアフリーリフォームを行うと、条件を満たせば所得税の減税を受けることができます。また、家屋の固定資産税の減税を受けることもできます。

バリアフリーリフォームは、体が悪くなったから行うのではなく、予防的に行うことが理想だと思います。元気で快適な暮らしが長く続くよう少し早めに対策をすることをお勧めします。

制度の概要 所得税額の控除措置※1 固定資産税の減額措置※1
投資型減税 ローン型減税
制度名 住宅特定改修特別税額控除 特定増改築等住宅借入金等特別控除 家屋の固定資産税
減税期間 リフォーム後居住を開始した年分(1年) リフォーム後居住を開始した年分から5年 翌年度(1年度分)
制度期間 改修後の居住開始日が
平成21年4月1日~
平成33年12月31日
改修後の居住開始日が
平成19年4月1日~
平成33年12月31日
改修工事完了期間が
平成19年4月1日~
平成32年3月31日
対象となるリフォーム 一定のバリアフリーリフォーム
(借入金の有無によらない)
償還期間が5年以上の借入金により行う一定のバリアフリーリフォームを含む増改築 一定のバリアフリーリフォーム
(借入金の有無によらない)
控除又は減額の上限額 20万円※2 12.5万円/年※3
(5年間で62.5万円)
家屋の固定資産税額の1/3
(100m²相当分まで)
バリアフリーリフォーム費用の要件 50万円超(税込) 50万円超(税込) 50万円超(税込)
手続きの窓口 税務署(確定申告) 税務署(確定申告) 市区町村
(工事完了後3ヶ月以内の申告が必要)
  • ※1「所得税額の控除」と「固定資産税の減額」は併用して優遇を受けることが可能です。
  • ※2改修工事費用に含まれる消費税等の税率が8%である場合の金額であり、それ以外の場合は15万円となります。
  • ※3改修工事費用に含まれる消費税等の税率が8%である場合の金額であり、それ以外の場合は12万円となります。

出典:一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック」

本文中および表の制度は2018年12月時点の内容です。制度は変更になる場合があります

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