健康

データで見る少子高齢社会日本の姿

人類の悲願であった長寿を、世界に先駆けてかなえた日本人の平均寿命は、今や100歳に近づいています。「長くなった老後」という未知の世界では、どのようなことが起きるのか、老いに伴うさまざまな事がらとどのようにつき合っていけばよいのか、一人ひとりが手探りでその答えを探していくことになるのでしょう。
国際長寿センター日本(ILC-Japan)は、Productive Agingを基本理念に、超高齢社会における新たな価値観の創造と、社会と個人の意識改革に向けた活動を、世界17カ国で行っています。高齢者が社会の半数近くをしめる時代に向けた広報啓発活動を行っている国際長寿センター日本の志藤 洋子事務局長に、私たちが生きるこの時代をデータで確認しながら、豊かな老いとどのように付き合っていけばよいのか、解説をいただきました。
志藤 洋子 氏

国際長寿センター日本(ILC-Japan)
事務局長
志藤 洋子 氏

データで見る少子高齢社会日本の姿
私たち日本人は人生100年時代をむかえ、人類史上初めての「長い老後を生きる」という、未知の世界への挑戦を始めました。女性の平均寿命は87歳、男性も80歳を超えましたが、その方々が生まれた昭和初期の平均寿命は男女ともに40歳代でしたから、親の倍以上も生きたことになります。
この劇的なまでの長寿化は、敗戦から国を挙げて復興に取り組み、高度経済成長を遂げることと、歩を合わせて進んできました。日本人の長寿化は、まさに国の平和と繁栄の象徴として、世界に誇るべきことです。しかし、一方でこの急激な変化は、私たちの中の「高齢者」像にいささかの混乱をもたらしました。「長老」や「ご隠居さん」として大切に敬われながらも、社会的には弱者として福祉や援助の対象であった時代とは、明らかに違うタイプの高齢者が増えています。
特に前期高齢者と呼ばれる65歳から74歳までの多くは、健康で活動的、心身共に自立した暮らしを営んでいます。そのような新しいタイプの高齢者の意識や価値観、健康状態、その暮らしぶりはどのようなものでしょう。
また高齢者が多くなる地域社会の様子、ひいては国全体はどのように変化していくのでしょうか。
さまざまな数字を基にしながら、個人と社会の姿を探ってみたいと思います。
平均寿命の推移と将来推計
男性 女性
1935年(昭和10年) 46.92 49.63
1950年(昭和25年) 58.00 61.50
1970年(昭和45年) 69.31 74.66
2000年(平成12年) 77.72 84.60
2020年(平成32年) 80.93 87.65

出典:厚生労働省「簡易生命表」「完全生命表」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」

主観的健康観(75〜79歳)
主観的健康観(75〜79歳)

出典:内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」

個人の意識と家族構成
多くの調査からは、自分の考えを持ち、健康で活動的、社会との関わりも失わない新しい高齢者の姿が伺えます。「老いては子に従え」は死語になったようですが、その理由の一つに、戦後の家族構成の大きな変化があります。単身と夫婦のみ世帯で半数以上を占め、三世代同居は3分の1に減り、未婚の子との同居が倍になりました。生涯未婚率が男性23%、女性14%という数字と考え併せると、「家族」とは何かという根本的な問いが浮かびます。
65歳以上の方のいる世帯
65歳以上の方のいる世帯

出典:平成22年 厚生労働省「国民生活基礎調査」

変わる社会
日本が直面する少子高齢社会。新しい家族が作られず、産まれる子供の数が極端に減っているなか、長生きできるようになった高齢者の数だけが増加していきます。2060年には高齢者層(40%)が、働き手層(47%)とほぼ同比率になりますが、私たちはこのような社会を経験したことがありません。まったく違う社会を生きるためには、個人と社会の価値観を変えることが求められます。
特に高齢者の医療は、大きな発想の転換を迫られています。高齢者は治癒の難しい疾病や障害を抱えながら、長く生きるわけですから、医療は治癒や救命を目的とした「治す」役割ではなく、その人の暮らしができるだけスムーズに進むことを「支える」役割になります。「医療モデルから生活モデルへの転換」という言い方もされます。暮らしを優先させるためには、病院や施設という医療やケアだけに特化した場ではなく、あくまでその人らしい暮らしが継続して営める場(家)で、地域のさまざまな職種(医療や介護、歯科や薬剤、リハビリなど)や、インフォーマルなサポートとも連携しながら、今まで通りの生活の継続を実現していくことが大切になってきます。
人口比率の変化
人口比率の変化のグラフ

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年)

介護が必要な時どこで暮らすか
介護が必要な時どこで暮らすかのイメージ

※ 東京家政大学松岡洋子准教授作成資料より改変

老いの自覚とつきあい方
長生きが当たり前の一億総長寿時代には、寿命の長さだけでなく、その質の向上、心身をできるだけ健康な状態に保っておくことが重要になってきます。後期高齢者とよばれる75歳以上になると、残念ながら老いによる心身のさまざまなトラブルが生じてきます。それらが生活機能の低下につながると、自立した暮らしの継続が困難になります。また男女で生活機能の低下原因が違うため、日々の暮らしの困難さの種類や程度も違い、平均寿命と健康寿命の差や自立度の変化にも大きな差があらわれます。高齢期は男女差も含め、個人差が最も大きくあらわれる時期でもあります。
自分自身の健康に「関心と責任」を持つことが、これからの高齢者には求められてきます。ご先祖様の倍以上も長生きできるようになったことには素直に感謝しながら、「長い老後」という未知の世界を良く生きるためには、まず老いを知ること、そして自分の老いと真摯に向き合うことから始めましょう。
平均寿命と健康寿命
男性 女性
平均寿命(2013) 80.21歳 86.61歳
健康寿命(2013) 71.19歳(約9年) 74.21歳(約12年)

出典:厚生労働省「厚生科学審議会(健康日本21(第二次)推進専門委員会)」(2014)

自立度の変化パターン-全国高齢者20年の追跡調査
自立度の変化パターン-全国高齢者20年の追跡調査のグラフ

出典:秋山弘子 長寿時代の科学と社会の構想「科学」 岩波書店2010

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