老後の住まい

老後の住まいの選択肢 今の住まいを終の棲家にするという選択肢

「やっぱり我が家がいちばん!」楽しい旅先から帰ってきたとき、思わず 出る言葉という方も多いのではないでしょうか。
高齢期、心身が弱ってくるとなおさら“住み慣れた我が家が落ち着く”と感じる人は増えるでしょう。ただし、高齢期の在宅生活はリスクも隣り合わせです。
今の住まいを終の棲家として安心して住み続けるためのポイントについてシニア世代の住まい選びについて詳しい、山中由美氏に解説をいただきました。
山中氏は国内外の高齢者施設を約700ヵ所訪問調査し、シニア世代の暮らし・資金計画、介護に関するテキスト発行やセミナーを多数実施されています。
(株式会社Pro・vision所属 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、福祉住環境コーディネーター 他)
山中 由美(やまなか ゆみ)氏

山中 由美(やまなか ゆみ)氏

交通事故死より多い「家庭内事故死」
「長年住み慣れた家は、目をつむっていてもわかる」と感じる方がいるかもしれませんが、実は、高齢期には自宅内での事故がとても多いのです。グラフにあるように、高齢者(65歳以上)の「不慮の事故死」では、交通事故死の件数より家庭内で亡くなる不慮の事故死のほうがずっと多くなっています。
最も多い「窒息」は、食べ物を喉に詰まらせてしまう状況がほとんど、2番目の「転倒・転落」では、スリップ・つまづきなどによる同一平面上での転倒がほとんどを占めます。「同一平面上」とは段差がないフラットな場所です。転倒をしてケガだけでなく死まで至る怖さを実感しますね。そして、溺死・溺水は浴槽内です。これらの事故は、特にひとり暮らしの場合、自分で緊急対応することが難しいため危険度が高まります。
65歳以上の不慮の事故死 件数(2013年)(単位:人)
65歳以上の不慮の事故死 件数のグラフ

「人口動態調査」(2013年)より

バリアフリーの考え方
このように“自宅内の事故のリスク”を考えると「バリアフリー化しなくては」という考えに結びつくのですが、実は元気なうちに全てバリアフリーにしてしまうのは、逆に体を弱らせてしまうという説もあります。
本来なら、階段や段差があるために動かしていた筋肉や注意力をなくしてしまうからです。バリアフリーとは「そのバリアを取り除けば自立生活ができる」という考え方が基本です。できれば、心身の状態に合わせてその時に必要な「バリアフリー化」を考えたいものです。
介護保険を上手に利用する
要介護認定されると、要介護度に応じてさまざまなサービスが使えます。訪問介護や通所介護以外に是非検討したいものが、「住宅改修」と「福祉用具の購入」です。
ただし、利用するにはさまざまな要件や範囲がありますので、必ず担当のケアマネジャーに事前に相談が必要です。住宅改修は1住宅につき20万円迄、福祉用具は1年間に10万円迄なら、その金額の1割もしくは2割の自己負担ですみます。
  • 例1)階段に手すり取り付け 12万円(自己負担は1.2万円)
  • 例2)家具調ポータブルトイレ購入 5万円(自己負担は5千円)

※ 各自己負担1割の場合

ハード(設備)と併せてソフト(サービス)も確認
高齢期の在宅対策を考えるとき、わかりやすいハード(設備)部分に偏りがちです。しかし、同時に目で見えにくいソフト(サービス)も検討しておきましょう。特に、子世代と同居していない、身内が近隣にいない場合は、外部のサービスで利用しやすいところはどこか、介護保険制度の仕組みや居住する自治体の福祉制度等とあわせて情報収集しておきたいものです。
要介護認定されていないが生活が少し不便なとき
自治体ごとに「介護保険以外の高齢者のためのサービス」があります。たとえば、栄養バランスのとれた食事の配達、緊急通報システムの貸し出し、介護保険外のホームヘルプやショートステイなどです。自治体によって内容や費用は異なります。
介護保険を使ってサービスを利用したいとき
まずは役所窓口で「要介護認定」の申請を行い、認定を受けます(結果まで約1ヵ月)。認定されたら担当のケアマネジャー(介護計画を作成する専門家)と相談し、どんなサービスをどれくらいの頻度で利用するか決め、各事業所と契約し利用します。
介護が重度化したとき
寝たきりに近い状態や認知症が重度になると、家族構成などにより自宅での介護が難しくなる場合もあります。念のため、周辺の施設情報なども収集しておくほうが良いでしょう。
契約書などの理解や判断ができない、金銭管理が難しくなってきたとき
軽度の認知症などで生活の細かい判断が難しくなった場合、「日常生活自立支援事業」という高齢者の権利擁護制度があります(窓口は市町村の社会福祉協議会等)。福祉サービスの利用援助、日常の金銭管理、通帳の預かりなどをしてもらえます(原則有料)。判断能力が不十分になれば、成年後見制度の利用も検討します。

高齢者のためのサービスを調べるためには、役所や地域包括支援センター(中学校の学区に1カ所程度設置)の窓口で確認します。 サービス利用時の注意点は、あくまでも自立を支援するという観点です。「ラクをしたいから」「面倒だから誰かにしてほしい」という考え方では、さらに心身の低下を招きます。客観的に良いサービスを選ぶためにも、知識と経験豊富なケアマネジャーのアドバイスを参考にしてください。
「最期まで自宅で暮らす」準備チェックリスト(一例)

※ チェックリストは一例です。他にも必要に応じて元気なうちに準備・対策を考えておきましょう。

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