生き方・暮らし方

地域に根ざした暮らし 〜地域デビューのすすめ〜

(原稿資料『ジェロントロジー入門 <「生(いき)・活(いき)」知識検定試験公式テキスト>』社会保険出版社・刊)
退職後は何をするか?
一昔前までは、定年退職後は「余生」と言われましたが、平均寿命も健康寿命もはるかに延びた今、定年退職はセカンドライフのはじまりです。
ところで、一般的な定年退職後の自由時間は実際にはどのくらいあるのでしょうか。以下の試算では、60歳で退職した場合、これまで働いてきた時間とほぼ同じだけの時間があることが分かります。

長年仕事をしてきた方の中には、まだまだ働きたい方も、退職を機に自分の趣味や得意分野で生きがいを求める方もいるでしょう。いずれにしても、新たな行動の軸足は、職場から生活圏である地域へと移っていくケースが多いのです。
注目される「地域デビュー」
高度経済成長期から今日までの間に、学業や仕事のために地元を離れて人々が都会へと流出していきました。その結果、世代間のバランスを欠いた地方では、ともに助け合う「共助」が機能しなくなり、高齢化とともにどんどん活気を失っていきました。
こうした中で、団塊世代を中心とした退職者がUターン、Iターンによって再び地方へと移り住んだり、長年暮らしてきた地域の中で活躍する「地域デビュー」が期待されています。地域デビューは、地域の担い手を求める社会と、生きがいを求める定年退職者のマッチングの第一歩ともいえます。
地域デビューをするには
これから地域デビューを考えたい方は、まずは各自治体の相談窓口に問合せてみましょう。支援イベントや講座なども開催しています。また自治体によっては、「地域デビューの手引き」などをホームページ上で提供しているところもあります。
自治体による情報提供(東京都の例)

地域デビューの心得として、(1)自分の肩書きなどを言わない、人の肩書きなどを詮索しないこと、(2)誇らしげに過去の業績や仕事の話をしないこと、(3)隣近所のうわさ話はしないこと、(4)むやみにへりくだったり、卑屈になったりしないこと、(5)特技、趣味の情報は、積極的にアピールしていくこと、の5つが大切です。以下のチェックリストでYESが多い人は、これらを意識して、楽しく活動していきましょう。
コミュニティカフェを利用する
コミュニティカフェは、地域住民の交流として誰でも気軽に利用できる、いわば地域の「茶の間」のような場所です。個人や仲間同士で開いたカフェやレストランもあれば、行政や法人が主体となって運営しているものもあり、自宅開放型や公共施設借用型など形態はさまざまです。子育てや高齢者などのテーマを掲げていたり、さまざまなイベントが開催されることで、共通の関心や目的を持った人が集まりやすいのが特徴です。

足立区にオープンしたFor You Cafeもその一つ。特別養護老人ホーム「奉優の家」に併設されるこのカフェは、地域住民が集まる憩いの場となり、高齢者の生きがいづくり、子育て支援、防犯・防災などの地域福祉を実現するための場所として設立されました。
「あえて利用者の年齢を括らないことで、親子連れの方や、退職したばかりの60代の方にも気軽に起こしいただけるようにし、世代を越えたコミュニティ形成の場になることを期待しています」と、このカフェの運営を担当する社会福祉法人奉優会の阿波連(あなみ)さん。日中は、教養の講座や子育て・趣味など共通の話題でテーブルを囲むカフェ、また夜にはスポーツ中継や参加型イベント、医療や介護に関する勉強会など、さまざまな企画を予定しています。

コミュニティカフェは地域の人々とともに成長していくのも特徴で、市民ボランティアが講座の講師を努めたり、趣味の成果を披露するステージとして活用されることで、より地域に根ざした場へと成長していきます。「60代の方・高齢者の方々は、沢山の経験と知識を持っています。その知識を社会で活かすための場所を提供し、活かし方を一緒に考えていきたいと思っています」と阿波連さん。カフェを利用していた地域の男性も、「こういう場所で、地域の人と昔話に花を咲かせたら楽しいし、今後興味のある講座があれば是非参加してみたい」と語っていました。

コミュニティカフェの情報は、長寿社会文化協会(WAC)が運営する「全国コミュニティカフェ・ネットワーク」のウェブサイトで探すことができます。神奈川、愛知、石川、京都の各府県はコミュニティカフェガイドブックが発行されていますので、チェックしてみてください。自分の趣味や目的に合った場所を見つけ、交流の輪を広げませんか?

(取材協力:社会福祉法人奉優会)

地域のサークル活動や習い事をはじめてみる
好きなこと、やりたいことだから続けられるのが、趣味を通じた地域デビューのメリットです。ここでは、趣味のサークル活動や習い事で仲間づくり・生きがいづくりをする方々を紹介します。

若いころに日本舞踊を習っていたSさん(女性・70代)。健康と生きがいのために、65歳の時に近所の扇舞教室に通いはじめました。扇舞とは、詩吟にあわせて扇子を手に舞う、日本の伝統芸能です。実は、Sさんはご主人と一緒に地区の「詩吟の会」にも通っていたことがあり、そこで興味を持ったのが、詩吟と日本舞踊両方の経験が活かせる扇舞でした。
「健康のために始めた習い事だけど、いい先生、いい仲間にめぐり合えたことが良かった」と語るSさん。以前から近所の人との交流はありましたが、同じ趣味を持った人たちとの新しい出会いによって、交流の輪がさらに広がりました。練習中も常に明るい雰囲気で、「気持ち良い場になるように、皆が気配りをし合っているお陰」だといいます。一つひとつの動作を覚えるのは大変でも、自分で始めたことだから頑張れる、動けなくなるまで続けたいと話していました。

長年勤めた会社を数年前に早期退職したHさん(男性・62歳)は、旅行先などでのビデオ撮影が趣味。退職を機に好きなことに時間を使おうと、地域のアマチュアビデオ愛好者が集まるビデオクラブに参加しました。
ビデオクラブでは、自分で撮影した映像を編集して上映会を開いたり、研修で撮影技術を磨いています。Hさんは、地域の遺跡を巡って歴史を紹介する短い映像作品を作っていますが、ある時、公民館の行事で上映したところ大好評でした。「自分の趣味で人に喜んでもらえるのは、想定外だったけれど嬉しいことですね」とHさん。今では地区行事の撮影役を引き受けるなど、ビデオを通じて地域との交流も広がっています。

趣味の場は男性が少なく苦手、という方には、60歳以上の男性が集まって、飲み会での交流やビリヤードなど自分たちが好きなことを楽しむサークルなどが存在する地域もあります。まずはお住まいの地域の行政や福祉施設などに問い合わせてみましょう。
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