第19回「2021年のコンセンサス予想」

2020年12月28日

「2021年のコンセンサス予想」

「世の中の来年の相場見通しはどうなっているのか」――。

「コンセンサス」は「複数人の意見の一致や合意」を指します。金融市場の予想に関するコンセンサスとして注目されるのは、金融情報専門ニュース会社などが専門家などから調査・集計した予想平均です。

為替相場のコンセンサス予想は?

2021年の為替相場のコンセンサス予想はどのようになっているでしょうか。

表1は、QUICK社が12月上旬に日本の外国為替市場の関係者を対象に調査した結果です。

(表1)為替相場のコンセンサス予想<QUICK調査>

(表1)

(出所:QUICK月次調査<外為>)

調査では、3ヵ月後と6ヵ月後の予想を尋ねているため、2021年2月と5月の見通しとなっています。

84名の回答者の単純平均を見ると、ドル円レートは2月・5月とも104円に近い水準であり、調査期間中の水準からもあまり離れていません。つまり、コンセンサス予想は今後半年について横ばいを示唆しています。ユーロ円レートも、2月・5月ともに125円前後となっていますが、調査期間中の水準より1円ほどユーロ安・円高が見込まれています。

もう少し先まで予想対象にしているのが、ロイター社の調査です(表2参照)。QUICK社と同じく12月上旬に調査を実施し、3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後の見通しを集計しています。回答は世界各国から集められ、対象通貨も多岐にわたっています。表2には、ドル円・ユーロ円・豪ドル円の3つのレートを表示しました。

(表2)為替相場のコンセンサス予想<ロイター調査>

(表2)

(出所:Thomson Reuters、為替相場NY終値はBloomberg)

ドル円レートの2021年11月予想の平均は、調査時点よりややドル安・円高の103.60円となっており、2月・5月からも円高方向が予想されています。

一方、ユーロ円レートは、2月にユーロ安に振れた後、11月へ向けてユーロ高となる見込みになっています。豪ドル円レートも2月に豪ドル安となり、11月へ向けて上昇する予想です。

対円レートでドル・ユーロ・豪ドルを見ると、ドル安傾向が続く一方で、ユーロと豪ドルは年初に一旦下落後、年後半へ向けて上昇すると見ている人が多いと読み取ることができます。

日米株価のコンセンサス予想は?

続いて、日米株価のコンセンサス予想を確認してみましょう。

表3は、QUICK社が日経平均株価とダウ工業株30種平均について市場関係者の予想を調査・集計したものです。QUICKの外為調査では予想対象は6ヵ月後まででしたが、株式調査では1年後の予想も集計されています。

(表3)日米株価のコンセンサス予想<QUICK調査>

(表3)

(出所:QUICK月次調査<株式>)

日経平均株価の予想平均は、3ヵ月後・6ヵ月は26,000円台半ば、2021年末に27,000円台へ上昇していくことが示唆されています。2020年に日本株は大幅上昇してきましたが、1991年以来の高値である日経平均株価27,000円を突破することができていません。株式市場関係者の平均予想では、2021年にはバブル崩壊後の高値をつけると期待されている模様です。

一方、ダウ工業株30種平均は、2021年末の30,500ドル前後への小幅上昇が見込まれています。2021年12月の予想平均値30,495ドルは、2020年12月18日につけた最高値30,343.59ドルを上回っています。

日本株・米国株、いずれについてもコンセンサス予想は2021年末へ向けて小幅高という見通しになっています。

コンセンサス予想を利用する際の注意点

QUICK調査もロイター調査も、専門家を対象に予想を集計していますが、専門家の予想が必ずしも的中するわけではありませんし、予想の平均が実現する可能性が高いわけでもありません。また、平均の動きが、専門家の多くが予想する動きに一致するわけでもありません。

さらに、コンセンサス予想は、あくまでも現時点で専門家が予想している為替相場・日米株価の平均値に過ぎません。金融市場は時々刻々と変化しているため、予想の出発点となる足もとの相場水準は調査時点から動いてしまっています。ロイター調査のドル円レートは2021年11月に103.60円で、予想時点からは円高方向でしたが、本コラム執筆時点の12月21日では103.30円水準であり、この水準からは円安方向になってしまいます。

しかし、コンセンサス予想にも意味はあります。予想の平均値の動き方と同時に、最大値・最小値の幅を確認することで、予想のバラツキ度合いを測ることができます(可能であれば標準偏差を確認する方が良いです)。さらに、専門家の中から、強気と弱気の代表格を見つけ、報道などから強気の理由・弱気の理由を確認しておくことで、見通しの分岐ポイントを予め押さえておくことができます。

2020年は、2019年末に誰にも予想できなかったコロナ禍が金融市場を席捲しました。2021年も、想定外の出来事がマーケットに大きな影響を与えるかもしれません。しかし、現時点で分かっていることをきちんと踏まえておくことは重要です。こうして準備しておくことで、新しく発生した材料に対処することが可能になります。

(三井住友信託銀行マーケット企画部 瀬良礼子)

《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》

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