親子で考えたい相続対策
 
 

皆さまは「相続」について、親子で話し合われたことはあるでしょうか。

最近は親御さまよりも将来相続人となる子世代が不安を感じ、「相続対策」を考えるケースも増えています。
その一方で、人生に何度も起こるわけではないため、実際に相続が起きたらどんな困りごとがあるのかなど、具体的にイメージできる人は少ないようです。

そこで、今回は、ファイナンシャルプランナーの八束和音氏に、親子で考えたい相続に関するポイントを伺いました。
「自分はまだまだ元気!」と思っている親世代は多く、「親の死」を前提とする相続について、お子さまからはなかなか切り出しにくいものです。
親子で考えたい相続対策として、参考にしていただければ幸いです。

 

Topix1:相続が発生したら困ることとは?

Topix2:親子で考えるきっかけをどう作る?

Topix3:まずは「一緒に知る」ことから ~セミナー・相談会の活用を~

 
Topix1:相続が発生したら困ることとは?
 
その1 預貯金口座の凍結

相続が発生すると様々な手続きに加え、葬儀の費用など様々な支出もあります。急に百万円単位の支出が発生しても、すぐに用意できるとは限りません。

「葬儀代は本人の預貯金で!」となっても、親御さま(被相続人)が亡くなった時点で、全ての財産は「相続財産」となり、保有していた預貯金口座も凍結されます。
2019年7月の民法等の改正で、遺産分割前の相続預金の払い戻し制度が施行されましたが、相続資産の一部に限られます。
こうなると、たとえ配偶者さま・お子さま(相続人)であってもお金が足りなくなり、結局、立て替えが必要になることも。
また、親御さまが認知症や寝たきりになってしまって、ご自身の預貯金を動かせなくなるケースもあります。不測の事態に備えて事前に対策を考えておきたいですね。

 
その2 予期せぬ相続税の発生

最近、「かかると思わなかった相続税がかかり、大きな出費になった」というケースが増えています。
2015年(平成27年)の税制改正によって相続税の基礎控除が下がり、課税対象者の割合が4%強から8%強へと上昇したことが主な理由です。
一度、親御さまが保有している資産を評価してみて、「相続税はかかるのか」「相続税がかかる場合にはどのように支払うのか」などについて、親子で話し合っておくのが理想です。

【相続税課税割合の推移】国税庁「令和元年分 相続税の申告事績の概要」より

22年度分:4.2%, 23年度分:4.1%, 24年度分:4.2%, 25年度分:4.3%, 26年度分:4.4%, 27年度分:8%, 28年度分:8.1%, 29年度分:8.3%, 30年度分:9.5%, 元:8.3%
 
その3 親が取引している金融機関がわからない

「親が取引している金融機関がわからず大変だった」というのも、相続発生時に耳にする言葉です。

実際に相続が起こると、全ての金融機関の解約手続きや有価証券の名義変更を行わなければならず、その手続きには親御さま(被相続人)のみならず、配偶者さま・お子さま(相続人)全員の戸籍謄本や印鑑証明が必要になります。
取引のある金融機関の口座番号や届出印・通帳の保管場所などがわかっていれば、少し安心ですが、親子であっても「その辺りのことは知らない」「他の家族の手前もあって聞きにくい」、といったことがあるようです。
いずれにせよ、多数の金融機関とのやりとりは、残される家族にとっては大きな負担になりますので「なるべくスリム化して欲しい」ということも、あらかじめ伝えておきたいですね。

 
その4 自宅(実家)の相続 ~不動産は分けるのが難しい~

親御さまの自宅(実家)の相続の困りごともよく耳にします。

不動産は分けるのが難しいため、「相続財産が親御さまの自宅しかなく、相続人が複数いる場合」は、トラブルになりやすいといわれています。
一方、空き家のまま放置すると、固定資産税等の負担だけが掛かり、「負の財産」になる可能性もあります。
もし、お子さま(相続人)はマイホームを購入済で、相続しても実家に住む予定が無いのなら、誰が相続するのか、それとも売却して現金化するのかなど「分ける方法」も考えなければいけません。
相続発生時のご自宅の扱いについては、親御さまのご意向も踏まえつつ、選択肢をイメージしておきたいものです。

 
Topix2:親子で考えるきっかけをどう作る?

では、実際にどのように親御さまに話を切り出せばよいのでしょうか?

先ほどの「困ること」の例(その1~4)を使い、「身近な人でこんなことがあった」と引き合いに出すのも一つの方法です。

「相続」というキーワードを親御さまの耳に入れても、「ウチにはそんなお金はないから」「子供たちは仲が良いから」という反応も多いようですが、相続時にもめる「争続」となるのは、大きな財産があるケースだけではないという事実を示すのも効果的です。
司法統計のデータからもわかるように、相続人同士が争いになり調停が成立した遺産額は、1,000万円以下が全体の1/3を占めています。
さらに遺産額が5,000万円以下では、全体の約3/4に上ります。
自分の死後、大切な家族が争う事を望む親はいないでしょう。「決して他人事でない」と感じてもらえれば、対策を進めやすくなります。

【遺産額別の認容・調停成立割合データ】最高裁判所「司法統計年報」(平成30年度)より三井住友信託銀行作成。

1,000万円以下:33.0%, 5,000万円以下:43.3%, 1億円以下:11.1%, 5億円以下:7.1%, 5億円超:0.7%, 算定不能・不詳:4.8%

また、年齢とともに体調に不安を感じる親世代も多いので、「最近○○がすぐれなくって」という会話を切り口に、現在加入している生命保険の内容について話し合ってみるのも一つです。
生命保険の内容を整理しつつ、死亡保険金の場合、相続発生時に「500万円×被相続人の数」の非課税が活用できることを伝えてみるのもよいでしょう。
シンプルな相続対策として、興味を示す親世代も多いようです。

 
Topix3:まずは「一緒に知る」ことから ~セミナー・相談会の活用を~

相続対策は親だけがいろいろ考えていても、お子さまがその内容を理解していなければ実際の相続時に慌てることになってしまいます。
また、一方的にお子さまがあれこれ口出しをしても、上手くいきません。親子で一緒に対策を進めていくのが理想です。

「相続や税金の話は難しそうだから考えたくない」という場合には、セミナーや相談会に親子で一緒に参加してみるというのも良い方法です。
コロナ禍でオンラインでの開催も増えていて、遠方に住んでいたり仕事に忙しい子世代も、参加しやすい環境が整いつつあります。
「私(僕)と一緒に参加してみない?」という形なら、切り出しやすいかもしれません。

また、信託銀行には相続・資産承継を専門とする財務コンサルタントがいます。
「専門家に話を聞くのはハードルが高い」という場合には、気軽に親子でオンライン相談をすることから始めてみてはいかがでしょうか。お子さまの口からは聞き出しづらい具体的な点についても、専門家を通すことで話をしてもらいやすくなります。
親世代の「想い」をくみ取りながら、大切に築いてきた資産を上手に子世代へと引き継いでいく…そんな相続対策を考えていきたいですね。

 
 

【筆者紹介】八束 和音(やつか かずね)
ファイナンシャルプランナー (CFP® 1級FP技能士)

1967年生まれ、大阪府出身。

大手住宅メーカーに勤務の後、アメリカに留学。マーケティング、ファイナンシャル・プランニングを学ぶ。

帰国後FP事務所を経て、1998年に独立、「エフピィ ハーモニー」を立ち上げる。

現在は執筆、セミナー講師、相談業務などを主要業務として、関西を拠点に活動中。
生活者の目線を大切にした「頑張りすぎないマネープラン」をモットーに、数多くの顧客へのアドバイスを行っている。

※本コラムに掲載している内容は作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものです。また、執筆者個人の見解であり、当社の公式見解を示すものではありません。

 
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