退職金の相場は?退職金で住宅ローンを繰り上げ返済/一括返済するメリット・デメリット

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定年退職時にうけとる退職金の使い道のひとつとして、住宅ローンの「繰り上げ返済」があります。住宅ローンの借入時に退職金での返済を計画されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、「そもそも退職金はいくらあるの?」「退職金を使っても、老後の生活費は大丈夫?」といった不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そこでこのコラムでは、退職金の相場や、退職金を住宅ローンの繰り上げ返済/一括返済にあてるメリットやデメリットを紹介します。

勤務先の退職金制度を確認しよう

退職金を使って住宅ローンを繰り上げ返済するつもりなら、勤務先の退職金制度について理解を深めて、退職金の目安額を確認できると理想的です。もし退職時に一括でうけとる退職金額が住宅ローンの残債よりも大きければ、「一括返済(=全額返済)」という選択肢も出てきます。

どんな退職金制度があるの?

企業の退職金制度には、さまざまなものがあります。退職金制度が1種類だけの企業もあれば、複数の制度を導入している企業もあります。

例えば大企業だと、会社独自の退職一時金制度や確定給付企業年金(DB)に加えて、企業型確定拠出年金(DC)などを導入しているケースなどがあります。ひとつひとつは大きな金額でなくても、全てを合計すると大きな金額になります。

そのため、まずは勤務先で導入されている退職金制度の種類を把握すると良いでしょう。代表的な退職金制度の種類は次の通りです。

<代表的な退職金制度の種類>
一時金形式
  • 会社独自の退職一時金制度
  • 中小企業退職金共済制度
年金形式
  • 会社独自の退職年金制度
  • 厚生年金基金
  • 確定給付企業年金(DB)
一時金・年金を選択可能
  • 企業型確定拠出年金(DC)

退職金の受け取り方は、大きく分けると、まとまったお金が一括で支給される「一時金形式」と、毎月などのように一定の周期に支給される「年金形式」があります。詳細は勤務先の規定などによりますが、一時金を年金形式で受け取れる場合、年金を一時金で受け取れる場合、一時金形式と年金形式を併用できる場合もあります。

勤務先の退職金制度の確認方法は?

退職金制度の有無や、その金額を確認したいときは、就業規則のなかの「退職金規程」を確認しましょう。勤続年数や役職、年収などによって決められた金額が支給されるのが一般的です。自身の職歴と照らし合わせて計算すれば、退職金の目安額がわかります。

ただ、退職金の金額はとても複雑な計算が必要なことが珍しくありません。不明点は、勤務先の人事部や給与計算に関わっている部署に問い合わせて確認しましょう。退職時期が近い場合は、具体的な目安額を教えてもらえることもあります。

そうはいっても、就業規則を読み解いたり、人事部等へ問い合わせたりするのはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。そこで次は、退職金の平均相場について紹介します。

企業の規模別!定年退職金の平均相場は?

退職金の平均金額は、学歴や勤務先の規模によって大きく変わります。そもそも、退職金がない場合もあります。そこで、大企業と中小企業それぞれについて、卒業してからすぐに就職して定年退職まで勤めきった時の定年退職金の平均金額やモデル金額を紹介します。

大企業の定年退職金の目安

まずは大企業(※1)において、定年退職まで同一企業に勤務した男性(満勤勤続)の平均退職金額を紹介します。この調査を見ると、大企業では2,000万円以上の定年退職金が期待できることがわかります。

<大企業(※1)の定年退職金の平均支給額(男性)>
学歴 定年退職金の平均額
大学卒 2,230万4,000円
高校卒 2,017万6,000円

※1調査対象が資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上(介護事業所以外)の企業であるため、本コラムでは「大企業」として分類。

資料:中央労働委員会「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」より作成

中小企業の定年退職金の目安

次は、中小企業(※2)において、学校卒業後すぐに入社した方が定年退職まで同一企業に勤務した場合のモデル退職金額です。この調査から、中小企業では、1,000万円前後の定年退職金が期待できることがわかります。

ただし、同調査によると、「退職金制度なし」と回答した企業が28.3%ありました。つまり、4社に1社は退職金がないため、注意が必要です。

<中小企業(※2)の定年退職のモデル退職金額>
学歴 定年退職のモデル退職金額
大学卒 1,091万8,000円
高校卒 994万円

※2調査対象は、従業員が10人~299人の都内中小企業

資料:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」より作成

このように、勤務先の企業が大企業か中小企業なのかによって、期待できる退職金の金額は大きく差が出ます。自社の退職金制度についてよくわからない場合でも、勤務先の従業員数や退職金制度の有無だけでも確認しておけたら、退職金の目安額が予想できるでしょう。

勤続年数や退職理由別の退職金相場は?

働き方が多様化する昨今では、転職を経験している方も少なくないでしょう。そこで次は、大企業と中小企業それぞれの「勤続年数別」の退職金相場を紹介します。

次の表の通り、大企業の場合は、勤続年数が25年を超えると退職金が1,000万円を超えています。中小企業の場合も、勤続年数が25年を超えると500万円前後の退職金が期待できることがわかります。

<大企業(※1)の勤続年数と退職理由別のモデル退職金(男性)>
勤続年数(年齢) 会社都合 自己都合
10年(32歳) 310万2,000円 179万9,000円
15年(37歳) 577万9,000円 387万3,000円
20年(42歳) 953万1,000円 726万5,000円
25年(47歳) 1,393万8,000円 1,143万1,000円
30年(52歳) 1,915万4,000円 1,706万7,000円

※1調査対象が資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上(介護事業所以外)の企業であるため、本コラムでは「大企業」として分類。

資料:中央労働委員会「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」より作成

<中小企業(※2)の勤続年数と退職理由別のモデル退職金(大学卒)>
勤続年数(年齢) 会社都合 自己都合
10年(32歳) 149万8,000円 112万2,000円
15年(37歳) 265万8,000円 212万9,000円
20年(42歳) 414万7,000円 343万1,000円
25年(47歳) 578万2,000円 490万6,000円
30年(52歳) 754万2,000円 653万6,000円
 

※2調査対象は、従業員が10人~299人の都内中小企業

資料:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」より作成

この調査結果を見ると、勤続年数が長くなるほど、退職金の金額も高くなる傾向があるとわかります。特に、勤続年数が15年や20年を超えてから、退職金の増え方が加速されます。

なお、たとえ同じ勤続年数でも、転職や結婚、病気などを理由に本人の意志で辞める「自己都合退職」の場合は、経営破綻や解雇、定年退職などで辞める「会社都合退職」に比べて、退職金が少ないことがわかります。

勤続年数や年収の高さも退職金に影響する

退職金制度の内容は、勤務先によってさまざまです。しかしながら、「勤務時の年収や役職が高い方ほど退職金が高額になる」「勤続年数が3年や5年などの短期間だと支給されない」「自己都合退職の場合は減額される」といった定めがあることが珍しくありません。

そのため、勤続年数が長い方や、40代や50代に年収や役職が高くなった方は、退職金額が高くなることが期待できます。反対に、転職を繰り返してきた方などは、ずっと同じ企業で働いてきた方に比べると、退職金は期待できないということを想定しておきましょう。

退職金を使って住宅ローンを繰り上げ返済するメリット・デメリット

退職金額の目安が予想できたら、退職金を使って住宅ローンの繰り上げ返済を行うかどうかについて考えてみましょう。住宅ローンの繰り上げ返済には、次のようなメリット・デメリットがあります。

メリット
  • 毎月の返済がなくなる/減る
  • 支払う予定だった利息分が軽減される
デメリット
  • 手元資金が減る
  • 団体信用生命保険がなくなる/減る

メリット1:毎月の返済がなくなる/減る

退職金を使って住宅ローンを繰り上げ返済すると、毎月の返済額を減らす、またはなくすことができます。

定年退職を迎えると、収入が大きく減ることが予想されます。再雇用などで働き続ける場合でも、50代の給料と比べると半分近くまで減る方もいます。

このように収入が下がる場合は、退職金を使って住宅ローンの返済額を減らすことで、毎月の家計を黒字のままにしやすくなります。

メリット2:支払う予定だった利息分が軽減される

繰り上げ返済の最大のメリットは、今後支払う予定だった利息分を軽減できることです。

例えば、返済期間35年・適用金利が全期間固定で1.5%の住宅ローンを3,000万円借りたとします。この場合、ローン返済を開始してから20年経過した時点で一括返済をすると、約171万円もの利息軽減効果があります。すでに25年経過していた時点であっても約78万円。30年経過している場合でも約20万円の利息軽減効果があります。

<繰り上げ返済(全額返済の場合)の利息軽減効果の例>
住宅ローンの条件:借入額3,000万円・借入期間35年間・固定金利1.5%・元利均等返済
一括返済のタイミング 一括返済の金額
(=元金の残高)
一括返済の利息軽減効果
20年経過時 14,797,595円
(=約1,480万円)
1,717,716円
(=約171万円)
25年経過時 10,229,783円
(=約1,023万円)
779,937円
(=約78万円)
30年経過時 5,306,445円
(=約531万円)
198,129円
(=約20万円)

資料:知るぽると「繰り上げ返済シミュレーション」で試算した結果をもとに作成

住宅ローンの残債が多いときほど、退職金で一括返済を行ったときの利息軽減効果は大きくなります。また、適用されている金利が高ければ高いほど、繰り上げ返済による利息軽減効果も大きくなります。

一方で、すでに完済まで1~2年などと残債が少ない場合や、金利が低い場合は、軽減される利息金額は小さくなります。

デメリット1:手元資金が減る

退職金を使って住宅ローンを一括返済すると、退職金がほとんど手元に残らないケースもあります。その場合、手元資金が減ってもその後の生活に問題がないことを確認することが不可欠です。

公的年金は、基本的には65歳から支給が始まります。65歳になるまでの生活費は「退職金だけが頼み!」という人は、退職金を使った住宅ローンの繰り上げ返済は避けたほうが無難でしょう。

デメリット2:団体信用生命保険がなくなる/減る

住宅ローンには、基本的には「団体信用生命保険(=団信)」という生命保険が付いています。団信は契約者が亡くなると住宅ローンの残債がなくなる生命保険なので、住宅ローンの返済中は、住宅ローンの残債と同額の死亡保障を持っていることになります。

住宅ローンの繰り上げ返済を行うと、残債が減った分、死亡保障も減額となります。もし一括返済をすれば、団信も消滅します。

そのため、子どもや配偶者を扶養している場合など、定年退職後も契約者が亡くなってしまうと経済的に困る人がいる場合は、必要に応じて、団信の代わりに新たな生命保険に加入しましょう。生命保険料の負担を増やしたくないなら、団信付の住宅ローンは繰り上げ返済しないというのも手です。

住宅ローンを退職金で繰り上げ返済するときの方法は?

退職金を使って住宅ローンの繰り上げ返済をするとき、具体的な選択肢としては、借入残高の全部を前倒しで返済する「一括返済(全額返済)」と、一部だけを前倒しで返済する「一部繰り上げ返済」があります。そのうち、一部繰り上げ返済は、「期間短縮タイプ」と「返済額軽減タイプ」に分かれます。

<繰り上げ返済の方法と特徴>
返済方法 内容 特徴
一括返済
(全額返済)
住宅ローンの契約が終了し、返済が不要になる 利息が支払い不要になるため、利息軽減効果が最も大きい
一部繰り上げ返済・返済額軽減タイプ 返済期間はそのままで、毎月の「返済額」を減額する 繰り上げ返済によって元金が減った分、利息が軽減される
一部繰り上げ返済・期間短縮タイプ 毎月の返済額はそのままで、「返済期間」を短縮する 毎月の返済額は減らないが、返済額軽減タイプに比べて利息の総支払い額の軽減効果が高い

一括返済は、利息軽減効果が最も大きいため、返済後の資金繰りに困らないのであれば、おすすめの返済方法です。返済額軽減タイプは、毎月の返済が減るため、退職後の毎月のローン返済額を減らしたい方に向いています。期間短縮タイプは、毎月の返済額は減りませんが、返済額軽減タイプに比べて利息の総支払い額の軽減効果が高いため、定年退職後も再雇用などで働き続けるなど、無理なく今まで通り住宅ローンの返済が続けられる人に向いています。

繰り上げ返済の手続きと手数料

繰り上げ返済の手続き方法は、金融機関によって異なります。インターネットバンキングで手軽にできる場合もあれば、窓口での手続きが必要になる金融機関もあります。

また、金融機関によっては、手数料が1万円~5万円程発生することがあります。一部繰り上げ返済やインターネットバンキングによる手続きであれば、無料であることが多いです。確認してから返済手続きを進めると良いでしょう。

なお、一括返済を行う場合は、金融機関で完済の確認が完了した後は、抵当権抹消手続きが必要です。法務局で手続きを進めるか、司法書士などに依頼しましょう。専門家に依頼する場合は、1万円~2万円が費用の目安となります。

老後資金が不足しそうな時は対策を考えよう

なかには、退職金を住宅ローンの繰り上げ返済にあてることを検討していると、老後の生活に不安が残ることに気が付く方もいるでしょう。その場合は、今の時点で気が付けたことを前向きにとらえて、老後の資金対策を考え始めましょう。

具体的な対策としては、次のような方法が挙げられます。どの方法が適しているのかは、家計状況やご希望の老後生活などによって変わってきます。必要に応じて信頼できる金融機関に相談しながら、どんな対策を取るかを考えていきましょう。

家計の収支を改善する方法
  • 定年退職後も働いて収入を増やす
  • 家計を見直して支出を減らす
  • 住宅ローンの繰り上げ返済を行って金利の負担分を減らす
マイホームに資産価値がある場合に選択できる方法
  • コンパクトな住宅に住み替えることで住居費を抑える
  • 住宅を担保にお金を借りる「リバースモーゲージ」を活用する
その他の方法
  • 手元にある退職金を資産運用して増やす
  • 公的年金を繰り下げて受給し、年金額を増やす
  • 現在の住宅ローンの金利が高い場合は、低金利の住宅ローンに借換える

退職金をどう使うかによって、老後の生活は大きく変わります。また、退職金の使い道を一つに絞る必要はありません。例えば「一部は住宅ローンの一部繰り上げ返済に回し、一部は資産運用する」といったように、2つ以上に分けて使う方法もあります。

いずれにせよ、できるだけ早い時期から検討するほど、選択できる対策方法は多くなりやすいものです。退職の時期が近づいてきて、「老後資金が不足するかも…」と不安に思ったら、すぐに動き出しましょう。

執筆者紹介

張替愛

ファイナンシャル・プランナー(AFP®)、FP事務所マネセラ代表。

夫の海外転勤を機に会社員を退職後、2017年に開業。24歳で結婚して家計管理や資産運用に力を入れてきた経験を活かし、保険や投資商品を販売せずに「実際に役立つアドバイス」を提供するマネー相談を年間100件近く行う。コラムや書籍の執筆・監修、取材、講座などの実績も合計300件以上。得意分野はライフプラン設計(教育費・住宅購入・老後資金)、資産運用、保険、ママのキャリアなど。2児の母でもある。
著書『~共働き800万円以下の夫婦でもハッピーライフ~プチ贅沢を楽しみながらムリなく資産を増やす』(ビジネス教育出版社)

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