退職金の運用方法は?おすすめの運用方法・商品や運用のポイントについて解説


退職金は、定年退職後の生活を支える重要な資金源です。
しかし人生100年時代と言われる昨今、年金収入と退職金を取り崩すだけでは老後生活に不安が残りますよね。老後を安心して過ごすためにも、退職金は適切な運用で増やすことが重要です。
この記事では、退職金の運用を考える際の基本的なポイントや、おすすめの運用方法・商品を紹介します。
退職金の運用をおすすめする理由

退職後の人生は長く、受け取った退職金を生活費として取り崩していくだけでは、将来的に資金が不足するリスクがあります。
退職金の運用は、資産の目減りを防ぎながら、長期的に安定した生活を維持するための重要な手段です。
まずは、退職金の運用をおすすめする5つの理由を紹介します。
1.医療・介護費用にお金がかかる
日本の平均寿命は年々延びており、厚生労働省の「令和5年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は約81歳、女性の平均寿命は約87歳です。
一方で、健康寿命(日常生活に制限なく生活できる期間)は、令和4年(2022年)時点で男性が72.57歳、女性が75.45歳と報告されているため、平均寿命と健康寿命の間には、男性で約8.4年、女性で約11.6年の差が存在することになります。
厚生労働省の「2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査<速報版>」」によると、月々の介護費用は平均9.0万円です。
さらに住宅改造や介護用ベッド購入など、一時的にかかる費用の平均が47万円となっています。
つまり、将来的には生活費とは別に、男性で950万円、女性で1,300万円程度の介護費用は確保しておきたいところです。※
そのため、老後の資金計画を立てる際には、退職金を適切に運用し、将来的な医療・介護費用に備えることが重要です。
※試算式
男性:(9万円×12カ月×8.4年)+47万円(介護一時費用)
女性:(9万円×12カ月×11.6年)+47万円(介護一時費用)
2.老後は収入が減る
定年退職後も、再雇用やパート・アルバイトなどで収入を得ることは可能ですが、現役時代と比べると収入は大幅に減少する傾向にあります。
再雇用の給与は現役時代の40~60%程度になるケースが多く、「令和5年民間給与実態統計調査」の結果でも、60~64歳の平均年収が400万円を超えているのに対し、65歳以上の平均年収は200〜300万円台に落ち込んでいます。
一方で、住居費や水道光熱費、食費、日用品費などの生活費は、65歳以降も大きくは減らないため、退職金や貯蓄を取り崩して生活費を補うことになるでしょう。
退職金の運用は、今ある資産の目減りを防ぎ、老後の収入減をカバーするために役立ちます。
3.年金の受給開始まで数年かかる
公的年金の受給開始年齢は、原則65歳です。
しかし、65歳未満で定年退職をした場合、65歳までの生活費をどう確保するかが大きな課題となります。
60歳からの繰上げ受給も可能ですが、その場合、1カ月繰り上げるごとに0.4%ずつ減額され、最大で24%の減額となってしまいます。
年金受給までの空白期間をカバーするためにも、退職金を計画的に運用し、必要以上に取り崩さないことが重要です。
4.年金だけでは生活が難しい
近年、物価の上昇や消費税の引き上げが家計を圧迫しており、食品や生活必需品以外のものを買わなくなったという声が多く聞かれます。
こうした状況の中、厚生労働省の「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和5年(2023年)時点での公的年金の平均受給額は月額147,360円と報告されています。
しかし、「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」では、65歳以上の高齢者世帯のうち約59.0%が「生活が苦しい」と感じていることが明らかになっており、老後の生活費は定年退職前と大きく変わらないため、年金だけでは十分な生活が難しい現状が浮き彫りになっています。
この現状を踏まえると、退職金を運用して資産を増やし、年金以外の収入源を確保することは不可欠だと言えるでしょう。
5.インフレなどのリスクに備える必要がある
退職金を現金のまま保有しているだけでは、物価上昇(インフレーション)の影響を受け、資産価値が目減りするリスクがあります。
仮に年平均2%のインフレ率が続いた場合、10年後には現在の100万円の価値が約82万円分になってしまうのです。
このようなリスクを避けるためには、インフレに強い資産(株式、投資信託、不動産など)に分散投資をすることが有効です。
適切な資産運用を行うことで、インフレリスクに対応しながら、資産価値を向上させることができます。
退職金のおすすめ運用方法・商品7選

退職金の運用方法には、安全性を重視した方法からリスクを取ってリターンを狙う方法までさまざまな選択肢があります。
「どの運用方法を選べばいいのかわからない」「元本を減らさずに増やす方法はあるのか」など、悩む方も多いでしょう。
ここからは、退職金におすすめの運用方法を7つ紹介します。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解し、自分に合った方法を選びましょう。
1.投資信託
投資信託は、複数の投資家から集めた資金を運用のプロが管理し、株式や債券、不動産などの資産に分散投資する金融商品です。
特に、少額から始められる積立型の投資信託は、リスクを抑えながら長期的に運用できる点が魅力です。
ただし、商品によってリターンの幅が大きく、手数料も異なるため、慎重に選ぶことが重要です。
2.ファンドラップ
ファンドラップは、金融機関に資産運用を一任できるサービスで、投資の知識がなくてもプロが最適なポートフォリオを組んで運用してくれます。
リスク許容度に応じた資産配分を行い、定期的に調整されるため、長期的な資産管理に適した運用方法と言えるでしょう。
ただし、手数料が高くなることがあるので、契約前に手数料体系や期待する運用益やサービス内容をしっかり確認し、自分の投資目的やリスク許容度に合った選択をすることが大切です。
運用初心者の方や、専門家に任せたい方におすすめの運用方法です。
3.定期預金
定期預金は、安全性を重視した運用方法で、一定期間資金を預けることで通常の預金よりも高い金利が適用されます。
退職者向けの優遇金利が設定された商品もあり、低リスクで資産を運用したい方に適しているでしょう。
ただし、一般的に大きなリターンは期待できません。
また、一定期間引き出せないため、資金の流動性が低くなる点にも注意が必要です。
4.個人向け国債
個人向け国債は、国が発行する債券で、満期まで保有すれば元本が保証される安全性の高い金融商品です。
1万円の少額から購入できて一定の利子が支払われるため、安全に資産を増やしたい方におすすめです。
個人向け国債は、定期預金よりも利回りが高い傾向にありますが、株式や投資信託と比べるとリターンは小さいです。
また、発行から1年間は原則中途換金ができないため、すぐに使う予定のない資金で運用しましょう。
5.貯蓄型保険
貯蓄型保険は、保障と資産形成の両方を兼ね備えた生命保険の一種で、一定期間保険料を支払い、満期時に保険金を受け取る仕組みです。
終身保険や個人年金保険など種類があり、老後の資金準備や万一の備えとして活用できます。
ただし、途中で解約すると元本割れのリスクがあるため、契約時にしっかりと内容を理解することが重要です。
長期間資産が固定されても不都合がなく、保障を受けながら資産を増やしたい方におすすめの方法です。
6.外貨預金
外貨預金は、外国通貨で預けることで為替差益や好金利の恩恵を受けられる金融商品です。
日本円よりも金利の高い国の通貨を選べば、円預金よりも高い利息を得ることができます。
ただし、為替レートの変動によるリスクがあり、預入時よりも円高が進むと、元本割れする可能性があります。
また、為替手数料がかかることや、預金保険制度の対象外である点にも注意が必要です。
7.株式投資
株式投資は、企業の株を購入し、配当金や値上がり益を狙う運用方法です。
長期的な視点で成長が期待できる企業の株を購入することで、高いリターンを得られる可能性があり、配当金を重視した投資を行えば、安定した収益を確保することができます。
ただし、価格変動によるリスクも大きいため、投資先の選定や市場動向を確認しながら、適切な投資先を選定することが求められます。配当金も業績不振などの理由で、受け取れる配当金が減ったり支払われなかったりする場合があります。
リスクを抑えるためには、複数の企業の株を保有する分散投資を意識し、長期運用を前提とした計画を立てることが大切です。
退職金の運用で押さえておきたいポイント

退職金を運用する際は、リスクを抑えながら資産を増やすための計画が重要です。
どのような運用方法を選ぶかによって、資産の成長スピードやリスクの度合いが変わるため、慎重に判断する必要があるでしょう。
続いては、退職金を運用する際に押さえておくべき6つのポイントを解説します。
1.ライフプランを考慮する
退職金を運用する前に、ご自身やご家族のライフプランをしっかりと考慮しましょう。
退職後の生活において、どのタイミングで、どのくらいの資金が必要になるのかを明確にすることが重要です。
具体的には、「毎年旅行を楽しみたい」「10年後にリフォームをしたい」「孫の入学祝いを贈りたい」といった将来のライフプランを踏まえ、どのタイミングで、どれくらいの資金が必要になるのかを検討します。
近い将来必要な資金を差し引いた上で、運用に回す金額を決めると安心です。
2.無理のない運用計画を立てる
退職金は、今後の生活を支える大切な資金であり、全てを投資に回すのはリスクが高すぎます。
まずは、生活費や医療費、突発的な支出に備える資金を確保し、余裕資金の範囲内で運用を行うことが大切です。
運用計画を立てる際には、「生活資金」「中期的に使う予定の資金」「長期的に運用する資金」の3つに分けるといいでしょう。
例えば、生活費の3カ月~1年分はすぐに引き出せる普通預金に置き、残りを運用に回すことで、無理なく続けられる運用計画を立てられます。
3.分散して投資する
退職金の運用では、1つの投資先に集中するのではなく、複数の資産に分散してリスクを抑えることが重要です。
例えば、株式だけに投資すると市場の影響を受けやすく、大きな損失を被るリスクがあります。
しかし、債券や不動産、投資信託など異なる資産に分散すれば、1つの資産が値下がりしても他の資産がその損失をカバーできる可能性があり、リスクの軽減が可能です。
4.積立投資をする
積立投資は、価格が高いときには少なく、価格が低いときには多く購入することで、購入価格を平均化する仕組みです。
市場の変動に強く、リスクを抑えて資産を積み上げることができます。
また、税制優遇を受けられる制度を活用すると、運用効率をさらに高められます。
例えば、「NISA(少額投資非課税制度)」は運用益が非課税となる制度です。少額からの長期投資に活用できます。
また、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は運用益が非課税になるだけでなく、掛金が全額所得控除の対象となり、税負担を軽減できます。
自分の年金を作るイメージで、老後資金を長期的に運用したい方におすすめです。
5.長期運用する
退職金の運用では、短期間で利益を得ようとするのではなく、長期的な視点を持つことが重要です。
資産運用は時間を味方につけることで、複利効果を最大限に活用できます。
例えば、年利5%で1,000万円を運用すると、20年後には約2.7倍の資産になる計算です。
短期的な変動に一喜一憂せず、しっかりと運用を続けることが、資産を着実に増やすコツと言えるでしょう。
6.プロに相談する
退職金の運用は、金融商品の選び方やリスク管理が重要になるため、専門家に相談するのもひとつの手です。
ファイナンシャル・プランナーや銀行・証券会社のアドバイザーに相談すれば、自分の資産状況やライフプランに合った運用方法を提案してもらえます。
税金や相続などの面でもアドバイスを受けられるため、総合的な資産管理が可能となるでしょう。
退職金の運用方法に悩んだら三井住友信託銀行がおすすめ

ここまで退職金の運用方法や運用時のポイントについてご紹介しましたが、自分に合った運用プランにお悩みの方もいるでしょう。
そんな方におすすめなのが、退職予定者・退職者限定で特別金利を提供している三井住友信託銀行の「退職金特別プラン」「ご退職予定者向け特別プラン」です。
資産を上手に育てたい方向けの「投資運用コース」と、資産運用をじっくり考えたい方向けの「定期預金コース」の2つのコースがあり、ご自身に合った運用方法をお選びいただけます。
まずはライフプランシミュレーションを実施いただき、担当者がお客さま一人ひとりのお考えや資産状況・ご家族構成をうかがいながら、ご退職後のライフプランや収支見通しを見据えたご提案をいたします。
ご退職の1年前から3年後までご利用でき、ご家族もご利用いただけるサービスもありますので、一度ご相談ください。
退職金の運用は自分に合った運用方法を選ぼう

退職金運用は、老後資金確保のための重要な資産形成の手段です。
適切に運用することで、老後の生活費の不足を補い、将来の医療・介護費用に備えることができます。
退職金運用で大切なのは、リスク許容度に合った運用方法を選び、無理のない範囲で運用を続けることです。
ライフプランや資金状況は人それぞれ異なるため、ご自身に合った運用計画を立てるのがポイントになります。
専門家や信頼できる金融機関に相談したり、iDeCoやNISAなどの税制優遇制度を活用したりしながら計画的に資産を管理し、安心して老後を迎えられるよう早めに準備を進めましょう。
※この記事は2025年2月末時点の情報に基づいています。
監修者紹介
【監修者】 金子 賢司
【資格】 CFP®資格

【プロフィール】
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャル・プランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。
その他本コラムに登場する金融商品の注意事項は、「退職金特別プラン・ご退職予定者向け特別プラン」のページ下部に掲載している注意事項をご覧ください。