おじいちゃんのリアカー 半世紀前、リアカーは重要な交通・運搬の手段でした。畑から野菜を運んだり、引っ越しに活躍したり。私が子どもの頃はまだまだ自動車が普及しておらずリアカーは色々なところで出番がありました。あるお盆のこと。帰省中の小さな孫たちは退屈していました。「ほな、海行こか」と、おじいさんが言い出しました。小学生はスクール水着、もっと小さい子はパンツ一丁でリアカーに積まれました。目的地はおじいさんの家から二キロ以上ある唐船という名の海水浴場。ここは遠浅で子どもに優しい海でした。麦わら帽子とステテコ姿のおじいさんはでこぼこ道でリアカーを引っ張ります。海について子どもたちは大騒ぎで遊びました。今その道は舗装されて快適なドライブができますが、夏に車で通る度にお尻が痛かった記憶と、おじいさんのリアカーを引っ張る後姿の映像が呼び起されます。
準大賞とのダブル受賞
河野 いづみ (大阪府 58歳)
おじいちゃんのリアカーは、子供たちを乗せて真夏のでこぼこ道をゆく、その先には眩しい海がある。文章を読むだけで生き生きと光景が目に浮かぶ。映画のワンシーンのような鮮やかさと懐かしさ。
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河野いづみ様の御祖父様は明治生まれで、厳しく怖い人だったそうです。普段は「海行こうか」などと言い出さない御祖父様が誘ってくれた、特別な夏の一日。当時の道は凸凹。辺りには田んぼと塩田が広がり、遮るものの無いカンカン照りの中、約2km、往復4kmもリアカーを引っ張って行くのは、さぞ大変だったことでしょう。そんな御祖父様の後ろ姿が、楽しく遊んだ海水浴場の風景とともに、ふるさとの記憶として鮮明に残っているそうです。
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【選評】穂村 弘
おじいちゃんのリアカーは、子供たちを乗せて真夏のでこぼこ道をゆく、その先には眩しい海がある。文章を読むだけで生き生きと光景が目に浮かぶ。映画のワンシーンのような鮮やかさと懐かしさ。
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