いま、知っておきたいこと
監修:(公財)日本生態系協会
事務局長:関 健志
1992年ブラジルのリオデジャネイロにおいて、地球環境保護の目的から、持続可能な開発のあり方を考え、それを実現していくための対策を決める国際会議が開かれました。
この地球サミット(国連環境開発会議)と呼ばれる会議にあわせ、「生物多様性条約」が採択され、2011年現在、日本を含む193ヵ国が加盟しています。「生物多様性」とは地球上にさまざまな生きものが存在するということです。それによって、人間の存在に欠かせない生物資源を供給する自然の生態系が健全に保たれています。ところが今、私たちの世界では、この「生物多様性」が急速に失われつつあります。
なぜ、自然を守らなければならないのか?
私たちの生活は、自然の恩恵なくして成立しません。日々の食糧はもちろん、水、燃料、繊維、木材、薬にいたるまであらゆる原材料やエネルギーを人間は自然の資源に依存しています。自然連鎖のしくみは「生態系」と呼ばれ、そこでは多種多様な生きものがそれぞれ大切な役割を担い、相互に影響しあってバランスを保つことで、地球の環境を支えています。
地球上に存在する生きものは、たった一つの生命体から進化し、様々な環境変化に適応しながら多様性を拡大して複雑な生態系を築いたと考えられています。生きものの種類が減ると生態系のバランスが崩れ、自然の資源が失われることにつながります。
人間は有史以来、自然を利用して文明社会を作り上げてきました。それに伴う科学や技術の進歩は私たちの生活を豊かで便利なものにしましたが、同時に自然環境に対して大きな負荷を与えてきたことは否めません。受容できる限界を超えた開発や資源の収奪により、自然生態系が再生不可能なまでに破壊され、それが衰退・滅亡の原因となった古代文明も、歴史上存在するとされています。自然の資源は有限です。私たちがこのことについて何も考えず、このままダメージを与え続ければ、それは生態系の危機によって人間の生存が脅かされるという形で自分に返ってきます。
熱帯雨林が伐採されると何がおこる?
例えば、近年問題になっている熱帯雨林の減少は、私たちにどんな影響を及ぼすのでしょうか。テレビや新聞などでも報道されている地球温暖化が最も知られるところですが、それとともに専門家の間で懸念されているのが生物資源の問題です。熱帯雨林には、未だ発見されていない微生物なども含めて、地球上の野生動植物の半数近くが生息・生育しているといわれています。その野生動植物から将来、がんやエイズなどの特効薬が作られる可能性があるのです。これまでも、こうした野生動植物から多数の新薬が開発されてきました。種の宝庫である熱帯雨林の減少は、多くの生物の絶滅とともに、私たちに多大な経済的損失をもたらすことになります。
自然に対する正しい知識とは
私たちの生活は、自然との調和のもとに成り立っています。便利さだけを求めると、あとでとんでもないしっぺ返しを食らうことにもなりかねません。
また、失った自然を元の状態に近づけるためには、莫大な時間と労力がかかります。