人生100年時代の住まいと住まい方 長く健康に住み続けるためのリフォームのすすめ

“Aging in Place”― 「人生100年時代」は、住み慣れたまち、一番大切な自分の住まいで、豊かに自分らしく暮らしていくことを第一の選択肢としてあげる時代となると言われています。そして、“Well-being”― 住まいは、幸福な人生のためにとても大切な場所であることは間違いありません。人生100年応援部は、すべての皆さまのお住まいが、幸福に年齢を重ねられる「幸齢住宅」となることを応援するため、住まいと住まい方をキーワードにトピックをご紹介いたします。

三井住友信託銀行
人生100年応援部 部長
谷口 佳充
昭和から平成に移った頃「これから人生80年の時代になる」と言われ、さまざまな変化がございました。あれから30年、多くの方に「百寿」が訪れる令和の時代において、信託をはじめとしたソリューションで、皆さまの豊かな人生を応援いたします。
谷口 佳充

人生100年時代の住まいを考える

2020年度は新型コロナウイルスにより、以下の円グラフにもありますように自宅に居る時間が長くなり、自宅での住まい方が重要になった年度でもありました。

図1 コロナ下におけるライフステージごとの在宅時間イメージ

人生50年時代、大家族の時代は、「子育て」が常に住まいの中心であり続けましたが、人生100年時代となり、世帯形態も核家族、夫婦のみや単身が中心になると、住まいのフォーカスポイントも、より住んでいるご本人を中心に考えることが大切になってきています。

日本の住宅はあまりにも短命

さて、日本は長らくの間、世界で最も長寿を実現している社会であり、現在もそうあり続けていますが、日本の住まいの寿命(滅失住宅の平均経年数)があまりにも短命なことはご存じでしょうか?

日本人の平均寿命が女性87歳、男性81歳に対して日本の住まいの平均寿命はなんと32歳!欧米の家の平均寿命と比較しても、イギリスが80歳、アメリカが66歳で、50%以上も短命なのです。

住宅と人の寿命は計算基準が違いますが敢えて「歳」と記載しています。

図2 住まいの寿命(滅失住宅の平均築後年数)の国別比較のグラフ

2021年のNHK大河ドラマの主人公であり、新一万円札のお顔でもある渋沢栄一翁の言葉に「40、50は洟垂れ小僧、60、70は働き盛り、90になって迎えが来たら、100まで待てと追い返せ。」というものがあります。

日本は今、人の寿命については、この渋沢栄一翁の言葉にほぼ近づきつつあります。しかし住まいについては、1400年以上の歴史を誇る木造建築物法隆寺や、築年数100年を超えてなお現役の木造住宅京町屋などの素晴らしい手本がありながら、渋沢栄一翁の言葉でいう洟たれ小僧にもなれていない間に解体されてしまうのです。そして、住まいの寿命が延びてきているのかというと、実は長らく短命化傾向が続き、2008年の調査で27年となったところでやっと底を打ち、直近は32年になったという状態なのです。

人生100年時代、人間は生涯発達するという研究が進められている中、この成長にとともに年齢を重ねていくべき住まいが短命とは皮肉なものです。

そして、このように他の国と比較して寿命がまだまだ短い日本の住まいですが、国土交通省の調査では、現在ある住宅のうち、そのまま将来世代に継承できる優良な住宅とされている建物は、人が居住している全住戸約5,330万戸のうち約230万戸(4%)だそうです。

図3 日本の「人が居住している住宅」ストック5,330万戸の内訳のグラフ

耐震能力の問題などで建て替えが必要なものも相当数あるのですが、多くは、リフォームで性能向上が求められる状態にあるということです。

また、日本の住宅は、WHOの冬季の最低室温の勧告基準(18℃以上)についても、9割ほどが適合していないといわれています。

日本の家は、寿命が短いにもかかわらず、断熱や気密が優れている健康に良い住宅が少ないのです。

暖かい住まいは健康寿命を延ばす

今年度、このスペシャルトピックでご説明してきました通り、暖かい住まいは、膀胱過活動、転倒骨折、フレイル予防、血圧、脱衣室・浴室でのヒートショック、睡眠、活動量、そして健康に良い影響をあたえます。断熱・気密性能を高くした、全体が暖かい住まいにリフォームすることで、こたつにこもることもなくなり、トイレを我慢することもなくなり、住宅内での身体活動が促進されます。もちろんエネルギー効率も高まることで省エネであり環境にも良い住まいになります。

ただ、人は高齢になれば高齢になるほど、現状からの変化を求めなくなり、「このままで良い」と考える傾向が強くなります。

冬の室温が2℃上がれば、要介護になる年齢が3年後ろ倒しになるという調査データなどもあります。健康寿命が増えることはご自身の人生を幸せにするとともに、介護負担をかける家族の負担が減る、迷惑をかける期間が減るということにもなります。

これからの人生の中で一番若い今のうちに、お子さまの結婚、ご自身の退職・転職その他ライフイベントで考えるタイミングなどで、住まいを自分の健康のために、家族に迷惑をかけないという視点でリフォームを検討されることをお勧めします。

少し話を変えたいと思います。この冬、皆さまおよび皆さまのご家族の住まい方はいかがでしょうか?

「局所暖房であるこたつに座ってテレビを見ている」時間、長い方いらっしゃいませんでしたでしょうか?

ある調査では、日本人は、平日7時間ほど座っているそうです。世界の人々の平均よりも2時間も長く、調査された20カ国の中で、サウジアラビアとともに最長だそうです。一番短かった国はポルトガルで、一日3時間も座っていないそうです。

健康には、テレビを長時間見ているのも、座りすぎているのも良くはありません。新型コロナの流行下で増えたステイホームの期間でも、動くこと、近隣へ外出することも大切です。

世界が羨む幸齢期を

我々人類は、長寿を願い続けてきましたが、長い間平均寿命は50年前後でした。それが、この半世紀で急に願ってきた長寿が実現されるようになりました。

人生50年時代では子どもはすぐに大人として働き、老人ともなれば人生はすぐに終了していました。人生のステージは「子ども」「大人」「老人」の3つしかなく、ほとんどは「大人」の期間だけだったのです。

これが人生80年となり、青春期を長くもつことが許されるようになり、そして人生100年時代。他人から介護をお願いしなければならない期間の前に元気な高齢期、いわば幸齢期が出現できる世の中になってきています。

そして、「病は(健康も)住まいから」です。

幸齢期は特にそうです。

これから皆さまと、皆さまの家族やパートナーが、より良い住まいで、活力ある住まい方をされ、幸福に年齢を重ねていただけることを願っております。

当社では、皆さまの人生の活力資産(健康資産)の成長に役立つべく、リフォーム、ローンを含めたライフプランコンサルティングをご提供しております。ぜひお気軽にご相談ください。

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