監修:(公財)日本生態系協会

事務局長:関 健志

生物多様性の問題を解決していくには、私たち一人ひとりが自然について正しい知識を持ち、意識を変え、できることから行動を起こしていくことが必要になります。まずは「生物多様性基本法」に明記されているように、消費者として厳しい目を持ち、生物多様性に配慮した商品を買うようにすることから始めてみてはいかがでしょうか。そしてそこから少しずつ行動を広げていくことで、社会はきっと変わっていきます。

あなたが、今日からできること

正しい自然観を身につけよう

日本人は緑や花がたくさんあり、生きものが多くいることが“自然” だと考えがちです。でも、その地に元から生息する在来種の動植物が暮らす生態系が維持されていなければ、それは自然とはいえません。例えば、外来種であるチューリップが植えられた庭や公園は目を楽しませてくれますが、自然とはいえないのです。また環境美化などのために川に魚や螢を放すイベントがよく行われていますが、気がつかずに非常によく似た外来種を放し、在来種の生息を圧迫したり、さらに在来種との交雑によって遺伝子汚染が起こるケースもあります。自然保護のための活動が自然破壊につながるという事態を招かないために、私たちには正しい自然観を身につけることが求められています。

いま使っている商品がどこから来たかを考えてみる

私たちの身の回りの商品は自然の資源を原材料にしており、その中から生物多様性に配慮したものを意識的に選択することが消費者に求められています。近年、商品が生物多様性に配慮していることを消費者に伝える認証制度が広がりつつあります。中でも有名なものが、世界の森の審査を行う「森林管理評議会(FSC)」による認証制度です。この制度は、森林環境の破壊を防ぐことを目的としており、「健全な森か」「正しく管理されているか」「森で働く人々の生活が守られているか」などをチェックし、適切な森林管理がされている森には認証を与え、そこで生産された木材や木材製品、紙製品には“FSC” のロゴマークが付けられています。

また、世界自然保護基金(WWF)の支援を受ける「海洋管理協議会(MSC)」も漁業と水産物についての認証制度を設けており、資源・環境・規制を守った持続可能な漁業を認証し“MSC” のロゴマークを付けています。

こうした商品を積極的に購入し、消費者の意識を反映させていくことが大きな一歩につながります。

どこかの誰かではなくまずあなたが行動しよう

生物多様性を守るために一人ひとりができる行動は、まだまだいろいろあります。例えば、高原や高山に自生する希少な山野草は採らず、自然の中で楽しむようにすることです。また、外来種による生態系への影響が大きな問題となっていますが、外国産などのペットを飼う際にはその生態をきちんと理解し、飼えなくなったから野外に放すなどは論外です。

地球の自然とその生きものが直面する危機は、人間すべてにとっての問題であり、それを解決していくのは“誰か” ではなく“私” です。

たとえば地域の活動に参加する

最初は小さな力でも、みんなで協力しあうことで大きな力が生まれる

生物多様性を守る運動は地域レベルでも広がりを見せています。地元の自然を守るさまざまな活動がNGOなどを中心に全国各地で行われています。そうしたプロジェクトに積極的に参加していくことも有効な手段です。さらに、野生の動植物の保護や生物多様性の保全が必要な土地を、会費や寄付金などによっ て買い上げたり、寄贈を受けたりすることで取得し、保全・管理・公開して、後世に残す市民運動「ナショナルトラスト運動」に参加する方法もあります。

個人の力は小さくても、それが集まることで大きな力が生まれ、地球への大きな働きかけになるのです。

(公社)日本ナショナル・トラスト協会 http://www.ntrust.or.jp/新規ウィンドウで開く

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