第9回 心のふるさと賞

(敬称略)

【選評】穂村 弘

 「家の前方の『塩ヶ森』の山頂の灯台の灯がくる~と空を一周するのが見える」という臨場感が素晴らしい。雨戸も障子も開け放った部屋に吊った蚊帳は、家族のお喋りを引き出す魔法の空間だ。

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障子も雨戸も開け放って、蚊帳を潜って並んで布団に入った夏の夜。当時は街灯りもなく、月や星の灯り以外は何もない真っ暗な中、航空灯台の光だけが空を巡る静かで幻想的な光景だったと語る盛本様。麦秋の頃には群れ飛ぶ蛍を狩って麦の穂を編んで作った籠に入れたり、とあふれ出す記憶。今もなお塩ヶ森のふもとに在る生家。その納屋から見つかった古い蚊帳が思い出させてくれた幼い日の事。そのひとつひとつが、伝え残していきたい大切な遺産となりました。孫にもいつか体験させてあげたい、と優しい笑顔でお話いただきました。

イラスト