池上彰さんの著書『池上彰のはじめてのお金の教科書』より、皆さまに読んでいただきたいトピックを厳選し、連載でお届けしています。

“知っておきたいけど、いまさら聞けないお金のはなし”をテーマに、大人だけど意外と知らないお金の基礎から、ついつい人に話したくなる豆知識まで盛りだくさん。

連載第2回は、銀行の役割と世界で使われるお金のはなしについてご紹介します。

2020年4月、大手銀行や地方銀行が定期預金の金利を引き下げました。それまでは預入期間の長短、預入金額に関係なく年0.01%でしたが、新しい金利は年0.002%。

例えば現金100万円を10年間預けた時に得られる利息は、わずか200円ということになります。しかも税引き前です。取扱時間外や休日にATMを利用することもありますよね。そうなると現金を引き出しただけで、あっという間に利息分は吹き飛んでしまいます。

この状況は日本に限ったことではありません。すでに多くの先進国が同じような状況に陥っています。新型コロナウイルス感染拡大による景気低迷のリスクを最小限にするため、アメリカやユーロ圏の中央銀行が量的金融緩和を行った結果、欧米先進諸国でも金利がほとんど付かない、もしくはマイナスという状況になっています。

このような低金利時代が続く中、銀行はどのような役割を担っているのでしょうか。

銀行の仕組みを改めて見ていきましょう。

銀行の役割と世界のお金

お金を預ける所、だけではない

日本銀行はお札を発行する所ですね。では、私たちが住んでいる町の銀行、もしくはその他の銀行にはどのような役割があるのでしょうか。

「お金を預かっている所」というのはもちろんのこと。

そしてもっと大事な役割は、お金を必要としている人に「お金を貸す」ことです。新たに家を建てたい人、車を購入したい人は一度にまとまった資金が必要なので、貯金だけでは足りないケースがほとんどですよね。銀行はそういった人のために融資をしています。

そして貸したお金が返済される時に利子をもらう、これが銀行の利益になります。利子の一部は銀行にお金を預けた人に利息として払われます。こうして銀行は「お金を貸したい、増やしたい」人と、「お金を借りたい」人の橋渡し役になっているのです。

お金を預ける所、だけではない

銀行のお金は「みんなのお金」

ただし、銀行は「返済能力のある人」にしか貸しません。

銀行が融資する時には必ず「返済できなかったらどうするんですか」と聞きます。その際、「お金の代わりにこれを差し出します」という約束をします。これが「担保」です。

例えば、家を建てるために融資を受けたけれど、返済できなくなってしまったら、銀行はその家を取り上げて他の人に売却し、融資していた分のお金を取り戻そうとします。ひどいことをしているように思えるかもしれませんが、銀行が貸すお金は元々みんなが預けているお金なんですよね。

さらに深掘り
―なるほどティップス―

世界で使われる共通通貨とは?

貿易など、国際的な取引で最もよく使われるお金を「基軸通貨」といいます。現在の基軸通貨は米ドルですが、SDRというものがあるのをご存じですか。

SDRはSpecial Drawing Rightsの略で「特別引出権」と訳します。

こう考えて下さい。ある国が海外からモノや資源をたくさん輸入したり、お金を借りたりしました。当然、代金や借入金を返さないといけないのに、相手国に払う外貨が足りない! そこでIMF(国際通貨基金※)を通して、外貨を豊富に持っている他の国から融通してもらう。そのための「引き出す権利」がSDRなのです。IMF加盟国が共通して使うものなので、全世界共通の通貨単位になっています。

※国際通貨基金(International Monetary Fund):経済状態が悪くなった国や新興国へ支援する国際機関。

借金が無い国の仕組みとは?

日本の借金は毎年増えており、いまではおよそ1,000兆円にまで膨らんでいます。

こんなに借金しているのは世界で日本だけ。日本はこのままでは借金を返せなくなり、潰れてしまう!と心配する人もいます。しかし、現状は借金だらけでも国民みんなが持っているお金を集めたら1,800兆円もあります。いざとなったらお金を取り上げれば借金を返せるだろう、そう考えられているのです。でも、そんなことは嫌ですよね。

日本以外の国は税金を上手にやりくりして借金をしないようにしています。例えば、ドイツの消費税は19%。多くの税金を集めた上で「国は税金以上の仕事はしない」というやり方をとったことで、ドイツは見事、無借金になりました。

次回は、
【第3回】銀行や保険会社の仕組み
についてお届けします。
どうぞお楽しみに。

続きはこちらでお読みいただけます。
『池上彰のはじめてのお金の教科書』
※幻冬舎のWEBページに移動します。

『池上彰のはじめてのお金の教科書』
執筆者紹介 池上 彰

執筆者紹介池上 彰いけがみ あきら

1950年8月9日長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。

元NHK記者主幹。現在はフリージャーナリスト。名城大学教授、東京工業大学特命教授、東京大学客員教授、立教大学客員教授、信州大学特任教授、愛知学院大学特任教授、関西学院大学特任教授、順天堂大学特任教授。

1973年NHK入局。報道局記者を歴任し1994年から「NHK週刊こどもニュース」の初代お父さん役を11年間続けた後、2005年にNHKを退職。在職中から執筆活動を始め、現在は出版、講演会、放送など各メディアにおいてフリーランスの立場で活動する。鋭い取材力に基づいたわかりやすい解説に定評がある。

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