
池上彰さんの著書『池上彰のはじめてのお金の教科書』より、ニュースを読むときに役立つ幅広い情報をセレクトして、メールマガジン会員の皆様へ特別にお届けしています。
連載第8回は、お金を稼ぐために大切なことについて、池上彰さんの想いと共にご紹介します。
2019年4月に「働き方改革関連法」の一部が施行されてから、「働き方改革」の必要性が叫ばれています。そして、働き方改革の一環としてテレワークやフレックスタイム制は、新型コロナウイルス感染症の影響により急速に進展しました。その結果、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉も最近再びよく耳にするようになりましたね。これまでの働き方が大きく見直されている今、仕事と生活の調和を実現する働き方に、より注目が集まっていくことでしょう。
では、そもそも働くとはどういうことなのでしょうか。お金を稼ぐことにおいて、一番大切なことは何なのでしょうか。連載の最後に、私が考える仕事論についてお話しします。
お金を稼ぐ! 一番大切なことは何?
人が喜ぶことをすると自分も儲かる
お金を稼ぐには、いろいろな方法があります。会社に就職することも、起業することも、株式投資をすることも、お金を稼ぐ手段です。いずれにせよ、覚えておいてほしいのは、「人が喜ぶことをすると、自分も儲かる」ということです。
たとえばパン屋さん。美味しいパンをつくれば、それだけたくさんのお客さんが買ってくれて、お店は繁盛するでしょう。朝からパンを買いに来る人のために、早起きしてパンをつくるのは大変かもしれません。でも、そうやって「人が喜ぶもの」をつくるために一生懸命になるほど、世の中が良くなっていくし、自分も儲かります。

起業するときも、やっぱり「人が喜ぶこと」を考えることが大切です。すると会社は大きくなり、また儲かる。その会社で働く従業員も増えて、みんなが喜ぶというわけです。
悪いことをして儲かるのは一瞬だけ
逆にいうと、誰かを騙して儲けようとしても、そうはいきません。かつてアメリカの大統領だったエイブラハム・リンカーンが、こんなことを言いました。
「少しの人なら、ずっと騙し続けられる。たくさんの人も、少しの間なら騙すことができる。でもたくさんの人を、ずっと騙し続けることはできない」
私も、その通りだと思います。詐欺や横領罪で逮捕される人のニュースがあとを絶ちません。しかし、悪いことをして儲かるのはほんの一瞬だけ。長く稼ぎ続けているのは、みんなが喜ぶことを続けている人や企業だということを、忘れたくないものです。
世の中は分業といって、自分は得意なものや好きなものをつくる、それ以外のものは他の人につくってもらうというしくみで動いています。お金を通じて、お互いにつくったものを交換するわけです。ですから、誰も欲しがらないものをつくっても交換してもらえず、お金を稼ぐこともできません。
最後に
私の仕事の話をしましょう。昔を思い出してみると、小学生の頃から似たようなことをしていた気がします。皆さんも何か新しい話を聞いたら、家族や友人に「ねえ、これ知ってる?」と教えたくなることはありませんか。私は今も、その頃の気持ちのままなのです。「バイデン大統領ってこんな人だよ」と私が話をすると、みんなが「へえ~!」と驚く。それが楽しくてたまりません。
かつて私が就職したのはテレビ局で、記者としてニュースを伝える仕事をしていました。でも、43歳のときに「週刊こどもニュース」という番組に出演したことがきっかけで、大きく人生が変わりました。難しいニュースを子どもにもわかるようにやさしく説明すると、みんながいっそう喜んでくれるということを知ったからです。それからは、テレビに出るばかりでなく、文章を書く仕事も増えていきました。
そして私は今、70歳になりました。でも、やっていることは、小学生の頃からずっと同じです。こうして私が文章を書いているのも、読んでくれる皆さんが「へえ~!」と喜んでくれるのを、楽しみにしているからなのです。誰かが喜んでくれるように頑張ることは、本当に楽しい。働くとは、そういうことだと、私は思っています。
多くの人が様々な仕事に就いて、お金を稼いでいます。そうやって皆さんが稼いだお金を使うと、買った商品をつくっている企業や、そこで働いている従業員が、また喜ぶ。その人たちがまたお金を使い、誰かが喜ぶ。そんなふうに、あなたも、周りのたくさんの人たちも一緒に幸せになれるような仕事を、どうか続けていってください。
続きはこちらでお読みいただけます。
『池上彰のはじめてのお金の教科書』
※幻冬舎のWEBページに移動します。


執筆者紹介池上 彰いけがみ あきら
1950年8月9日長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
元NHK記者主幹。現在はフリージャーナリスト。名城大学教授、東京工業大学特命教授、東京大学客員教授、立教大学客員教授、信州大学特任教授、愛知学院大学特任教授、関西学院大学特任教授、順天堂大学特任教授。
1973年NHK入局。報道局記者を歴任し1994年から「NHK週刊こどもニュース」の初代お父さん役を11年間続けた後、2005年にNHKを退職。在職中から執筆活動を始め、現在は出版、講演会、放送など各メディアにおいてフリーランスの立場で活動する。鋭い取材力に基づいたわかりやすい解説に定評がある。
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