最近「人生100年時代」という言葉をよく耳にされるのではないでしょうか。なぜ「人生100年時代」という言葉がここまで浸透するようになったのでしょうか。実際に「人生100年時代」が訪れるのであれば、資産形成の面で何らかの手立てが必要となってくるのでしょうか。

きっかけは、ベストセラー書籍「ライフ・シフト」!

統計データ(厚生労働省「令和2年簡易生命表」)をみてみると、日本の平均寿命は男性81.64歳、女性87.74歳と、実態に照らした現状は「人生85年時代」程度と言えそうです。

それにもかかわらず、「人生100年時代」と言われるのは、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著/池村 千秋訳 東洋経済新報社)が2016年に刊行され、世界中でベストセラーとなったことが大きいと考えられます。

特に同書の中で「2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される」との記述があったことで、2017年には内閣府に「人生100年時代構想推進室」が設置され、同年「人生100年時代構想会議」(議長:安倍晋三首相)がスタートしました。その有識者議員として同書の著者の一人であるリンダ・グラットン教授が招かれたことなどもあって、一気に日本人の中に「100歳まで生きる人生」という認識が広がったと言われています。

「人生100年時代」をデザインしよう!

100年という長い人生を有意義に過ごすには、現在の生活の充実とともに10年後、20年後、そしてもう少し長めの視点を持って、仕事・家庭・自分の将来などを含めた人生設計=「ライフプラン」を考えていくことが重要となります。また「ライフプラン」を考える際に忘れてはならないことの1つが、「マネープラン」=「人生の各種イベントに取り組むための費用をイメージして準備をしていくこと」です。

近年では、少子・超高齢社会の急速な進行、グローバル化や情報化の進展、就業構造や世帯構成(ライフスタイル)の多様化など、社会環境が大きく変化しています。変化が大きい中でのライフプランを検討するにあたって、はっきりと決まっていないこと・分からないことも多いと思われます。ただ、できるだけ早いうちから具体的に検討し準備をすることで、今後の可能性をより一層広くとらえることができ、ひいては長い人生の充実につながるのではないでしょうか。

「健康寿命」「資産寿命」をおさえておこう!

また、イベント起点での「マネープラン」の検討に加えて、「健康寿命」という考えもおさえておくと安心です。「健康寿命」とは、心身ともに自立し、健康的に生活できる期間を指します。現在、医学的な見地から日本人の健康寿命は男性約72歳、女性約75歳と言われています。健康寿命期を過ぎ「要支援・要介護期間」に入って自立度が低下してくると、老後生活を支えていく資産はさらに重要になってきます。この「要支援・要介護期間」は、男性は約9年、女性は約13年と試算されています。

図表 平均寿命と健康寿命の差

老後生活では、現役時代と違って「勤労による収入」を大きくは見込むことが難しいため、例えば、①早いうちから、老後資金を自助部分も含めて準備する、②シニア時代での就労継続を検討するなど形成した資産の取り崩しを先に延ばす方策を考慮する、③形成した資産にも必要に応じて「資産運用」面で働いてもらう…など、一人ひとりが「計画」と「準備」、そして「行動」することが大切なことと思われます。

~ミライ研からのお知らせ~

11月27日~28日開催、STOCK VOICE 「資産形成フェスタ2021」in 東証アローズOnlineに登壇予定です。
(「資産形成フェスタ2021」へのエントリーはこちらから。※STOCK VOICE 資産形成フェスタ2021 運営事務局サイトへ移動します。)放映後は、ミライ研WEBページでもご視聴いただけますので、ぜひご覧くださいませ。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者矢野 礼菜やの あやな

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2014年に三井住友信託銀行入社。堺支店、八王子支店にて、個人顧客の資産運用・資産承継に関わるコンサルティングおよび個人顧客向けの賃貸用不動産建築、購入に係る資金の融資業務に従事。2021年より現職。

ページトップへ戻る