はやいもので、2021年ももうすぐ終わりですね。

今年も昨年同様、コロナに振り回された1年でした。思うように行動ができないこの環境の中、皆さんの資産形成についてはどのような行動変化があったのでしょうか。この1年を振り返ることで、皆さまが来年以降の資産形成を考えていただく際の参考にしていただければ幸いです。

コロナ禍における皆さんの家計収支はどんな状況?

皆さん、この1年間計画的に資産形成を行えましたでしょうか。

コロナショックを振り返ると、思うように旅行や外食、アクティビティができなかったことで、消費控えが進んでいたようです。図表1は家計の貯蓄率の推移を示した図です。特に大型連休がある5月における貯蓄率は、例年マイナスになることも多いのですが、コロナ禍の期間では、2020年が24.9%、2021年が15.7%と、過去10年の5月に比べて大きく増加しています。特に2020年は、10万円の定額給付金の支給の影響も大きな要因と思われますが、消費控えにより、思いのほか預金口座にお金が貯まった方も多いのではないでしょうか。

図表1 家計貯蓄率の推移(2018年1月~2021年8月)

皆さんの資産形成手段、3位は財形貯蓄・社内預金、2位は保険、では1位は不動の・・・?

そんなコロナショックの中、皆さんの資産形成事情はどうだったでしょうか。図表2は、2020年に当研究所が実施した「1万人アンケート」結果をもとに、各資産形成手段について過去1年間に行った人の比率をグラフ化したものです。

図表2 資産形成に向けた取り組みとして定期的に行っていること

取り組み手段のトップは、ご推察の通り国内預貯金ですが、2番手(生命保険)や3番手(財形貯蓄、社内預金)と比較しても大きな開きがあります。日本人の資産形成が「預貯金1本足打法」であることがよくわかります。

コロナを踏まえた意識の変化と、年代別の特徴

一方で、コロナ禍によりこれらの状況にも変化の兆しがみられます。

図表3は、コロナ禍による「資産形成について考える機会」の変化を尋ねたものです。どの年代も「資産形成を考える時間が増えた」旨の回答が増えています。特に「増えた」「少し増えた」の回答は、20代で48.1%、30代で42.5%と、他の年代よりも比率が大きいことが特徴的です。

図表3 年齢別にみたコロナ禍による「資産形成について考える機会」の変化

また、図表4は資産形成に向けた行動の変化をまとめたものですが、①表のとおり、特に若年層(20~30代)において資産形成の実践ならびにNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった優遇税制の活用が確認できます。実際、金融庁公表のNISA口座開設数をみてみると、2021年6月末で1,600万口座を突破していますが、②グラフの通り、特に20歳代の増加率が高いことがわかります。

図表4 コロナをきっかけとした資産形成意識の向上

コロナを踏まえ、全体的に資産形成の機運が高まってきていると言えますが、特に若い世代の資産形成に向けた行動が目立つ結果となりました。家族が集まる機会の多い年末年始、世代によって資産形成の意識や行動に差が出ていることを家族の話題の一つにしてみるのも良いかもしれません。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者清永 遼太郎きよなが りょうたろう

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2012年に三井住友信託銀行入社。千葉支店勤務後、2015年より確定拠出年金業務部で企業のDC制度導入サポートや投資教育の企画業務等を担当。2019年より大阪本店年金営業第二部で、企業年金の資産運用・制度運営サポートに従事。2021年より現職。

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