春の訪れとなりましたが、春は出会いと別れの季節ですね。

人生の節目として、卒業・就職・異動・退職などにより、これから心機一転、新たな環境に身を置く方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。もしくは、ご自身のご家族(子供・孫)がこういった節目を迎える方もいらっしゃるかもしれません。

家計に関するところでは、"住まい"に関して見直す時期ともいえます。また、3月は確定申告の期限も到来するため、"税金"について考える時期でもあります。

そこで、今回は"住まい""税"に関するトピックとして、今年より見直しとなった「住宅ローン控除改正のポイント」についてご説明します。

1.住宅ローン控除改正の内容とは?

まずは、住宅ローン控除とはどういったものか、国税庁のHPよりご紹介します。

いわゆる住宅ローン控除とは、住宅借入金等特別控除のことで、個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得または増改築等(以下「取得等」といいます。)をし、令和3年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たすときにおいて、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除するものです。

*国税庁HP(2022年1月末時点)より

つまり、「住宅ローン利用者が、残高に応じて所得控除を受けられる仕組み」といえます。

この控除が今年改正となったわけですが、今後の住宅取得者に対し、2つの大きな変更点があります。

まずは①住宅ローン控除の適用となる借入限度額と控除期間に関する変更です。

2022年以降は入居年月に応じ、図表1の借入限度額と控除期間が控除対象となります。一般的な住宅(下図における「その他の住宅」)に関しては、段階的な引き下げを予定していますが、一方で省エネ性能が高い住宅は、限度額の上乗せがあります(ちなみに、新築住宅における改正前の控除期間は長期優良住宅・低炭素住宅を除き13年となっていますが、これは、2019年10月1日から2021年12月31日までの間に居住の用に供した場合、従来の控除期間10年から3年延長されたもので、消費増税の影響に伴う対応措置によるものです)。

図表1 住宅ローン控除の適用となる借入限度額および控除期間の変更内容

新築住宅・買取再販と既存在宅の比較

(出所)法令および令和4年税制改正大綱をもとに三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

続いては、住宅ローン控除の②控除率ならびに所得要件に関する変更です。

こちらは、図表2のように、控除率が1%から0.7%に、適用対象者の適用を受ける年分の所得要件も、3,000万円から2,000万円に引き下げられました。これは、住宅ローン金利が住宅ローン減税の控除率を下回っているという会計検査院の指摘が要因とされています。

図表2 住宅ローン控除の控除率および所得要件の変更内容

(出所)法令および令和4年税制改正大綱をもとに三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

2.今回の改正による影響とは?

こちらの改正は、今後の住宅ローン契約者に対して適用されるものですが、そもそも「住宅ローンを組んで家を買う」方は、世間でどれくらいの割合いるのでしょうか。

下記の図表3では、年代別住宅ローン保有者比率を示したものですが、30代から住宅ローン保有者が増え始め、40代前半では約半数が住宅ローン保有者であることがわかります。今後の住宅取得事情に大きな変化がない限りは、今後も「住宅ローンを組んで家を買う」方は相当の割合いることになります。

図表3 年代別住宅ローン保有者比率

(出所)総務省「2019年全国家計構造調査」をもとに三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

また、住宅ローンを契約する方の当初借入額はどれくらいでしょうか。

三井住友トラスト・資産のミライ研究所による調査によると、居住エリア別の住宅ローン当初借入額の分布は図表4のとおりでした。3,000万円を超える住宅ローン契約者は、首都圏では43.3%にのぼり、他の地域でも20~30%の結果となりました。今後も同様な住宅ローンの借入額傾向が続くと仮定すると、控除の適用となる借入限度額ならびに控除率等の変更に関して、影響を受ける方がかなりの割合でいることが予想されます。

図表4 居住エリア別住宅ローン当初借入額分布

(出所)「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」 (2021年)より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

いかがでしたでしょうか。

各種メディアなどで控除率の変更が特に話題になっておりましたが、それ以外にも様々な条件変更がなされています。省エネ性能の高い住宅に関しては一部条件が良くなっているところもあります。
これから住宅ローンを組んで住宅購入を検討される方は、是非ご参考にしてみてください。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者清永 遼太郎きよなが りょうたろう

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2012年に三井住友信託銀行入社。千葉支店勤務後、2015年より確定拠出年金業務部で企業のDC制度導入サポートや投資教育の企画業務等を担当。2019年より大阪本店年金営業第二部で、企業年金の資産運用・制度運営サポートに従事。2021年より現職。

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