「春」はスタートの季節、新しい門出のお祝いはお金で?!

みなさま、「春」といえば、何を連想されますか?「あけぼの」、「桜」、「新学期」、「新入社員」、「花粉症」まで、イメージは様々かと思います。

この春、お身内でご入学された方や新社会人がいらっしゃった場合、「入学祝い」「就職祝い」をお渡しになった方々も多いかと思います。以前は、お祝い品として「万年筆」「ボールペン」「時計」「手帳」などが一般的だったと思いますが、最近は電子化が進み、これらのほとんどの機能が「モバイル」「PC」などに含まれてしまいました。今回は、現金な話ですが、「新しい門出のお祝いはお金で?!」をご一緒に考えてみたいと思います。

三井住友トラスト・資産のミライ研究所が2022年に実施した1万人規模のアンケート調査で、「現在、あなたが困っていること、不安に感じていること」についてお尋ね(複数回答可)したところ、図表1のような結果がでました。

【図表1】

現在、あなたが困っていること、不安に感じていることについての年代別比較

(出所)「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」 (2022年)より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
※「特に困っていないし不安でもない」との回答を除き、TOTALの上位5位までの項目を表示
(注1)親世帯もしくは自分の世帯の介護・医療費

全体で「老後資金」についての不安が第1位でしたが、中高齢層だけでなく20歳代・30歳代でも将来不安の第1位は「老後資金」となりました。これは、2019年の「老後資金2000万円問題」やそれ以降の「人生100年時代の老後資金は、公的年金を柱にしつつ、自助努力での準備も大切」との意識が、若い世代にも少しずつ浸透してきていることを示唆しているものと考えています。事実、つみたてNISAの口座数は、2019年から2020年で約100万口座、2020年から2021年では約170万口座の増加となっており、総数で400万口座を超えてきています。世代別にみても、20歳代から50歳代の伸びが大きいことが特徴となっています。

ちょっと嬉しい「ミライへのギフト」

こういった「老後資金への準備意識」が高まりつつある中で、新生活の門出で「将来のライフイベント資金への種を蒔く(まく)」プレゼントを貰ったとしたら、ちょっと嬉しくはないでしょうか。

ここからは、この「ミライの種をプレゼントする仕組み」についてのイメージをお伝えしたいと思います。

まず、親から子へ、祖父母から孫へ「ライフイベント資金の種(入学祝い金・就職祝い金ですね)」をギフトいただきます。金額は「世間相場」で大丈夫です。しかし「お金」でギフトいただくことになります。

次に、その種をどこに「蒔くか」、ですが、ここで登場するのが「複利のチカラ」です。

2000年以降の日本の金利水準を振り返ってみますと、ゼロ金利(マイナス金利)政策を背景にほぼゼロ水準で推移してきています。この間の「資産形成のための投資市場」はどういう状況だったでしょうか。【図表2】

【図表2】

国内債券へ投資した場合の収益率,海外債券へ投資した場合の収益率,国内株式へ投資した場合の収益率,海外株式へ投資した場合の収益率

(出所)Bloombergのデータをもとに当社作成、期間:1985年~2020年。
国内債券:NOMURA-BPI総合、国内株式:TOPIX配当込み(1988年以前はTOPIX)、海外債券:FTSE世界国債インデックス(除く日本)、 海外株式:MSCIコクサイ・インデックス(除く日本、配当込み)

国内外の債券・株式市場の平均リターン(市場の伸び率)について、1985から2020年までをグラフ化してみました。この中で、平均リターン(年率)が一番おとなしい資産は日本株式で、年3.2%でした。

ここで、1985年に新社会人となった方々をイメージしてみます。37年後である今年(2022年度)、多くの方が60歳に到達されると思います。バブル崩壊もリーマンショックもありましたが、1985年の時点で仮に100万円、国内株式のINDEX投資(TOPIX)で運用を開始し、現在まで「存在をすっかり忘れていた」といたしましょう。追加の投資金額はなく、複利運用のみとし、運用に関する税金・手数料などは勘案しない前提で計算しますと、今年(2022年)末の元利合計は約320万円になります。運用資産が海外株式のINDEX投資(外株MSCIコクサイ)であったと仮置きした場合、平均リターン(年率)は8.4%でしたので、上記と同様の前提で計算しますと、今年(2022年)末の元利合計は約1,977万円になります。

大切なことは、37年後に到達する予想金額よりも、「複利で増える」仕組みに「種(お金)を蒔いておく(投資しておく)」ことかと思います。若い世代にとって、一定のリタ―ンが期待できる資産に対する取り組みスタンスとしては「複利で運用する時間」がとても大事な要素だと考えられます。

若い世代、とくに新学期や新生活の門出において「自分で準備するお金」の量は(今後、積みあがっていくとしても)限定的だと思われます。しかし、「門出のギフト(種となる“お祝い金”)」を、時間を味方にした「複利運用の畑」に種蒔きできていたとしたら、現在、老後資金のお悩みはかなり軽減されていて、「100年時代の折り返しで今後取り組みたいライフイベント」へ邁進できる選択肢が拡がっているのでは?と想像してみるのも楽しいですね。

「ミライへのギフト」の器として

では、現時点で「ミライへのギフト」を実現できないでしょうか。

例えば、成年(18歳)到達時や新社会人/就職時(23歳~)、また、結婚時などに「ミライへのギフト」を次の世代に贈り、「複利のチカラ」で増やしていくとすると、

暦年贈与:一般的には祖父母・親から子・孫へ1年間に110万円以内であれば贈与税が課税されない制度

NISA:日本に居住している20歳以上の方が利用できる少額投資非課税制度で、毎年120万円の新規投資(非課税期間は5年間)ができる制度

ジュニアNISA:日本に居住している0歳から19歳の方が利用可能なNISA制度で、年間の非課税枠は80万円(非課税期間は5年間)

などの制度を活用することで「ミライへのギフト」が構築できそうです。
「おじいちゃんから『ミライへのギフト(お祝い金)』を暦年贈与でいただきました。NISAを活用して「複利のチカラ」で将来のライフイベントに備えようと思います。おじいちゃん、無駄遣いしないから安心してね」という御礼状が届いたら、これはこれで嬉しいお便りになりそうです。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者丸岡 知夫まるおか ともお

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 所長
1990年に三井住友信託銀行に入社。確定拠出年金業務部にてDC投資教育、継続教育のコンテンツ作成、セミナー運営に従事。2019年より現職。主な著作として、『安心ミライへの「資産形成」ガイドブックQ&A』(金融財政事情研究会、2020)がある。

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