今年、2022年は欧州連合(EU)の通貨ユーロの流通が開始されてから20年という節目の年になります。流通開始の年である2002年は、サッカーW杯が日韓共催で開催され、日本も韓国も決勝トーナメント(ベスト16)に進出し、大興奮した記憶をお持ちの方も多いのではないかと思います。これ以降、2000年代で日本サッカーは大きく躍進してきたところです。

2000年以降、資産形成の分野で大きく躍進してきた制度といえば、やはり、確定拠出年金(以下、DC)ではないでしょうか。でも、実は、このDC、2000年にDC法という法律ができてから、何度も法改正されてきた歴史があるのです。そしてこの春、また嬉しい法改正がありました。今回のマネーコラムは、このDCに関して特集させていただきます!

1. そもそもですが。。。DCとは? iDeCo(イデコ)って何?

確定拠出年金はDC(Defined Contribution Plan)とも呼ばれる私的年金制度です。

このDC制度は「企業型DC」「個人型DC」の2種類に分けられます。企業型DCは会社制度として加入するものですが、個人型DCは個人が金融機関に申し込むなどして加入するものです。特に個人型DCは"iDeCo(イデコ)"の別称で新聞・雑誌・Webなどによく取り上げられていますので、ご存じの方も多いかもしれません。

図表1:DC制度の種類

DC制度 企業DC:企業が運営する制度 個人型DC(=iDeCo):個人が運営する制度

DC制度の仕組みは、次の3つのステップで簡単に説明できます。

① (企業型であれば主に)企業・(iDeCoであれば)個人が定期的に一定額を掛金としてDC制度に拠出

② その資金を自身で運用

③ 60歳以降に受給権が発生した後、資産を受け取る

主なメリットは、上記3ステップそれぞれについて下記のようになっています。

① 掛金は所得控除の対象

② DC加入中の運用収益は非課税

③ 資産の受け取り時にも、受け取り方(一時金・年金)により各種税制優遇が受けられる

"税制優遇"があり、かつ"原則60歳までは引き出せない"制度であるため、老後資金準備の器として、加入者数が飛躍的に伸びています(普及状況は後述)。

2. 2022年の法改正で何が変わる?

実はこのDC制度、2000年のDC法制定から20年が経過しましたが、その間、時代の流れに沿うように、頻繁に法改正が行われております。そして、2022年以降も立て続けに法改正がなされます。簡単にご紹介します。

図表2:DC制度に関する主な法改正

【施行日:2022年4月,概要:受給開始年齢の上限引き上げ(70歳→75歳)】 【施行日:2022年5月,概要:加入可能年齢の上限引き上げ(60歳→65歳)】 【施行日:2022年10月,概要:企業型DCと個人型DCの同時加入の要件が緩和】 【施行日:2022年12月,概要:DB*DC一体掛金運営/iDeCo掛金上限額一律20,000円へ】 *DB(Defined Benefit Plan)...確定給付企業年金制度の略

ちょうど今月から法改正となったものとして、加入可能年齢の引き上げがあります。

現状では企業型DCもiDeCoも60歳未満の厚生年金保険被保険者が原則(勤め先企業のDC規約により例外あり)ですが、これが企業型であれば70歳未満の厚生年金保険被保険者に、iDeCoも第二号被保険者(主に会社員・公務員)は65歳未満であれば加入できるようになりました。

世間では雇用の長期化・シニア人材の登用促進の流れがありますが、実際に現状60歳を超えても働く人が増えています。2021年における60歳~64歳の就業率は男性82.6%、女性60.1%という高い水準となっています。また、同年における65歳~69歳の就業率は男性59.7%、女性40.6%であり、どの年代も毎年上昇傾向にあります。そういった環境も踏まえ、DC加入可能年齢も引き上げられました。

また今後も、2022年10月からは企業型DC加入者がiDeCoにも同時加入できる要件が緩和されるなど、使い勝手がよくなる法改正が控えています。

3. 皆のDC活用状況は?

では、このDC制度は世間でどれくらい活用されているのでしょうか。

DC制度は下記グラフに示すように、ぐんぐん加入者を伸ばしています。

ご参考にお示しすると、iDeCoの一人当たり掛金額は年間17万円(*)ですので、月額換算で平均1.4万円程度が老後資金準備として積み立てられていることになります(*運営管理機関連絡協議会『確定拠出年金統計資料』2021年3月末より)。

図表3:DC制度の加入状況推移

DC制度の加入状況推移のグラフ (出所)厚生労働省、国民年金基金連合会

では、このDC加入者の老後資産形成意識はどうでしょうか。ミライ研のアンケート調査をもとに、老後資産形成意識の状況を確認してみます。

下記を見ると、DC加入者は非加入者に比して、明確に老後資金準備をしている意識がある方の割合が高いことがわかります。

図表4:老後資金準備をしている人の割合(DC加入・非加入)

老後資金準備をしている人の割合グラフ (出所)厚生労働省、国民年金基金連合会

国民の資産形成層における老後資産形成の有効な器として活用が進むDC制度ですが、これまでも時代に合わせて様々な法整備が進んできています。今後予定されている法改正により、ますます老後資産形成の器としての役割が拡大しそうですね。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者清永 遼太郎きよなが りょうたろう

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2012年に三井住友信託銀行入社。千葉支店勤務後、2015年より確定拠出年金業務部で企業のDC制度導入サポートや投資教育の企画業務等を担当。2019年より大阪本店年金営業第二部で、企業年金の資産運用・制度運営サポートに従事。2021年より現職。

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