今年も残すところ10日ほどとなりました。2022年はみなさんにとってどのような1年になりましたか。世界的には、2月に冬季オリンピックが開催され爽やかなスポーツマンシップで私たちを楽しませてくれた一方、いまだ解決の糸口が見えない争いも続いています。

また、経済的な視点から振り返ってみますと、2021年は2020年のコロナ自粛の反動で大幅な成長であったものの、2022年に入ってからは多くの地域での金融環境の引き締め、ロシアのウクライナ進行、長引く新型コロナウイルスの影響等があり、世界経済の成長率は2022年には3.2%、2023年には2.7%へ鈍化すると予測されています。

【図表1】経済成長率および予測(2022年10月世界経済見通し)

(出所)IMF「Real GDP growth」より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

その一方で、世界のインフレ率は2021年の4.7%から2022年には8.8%に上昇するとIMFでは見込んでいます。

このように単年で見ると、当然ながらさまざまな要因で経済が左右されるということがよくおわかりいただけると思われます。だからこそ、みなさんが資産形成を行う中で取り組む「投資」は、価格の変動をできるだけ安定化させるというポイントを押さえつつ、「長期的な目線で世界経済の成長に沿って自身の資産も成長させていく」ということが非常に重要といえます。

「世界経済の成長に沿って」とは?

「長期的な目線で世界経済の成長に沿って自身の資産も成長させていく」とお伝えしましたが、そもそも世界経済の正体とは一体何でしょうか。世界経済はいわゆるGDP(国内総生産)によって測ることができ、GDPが伸びると世界経済も成長するといえます。ではさらに、GDPとは何でしょうか。

GDPを紐解くと、以下の様に分解できます。

GDP=①人口 × ②1人当たりのGDP

まず①の人口に関しては、日本の人口は少子高齢化で減少していますが、世界的には今後も人口が増加していくと見込まれています【図表2】。

【図表2】世界人口の推移

(出所)United Nations「World Population Prospects 2022」より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

また②の1人当たりの生産は、一人ひとりの生産性を向上させれば増やしていくことができます。生産性を高めるためには、まずはその人自身の労働力を上げる、例えば、1時間に1つ作っていた製品を3つ作るようになれば、生産性は高まりますが、この点はいずれ限界がきます。ですから、より生産性を高めるには、設備などの資本を投じることで生産性を高めることができます。例えば、1時間に手作業で3つ作ることが限界の人に対して、製品を1時間に10個作ることのできる機械を提供すれば生産性がより高まります。さらにここで終わりではなく、この機械自体の技術を高めることでさらなる生産性の向上が期待できます。

このように、人類は人口増加と持続的な技術革新を行うことで長期的には成長を遂げてきており、今後も成長が続くと考えられます。ですから、短期的な事象に左右されることなく「長期的な目線で世界経済の成長に沿って自身の資産も成長させていく」という点が重要と言えるのです。

ただし、今後の世界経済を考えるうえでもう1つ考慮しておかなければならないことがあります。それは「持続的に」成長し続けられるかという点です。SDGsをはじめとして、全ての人類が今後も地球上で安定して暮らし続けていくために、課題を洗い出し、解決に向けてさまざまな活動が行われています。しかし、多様化・複雑化した現代においては、なかなか解決が追い付いていないというのが実態です。ですので、世界経済の成長を支える観点からも、SDGs等の活動は一人ひとりが自分事として取り組むことがとても大切であるといえます。

さて、わたくしも2023年は今よりももう一歩生産性をあげて仕事に邁進する一方で、持続可能な無理のない生活スタイルで健康に過ごしていきたいなと思います。みなさん、よいお年をお迎えください。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者矢野 礼菜やの あやな

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2014年に三井住友信託銀行入社。堺支店、八王子支店にて、個人顧客の資産運用・資産承継に関わるコンサルティングおよび個人顧客向けの賃貸用不動産建築、購入に係る資金の融資業務に従事。2021年より現職。

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