毎年この時期は、自動車税や固定資産税など、「資産に対する税金を意識してしまう季節」だと思いますが、今回は、自宅をお持ちの方にとって、“持ち家(自宅不動産)を資産として考えてみる”観点で考察をしてみます。

自宅不動産を「資産」として考えている?

ご自宅は、当然ですが「資産」です。しかし、ご自身で住み続けている間は、金融資産のように運用して利息や収益が得られるものではありません。では、世の中では、自宅に対してどんな思いを抱えているのでしょうか。ミライ研では「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2022年)において、持ち家保有者の方に「資産としてのイメージ」をたずねています【図表1】。

図表1 自宅に対する「資産」としてのイメージ

自宅に対する「資産」としてのイメージの図

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2022年)より

結果としては、資産として考えている方が24.3%、考えていない方が75.8%となりました。多くの方は、生涯居住するつもりなので、資産(換金できる対象)として不動産をイメージしていないことがわかります。一方で、若年層(20歳代)においては37.1%の方が資産として考えており、保有している方の年代によっても差があることがわかりました。

自宅を資産として活用する方法

確かに自宅に住んでいると、資産として活用するイメージはあまりわかないかもしれません。しかし、住まいを金融資産に変換するさまざまな金融商品・サービスを利用することで、住まいを「活用できる資産」とすることができる場合があります。ここでは、その主な方法を整理してみます。

①人に貸す

②売却する

③売却したうえで住み続ける(リースバック)

④住まいを担保にお金を借りる(リバースモーゲージ)

①人に貸す、②売却する

①人に貸せばその分の賃料が入ってきますので、キャッシュフローを生む資産として考えられます。また、②は売却すると売却資金が入ってきますので、直接的に金融資産に変換できます。

③売却したうえで住み続ける(リースバック)

③は②の派生ですが、「住まいを売却したうえでそこに住み続ける」という選択肢です。これは、「リースバック」という手法で、一旦リースバック業者に住まいを売却し、そのうえで売却した住まいを今度は賃貸物件として借り受けることで、引き続き「同じ家」に住み続ける方法です。

例えば、老後のマネープランを考えたときに、公的年金を柱とはするものの、ゆとりのある生活には少し足りない、といった場合など、「同じ家」に住み続けながら、住まいを金融資産に換えることができます。また、次の世代への相続を見据えると、不動産で相続するよりも現金に換えておきたい場合も考えられます【図表2】。

図表2 リースバックとは

リースバックのイメージ図

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

④住まいを担保にお金を借りる(リバースモーゲージ)

これは③と似ていますが、住まいを売却するのではなく担保にして、金融機関などからお金を借りることで、住み続けながら資金を得る方法です。これをリバースモーゲージといいます【図表3】。

図表3 リバースモーゲージとは

リバースモーゲージのイメージ図

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

住まいは資産であるものの、住み続けている限りはその意識も生まれづらいかもしれません。しかしながら、住まいを金融資産に変換するさまざまな金融商品やサービスが開発されており、セカンドライフを充実させる選択肢を増やせる可能性があります。また、このように住まいを資産として捉えなおすことで、不動産(建物、土地)の再活用を考えてみることは、「空き家問題」という社会課題の解決や、SDGs(持続的な社会の実現)への貢献という観点でも意義があるといえるのではないでしょうか。

ご参考:直近の不動産に関する法改正

なお、相続不動産に関しては、直近2023年4月27日より、「相続土地国庫帰属制度」という新たな制度がスタートしております。((法務省:相続土地国庫帰属制度について)(※外部サイトへ遷移します。)

これは、2021年に改正された不動産登記法に基づくものです。本改正では、所有者不明土地の発生を予防するため、住所等変更登記の申請・相続登記の申請が義務化され、義務に違反した場合の罰則規定も設けられるなど、不動産登記制度の見直しが行われたものです。この相続登記義務化自体は、2024年4月1日施行予定です。(法務省:あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~)(※外部サイトへ遷移します。)

皆さまも、このコラムを機に、固定資産税の納付について準備をしつつも、住まいの資産としての選択肢を少し拡げてみて「こんな活用もできそうだ」とイメージいただくきっかけとなれば幸いです。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者清永 遼太郎きよなが りょうたろう

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2012年に三井住友信託銀行入社。千葉支店勤務後、2015年より確定拠出年金業務部で企業のDC制度導入サポートや投資教育の企画業務等を担当。2019年より大阪本店年金営業第二部で、企業年金の資産運用・制度運営サポートに従事。2021年より現職。

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