連日猛暑が続いておりますが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか?この季節は国内外への旅行や帰省、あるいはリスキリングのための研修など、計画していたイベントが盛りだくさんかと思います。イベントが盛りだくさんな一方で、1年の後半に向けた資産形成先の選択を含め、お金のマネジメントについて考える時期とも重なります。そんなタイミングにこそ、各所で注目が高まっている金融リテラシーに関して、その「リテラシー度」と「金融教育経験有無」や「リスク資産保有有無」等の関係性について、ミライ研で実施した調査結果を踏まえながら考察してみたいと思います。

金融リテラシーとは?

そもそも金融リテラシーとは、一般的には「金融商品やサービスの選択、生活設計などを適切に判断するために、最低限身に付けるべき金融や経済についての知識と判断力」だといわれています。お金は、それ自体が目的というよりも「個々人が個性的な人生を送るための暮らしの道具」と位置付けることができます。道具はその機能と扱い方を知れば、上手に活かすことが可能です。つまり、「金融商品やサービスといった道具を活かすための知識」が、「金融リテラシー」という言葉の本質的な意味だといえます。

約1万人の「金融リテラシー度」をスコア化

ミライ研では全国の現役世代を含む18歳~69歳、約1万人を対象に「金融リテラシー度とファイナンシャル ウェルビーイング(Financial Well-being)に関する実態調査」(2023年)を実施し、家計と金融リテラシーに関する項目を設けました。回答内容に応じて「家計把握力」・「知識と判断力」・「行動力」を測定したうえで、その三要素から総合的な「金融リテラシー度」を三段階(良好・順調・不足気味)として算出し、スコア化しました。「金融リテラシー度」の分布は「不足気味:42.0%・順調:51.7%・良好:6.3%」という結果となりました【図表1】。

【図表1】「金融リテラシー度」の得点分布

*「家計把握力」「知識と判断力」「行動力」の総合得点から、0~33点:「不足気味」、34~66点:「順調」、67~100点:「良好」として算出

「金融リテラシー度」が高い人はどんな人?

スコア化した「金融リテラシー度」を他の項目をクロス集計することで、「金融リテラシー度」の差にどういった特徴がみられるかを調査してみました。まず、金融教育経験と「金融リテラシー度」についてですが、金融教育ありと回答した人は、金融教育なしと回答した人よりも「金融リテラシー度」不足気味の割合が14.3%少ない結果となり、全体的に金融教育経験がある人はない人に比べて「金融リテラシー度」が高い傾向となりました【図表2】。

【図表2】「金融教育経験有無」と「金融リテラシー度」

*「無回答」、選択肢「わからない・答えたくない」を除く
*5%未満はグラフ内の比率表示を省略

こちらの結果に「リスク資産の保有有無」を加味した4グループで分析してみたところ、「金融リテラシー度」に大きな差が見られました【図表3】。金融教育あり、かつリスク資産保有ありでの「金融リテラシー度:良好」の割合を見てみると、22.9%と4つのグループの中で最大となりました。逆にどちらもないと回答したグループは「金融リテラシー度:不足気味」の割合が56.6%と、他のグループと比べて最大となりました。

【図表3】「金融教育経験有無」×「リスク資産保有有無」と「金融リテラシー度」

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)よりミライ研作成
*5%未満はグラフ内の比率表示を省略

また、リスク資産保有以外のお金周りの経験として「住宅ローンの利用【図表4】」や「確定申告経験【図表5】」といった項目で分析してみたところ、【図表3】同様の傾向を確認することができました。

これらの調査から、金融教育における知識面での経験に加えて、お金周りの実践経験がある人が「金融リテラシー度」が高い人の特徴、といえるのではないでしょうか。

【図表4】「金融教育経験有無」×「住宅ローン利用有無」と「金融リテラシー度」

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)よりミライ研作成
*住宅ローンの利用有無:選択肢「わからない・覚えていない」を除く
*5%未満はグラフ内の比率表示を省略

【図表5】「金融教育経験有無」×「確定申告経験有無」と「金融リテラシー度」

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)よりミライ研作成
*5%未満はグラフ内の比率表示を省略

ミライ研の調査でスコア化した「金融リテラシー度」は「家計把握力」・「知識と判断力」・「行動力」から算出しており、これらの力を付つけていくことで、より賢くお金と付き合っていくことができると考えています。社会背景や政策方針も相まって、金融リテラシーを身に付けることへの関心は今後も高まっていくことが想定されますので、本コラムを一つのきっかけに、今年の夏休みから金融リテラシーの学び直しに取り組んでみるのは如何でしょうか?

暑い夏ですが、その先にはきっと“人生の涼風”を感じられることになると思われます。

※本調査結果の詳細についてはぜひ、こちらのレポートをご覧ください(『令和の“金融リテラシー”事情』 金融リテラシー度が高い人とは?(※外部サイトへ遷移します。))。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者桝本 希ますもと のぞみ

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2015年に三井住友信託銀行入社。奈良西大寺支店にて個人のお客さまの資産運用・資産承継に係るコンサルティング業務に従事。2019年よりIT業務推進部にてマーケット事業で利用するシステムの開発・保守業務を担当し、2022年より現職。現職では幅広い世代に対して資産形成、資産活用に関する調査研究並びにホームページやYouTubeを通して情報発信を行っている。

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