11月30日は何の日かご存知でしょうか。そうです。11月30日は「年金の日」です。厚生労働省が“国民お一人お一人、「ねんきんネット」等を活用しながら、高齢期の生活設計に思いを巡らしていただく日”として、毎年11月30日(いいみらい)を「年金の日」と定めているそうです。

今回のコラムは、その「年金の日」が近づいていることから、実際に年金額を把握できている方がどれくらいいらっしゃるか、その把握の仕方、把握時の感想などについて、ミライ研が行ったアンケート調査の結果をもとに見てみたいと思います。

公的年金の受給額は年齢が上がるとともにイメージがわいてくる

実際、年金額を把握されている方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。ミライ研が実施したアンケート調査によれば、公的年金の受給月額をイメージできている方の割合は、18~29歳では28%、30~39歳では35%、40~49歳では44%、50~59歳では56%、60~69歳では78%でした。やはり、年齢が上がるとともにイメージがわいてくるようです。

図表1 世帯で将来受給する公的年金について、おおよその受給月額をイメージできているか

*「できている」=「「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」の試算などで、おおよそイメージできている」、「年金事務所に相談・確認して、おおよそイメージできている」、「FP(フィナンシャルプランナー)や金融機関など第三者に相談して、おおよそイメージできている」、「新聞やテレビ、インターネットの報道・ニュースなどで、世の中の平均的な年金受給額は理解している」のいずれか、「できていない」=「受給する年金の種類くらいはわかるが、金額まではイメージできない」、「金額もわからないし、受給する年金の種類もわからない」、「わからない、答えたくない」のいずれか。すでに受給している方は現在の受給月額について回答、表内年代は、アンケート回答時の年齢。
(出所)特に出所を示していない場合、三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)をもとにミライ研作成

受給額をイメージできている方に対しては、受給額の感想も尋ねてみました。すると、金額が「想定よりも少なかった/やや少なかった」と感じる方の割合が高いことが分かりました。

図表2 公的年金受給額を把握したときの感想

*世帯で将来受給する公的年金について、おおよその受給月額をイメージできていると回答した人のみを集計。5.0%未満はグラフ内の比率表記を省略。

想定とのギャップが小さい人もいる

受給額をイメージされている方について、把握手段別に受給額に対する感想が異なる傾向を示すことが分かりました。図表3は、受給額の把握手段別に公的年金額に対する感想を分析したものです。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」の試算などで把握された方々や、新聞・テレビなどの情報源から把握されている方々は、概ね「少ない」との感想に偏っていますが、FPや金融機関等の第三者に相談して把握した方々は、「金額は想定通りだった」との感想が最も多く、想定とのギャップが小さかったことがうかがえます。「ねんきん定期便」や報道等からの情報の場合だと、もしかすると示されている金額に対してどう捉え、どう判断すればいいのかが難しいということもあるのかもしれません。近年、金融リテラシーや金融経済教育が話題ですが、公的年金を含む社会保障についても、専門家のサポートを得ながら自分事として考えていくことが大切だろうと思います。

図表3 公的年金受給額を把握したときの感想(手段別、複数回答可)

*世帯で将来受給する公的年金について、おおよその受給月額をイメージできていると回答した人のみを集計。5.0%未満はグラフ内の比率表記を省略。

図表4はライフプランを立てている度合い別に、公的年金額に対する感想を分析したものです。ライフプランを立てていらっしゃる方は、公的年金の金額に対して「想定通りだった」と答えている割合が高く、「想定より多かった/やや多かった」「想定より少なかった/やや少なかった」がほぼ同数となっています。

図表4 公的年金受給額を把握したときの感想
(ライフプランを立てている度合い別)

*世帯で将来受給する公的年金について、おおよその受給月額をイメージできていると回答した人のみを集計。5.0%未満はグラフ内の比率表記を省略。
(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2023年)と三井住友トラスト・資産のミライ研究所「金融リテラシー度とファイナンシャル ウェルビーイングに関する実態調査」(2023年)をクロス集計

FP等に相談された方やライフプランを立てていらっしゃる方は、自分や世帯の受け取れる年金額とともに現役期の収支も把握できていると思われます。公的年金額を単体でお考えなのではなく、自分のライフプラン・マネープランのなかでの公的年金の位置づけをしっかり「想定」されているということなのでしょう。

年金額を把握して「想定通り」のセカンドライフを

特に若い方はまだ年金額をイメージできていないとお答えになった割合が高いですが、最近は公的年金シミュレーター(※外部サイトへ遷移します。)で手軽に年金額を把握できるようになっていますのでおススメです。今後の働き方・暮らし方を変えてみたときに年金額がどう変化するかも簡単に分かりますので、ライフプランを立てる際にも役立ちそうです。

また、年代を問わず「年金は想定より少ない」との感想をお持ちの方が多いようですが、「公的年金は払い損ではない」ということを解説したこちらのコラム(※外部サイトへ遷移します。)も、もしよろしければ参考にしてみてください。

さて、もうすぐ11月30日ですね。私も毎年一度はセカンドライフに思いを巡らせて、お金に関して「想定通り」のセカンドライフを迎えられるようにしたいものです。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者杉浦 章友すぎうら あきとも

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 主任研究員
2010年に京都大学大学院理学研究科修士課程修了後、三井住友信託銀行に入社。年金信託部・年金コンサルティング部・年金業務推進部にて、企業年金の制度設計、数理計算業務、年金ALM業務、年金に関する調査・研究・情報発信活動などに従事。2020年7月~2022年3月には厚生労働省へ出向し、年金に関する公務を行っていた。2022年10月より三井住友トラスト・資産のミライ研究所主任研究員。年金数理人、日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会認定アナリスト、1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、AFP。翻訳書として『図表でみる世界の年金OECD/G20インディケータ(2019年版)』(明石書店、2021年、岡部史哉(監修)らとの共訳)がある。

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