「オリンピックと景気」

2019年6月13日

「オリンピックと景気」

来年の東京オリンピックのチケット申し込みが開始されました。専用サイトへのアクセスが集中するなど、大変な盛り上がりですね。そんななか、5月23日の日本経済新聞朝刊に、「建設 はや『五輪後』の秋風」という記事が掲載されていました。

オリンピックと景気にはどのような関係があるのでしょう?

過去の動きがそのまま再現されるわけではありませんが、オリンピックに向けたインフラ投資などが開催時期の前後で出尽くすといった話は耳にされたことがあるのではないでしょうか。それでは、過去のオリンピック開催国について、実際の景気の推移を確認してみましょう。

(図表1)夏季オリンピック開催国のオリンピック開催期前後の実質GDP成長率

(図表1)夏季オリンピック開催国のオリンピック開催期前後の実質GDP成長率

(出所:Datastream・INDB-Accelのデータより作成)

図表1は、1964年以降2016年までの夏季オリンピック開催国について、開催前後の実質GDPの前年同期比の推移を比較したものです。(1980年のモスクワについては、データ入手困難につき掲載していません。)

各国の成長段階が異なることもあり、経済成長率の高低にはかなりのばらつきがあります。また、オリンピック開催前は、成長率が加速している国もあれば、そうでない国もあり、傾向がわかりにくいです。例えば、前回の2016年リオデジャネイロでは、ブラジル経済は世界景気の弱含みや政治不安もありオリンピック前にかなり悪化していました。

一方、オリンピック開催後の成長率は総じて減速傾向にあることが見てとれます。

(図表2)夏季オリンピック開催期前後の実質GDP成長率の平均と最近の日本

(図表2)夏季オリンピック開催期前後の実質GDP成長率の平均と最近の日本

(出所:Datastream・INDB-Accelのデータより作成)

図表2は、過去のオリンピック前後の経済成長率の推移の平均と、2020年の東京オリンピックへ向けた日本の成長率の推移を比較したものです。

日本経済はかなり低成長で推移していますが、過去の平均通りに今後も動くとすると、オリンピックへ向けて少し成長率が加速し、オリンピック後に再び減速することになります。 そうなると、為替への影響はどうでしょう。

景気が減速すると、日本銀行に対して追加金融緩和の期待が高まり、金利に低下圧力がかかることで「円売り」が誘発され、為替相場は「円安」に動くと想定できます。

一方で、日本企業の業績が悪化するとの見方から株価に下落圧力がかかると、その損失をカバーするために、外貨建て資産の利益確定にともなう「円買い」や、リスク回避の動きから「円高」に動く可能性もあります。

為替相場は、日本の景気や金融政策だけで動くわけではないので、海外の経済・金融市場もあわせて考慮する必要がありますね。

(三井住友信託銀行マーケット企画部 瀬良礼子)

《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》

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