「2022年のコンセンサス予想」

2022年1月27日

「今年の金融市場はどうなるか」――。

毎年年末年始になると、各報道機関や調査機関から専門家へのアンケートによる為替相場や株価の年間予想が公表されています。このアンケート調査の平均予想を「コンセンサス予想」と呼んで、現時点で市場参加者が金融市場の先行きをどのように予想しているか、参考にしています。

2022年の為替相場のコンセンサス予想

今年の為替相場はどう動くと見られているでしょうか。表1は、トムソン・ロイターが国内外の専門家を対象に調査したコンセンサス予想です。

(表1)為替相場のコンセンサス予想〈ロイター調査〉

表1

調査日:2022年1月4~6日
回答者:国内外の専門家49名
(出所:Thomson Reuters、為替相場NY終値はBloomberg)

今年3月・12月の予想平均を見ると、ドル・ユーロ・豪ドルの対円レートはやや円安傾向となっています(12月の予想を調査日の為替レートと比較すると、ユーロ円は小幅な円高となっていますが)。

このロイター調査では、今後3ヵ月に為替相場に強く影響する材料についても質問されており、64%の回答者が「金利差」が重要であると答え、「新型コロナ変異株」は4%でした。昨年12月に実施された同じ調査では、「金利差」は41%で、「新型コロナ変異株」が33%でしたので、「金利差」への注目度が大いに高まったことがわかります。

昨年12月調査と今年1月調査の間にはFOMCが開催されており、FRBの資産購入縮小(テーパリング)の加速が決定されたほか、FOMCメンバーのFF金利予想が上方修正されました。これにより、米利上げ観測が米ドル高予想を強く支えるようになったものと思われます。

2021年に豹変したFOMCメンバーの見通し

昨年12月に公表されたFOMCメンバーのFF金利予測の中央値は表2の通りです。メンバー予測中央値の利上げ回数は、2022年3回、2023年3回、2024年2回となっています。昨年9月時点の予測では、2022年が1回でしたので、昨年12月のFOMCではタカ派色がより強く示されたわけです。

(表2)FOMCメンバー予測中央値の変化

表2

FF金利は各年末の予測
(出所:FRB)

ところで、表2では2020年12月のFOMCメンバーの予測と比較しています。2020年末時点では、FOMCメンバーは雇用改善・物価上昇については慎重に見ていましたが、2021年の実際の動きは特に物価上昇率について予想を大幅に上振れたために、見通しを上方修正しています。

これは、FOMCメンバーの予測能力が低いというよりも、将来予想そのものが非常に難しいということを示しています。昨年1年間で金融政策当局者であるFOMCメンバーの見方が表2のように豹変し、金融市場(特に為替相場)に強く影響したわけですから、今年も中銀当局者の姿勢が大きく変化する可能性はゼロではありません。コンセンサス予想は足もとのFOMCメンバー予測を前提にしているため、メンバー予測が変化すれば、マーケットも大きく変動する可能性があります。

2022年の日米株価のコンセンサス予想

続いて、日米株価指数のコンセンサス予想を見てみましょう。表3はQUICK社の調査で、国内の株式市場関係者を対象に2022年の年間高値・安値の予想を調査したものです。

(表3)日米株価のコンセンサス予想〈QUICK調査〉

表3

調査期間:2022年1月4~6日
回答者:株式市場関係者129名
(出所:QUICK月次調査〈株式〉)

日経平均株価の2021年の最高値は30,795.78円、最安値は26,954.81円、同じくダウ平均は最高値36,679.44ドル、最安値29,856.30ドルでした。今年のコンセンサス予想は、日米ともに昨年の最高値を更新する見込みとなっていますが、最安値については、米国株はしっかりと切り上がるのに対し、日本株は昨年並みの安値が見込まれている点が気になります。

同調査においては、2022年の日本株投資のリスク要因について質問されており、「米国株の急落」、「米欧の拙速な金融引き締め」、「米国のインフレ長期化」が重要なリスク要因のトップ3でした。日本株のリスク要因にも関わらず、米国・欧州の事情が重要視されているのが特徴的です(なお、それらに続くのは「岸田政権の資本市場政策」、「中国の経済・金融の混乱」です)。

株価予想で米欧の金融政策への注目度が高いですが、為替相場のコンセンサス予想でも、ロイター調査において「金利差」が注目されています。2022年の各国金融政策、特に米国がこのまま利上げ・バランスシート縮小へ突き進むのか、2021年のように豹変するのか、注視していきたいと思います。

(三井住友信託銀行マーケット企画部 瀬良礼子)

《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》

執筆者紹介 瀬良 礼子

執筆者紹介 瀬良 礼子 せらあやこ

三井住友信託銀行マーケット・ストラテジスト

1990年に京都大学法学部卒業後、三井住友信託銀行に入社。公的資金運用部にて約6年間、受託資産の債券運用・株式運用・資産配分業務に携わった後、総合資金部で自己勘定の運用企画を担当。以後、現在にいたるまで、為替・金利を中心にマーケット分析に従事。

執筆者関連書籍のご紹介
「投資家のための金融マーケット予測ハンドブック(NHK出版)」
「60歳までに知っておきたい金融マーケットのしくみ(NHK出版)」

※NHK出版のWEBページに移動します。

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