「見えてきた米利上げの頂上」

2023年2月22日

「将来の利上げの程度を決めるにあたり」――。

2月1日のFOMC声明では、「将来の目標レンジの引き上げの程度を決めるにあたり、これまでの累積的な金融引き締め、金融政策が経済活動・インフレに及ぼす影響の遅れ、および経済・金融の動向を考慮する」と述べられました。

「利上げのペース」から「利上げの程度」へ

この文言の何が重要かと言うと、上記3点を考慮して決める対象が、12月のFOMC声明では「将来の目標レンジの引き上げのペース」だったものが、2月1日では「引き上げの程度」へと変更されたことです。

2022年にFedは合計4.25%ポイントの利上げを実施しました。最初の利上げ幅は0.25%ポイント、次は0.50%ポイント、6~11月は0.75%ポイントの利上げを4回実施しましたが、12月に0.50%ポイント幅へ縮小しました。2月1日の2023年最初のFOMCではさらに利上げ幅は縮小され、0.25%ポイントとなりました。

利上げ幅が縮小されたことからもわかるように、2022年12月のFOMC声明文を2023年2月と比較すると、いくつか変更点があります。「インフレ率が高止まりしている」から「幾分和らいだ」と変更されたり、ウクライナに対するロシアの戦争について、「インフレの上振れと世界経済の重し」としていたところを「世界的な不確実性の高まりの一因」と言い換えたり、FOMCが政策決定の際に考慮する情報として12月には挙げられていた「公衆衛生」が削除されました。

しかし、最も重要な変更点は、政策決定の対象が利上げのペース(利上げ幅)ではなく利上げの程度へ変更されたことです。これは、利上げの最終局面が政策決定者の視野に入ったことを表しているといえるでしょう。

FOMCメンバーの政策金利見通し

とはいえ、既に2022年12月のFOMC後に公表された「FOMCメンバーの経済見通し」では、2023~2024年のどこかでFF金利がピークをつけるとの予想が示されていました。図1は、FOMCメンバーの各年末のFF金利予想の人数分布をまとめた表です。予想分布の中央値の水準を薄いオレンジ色で網掛けしています。

(図1)FOMCメンバーのFF金利見通し

(出所:FRBのデータより作成)

2022年12月14日時点のFF金利目標レンジは4.25~4.50%、2023年2月1日時点が4.50~4.75%であり、メンバー予想中央値が現状よりも低くなるのは2024年末の4.00~4.25%とすると、利上げのピークはそれまでに到来する見通しとなります。

図1は2022年12月14日時点の見通しですので、当然、FOMCメンバーの見通しも12月から変化してきていると思われます。しかし、2023年2月1日に「利上げの程度」に言及したことで、利上げの最終局面がより近くなったと推測できます。

政策金利のサイクル

利上げを登山に例えると、現在は政策金利の頂上が見えてきたところでしょう。ただ、その頂上の高さがどの程度なのかは、まだ不透明です。実際、2月1日のFOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は、インフレ抑制に向けた取り組みを進め利上げを継続する旨を発言しています。

しかし、米政策金利は為替相場や株価にも影響するため、少し長い目で政策金利の今後の動きを想定しておくことは重要です。その時に参考になるのがサイクル分析の考え方です。

図2はFF金利・インフレ率・失業率の推移を表したもので、赤い三角印は利上げ開始時を示しています。利上げ開始時の間の月数を赤字で表示しています。

(図2)米政策金利とインフレ率・失業率

(出所:Bloombergのデータより作成)

1970年代後半以降、FF金利はだいたい3~5年で一巡しており、平均で66.6ヵ月となっています。ただし、2004~15年のように10年超にサイクルが伸びたケースもあるため、単純平均の取り扱いには注意が必要です。

今回の利上げ局面はかなり速いペースで金利が引き上げられたため、過去平均よりは短めのサイクルになる可能性もありますが、政策金利サイクルを5年とすると、次の利上げ開始は2027年前半頃が見込まれます。となると、それまでに「金利ピーク→利下げ局面→金利ボトム」の流れが到来するわけで、金融政策の方向転換に慌てないよう、行動計画を練っておくことが肝心です。

(三井住友信託銀行マーケット企画部 瀬良礼子)

《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》

執筆者紹介 瀬良 礼子

執筆者紹介 瀬良 礼子 せらあやこ

三井住友信託銀行マーケット・ストラテジスト

1990年に京都大学法学部卒業後、三井住友信託銀行に入社。公的資金運用部にて約6年間、受託資産の債券運用・株式運用・資産配分業務に携わった後、総合資金部で自己勘定の運用企画を担当。以後、現在にいたるまで、為替・金利を中心にマーケット分析に従事。

執筆者関連書籍のご紹介
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