日本の高齢社会は暗くない
高齢社会の「本当の姿」とは?
日本は4人に1人が65歳以上という、世界で類を見ない超高齢社会に突入しました。福祉・医療費の増大や、介護問題…。日本の近未来は暗いイメージで語られることが多いですが、さまざまな情報を集めてみると、意外と知られていない高齢社会の“新しい姿”が見えてきます。
実は都会に多い自宅暮らし
「地方は高齢化が進んでおり、高齢者人口も地方に多い」と思われがちですが、このデータを見ると、65歳以上の高齢者のうち約半数が都市部に住んでいることが分かります。
地方は高齢化がピークに近い一方、都市部の高齢者人口の増加率は2040年までに50%を超えます。人数ベースでも、2010年から2025年までの75歳以上の増加見込みは、島根県で1.8万人、山形県で2.6万人であるのに対し、東京都で74万人、神奈川県で69万人、大阪府で68万人となっています。
しかし、現在の介護保険は先行して高齢化が進んだ地方の体制整備に充てられてきました。高齢者が急増する都市部では、医療・介護サービスの著しい不足が予想されます。高齢化の本当の問題は、地方ではなく都市にあるといえるでしょう。
今後こうした問題に対応するためには、都市部の医療・介護サービスの受入れ体制の整備が急務といえます。都市部は人口が密集しているため、社会的共同生活の維持が難しい地域となる懸念は少ないですが、地域の中でお互いを助け合う“共助”の仕組みをつくることも重要です。
高齢者の9割以上は自宅暮らし
全国には高齢者施設(介護保険施設や有料老人ホームなど)が多数あり、65歳以上の高齢者の9割以上が自宅暮らしというデータは、意外に感じるかもしれません。しかし、地縁や血縁のある住み慣れた街、住み慣れた家に最期まで暮らし続けたいと思うのは当然のことです。
自宅暮らしで注意したいのは思わぬ事故です。高齢者の家庭内事故死は交通事故死の約2倍で、中でも浴槽内で溺れて亡くなる方が多くなっています。住み慣れた自宅であっても身体の変化によって危険が増す場合があります。廊下や風呂・トイレなどへの手すりの設置、段差をなくすスロープの設置など、バリアフリーのためのリフォームは家庭内事故への対策として有効で、50万円の改修費用で200万円の医療費が節約できるという人もいます。
一方、年を重ねるごとに家事が億劫になり、住み替えを希望される方が増えることも事実です。住み替えには駅に近い場所や今までよりも狭い住宅へ移る、高齢者施設に入居するといった選択肢があります。住まいに関する情報や専門家のアドバイスを参考に、自分に一番合った老後の住まいを見つけることが大切です。