気象庁の予報では、2022年の夏の気温は全国的に平年より高くなる予想だそうです。かつては夏でも夜になると少し涼しさが感じられましたが、最近の夏は夜になっても暑く「地球温暖化の影響かな」と感じる方も多いのではないでしょうか。そういった"異常気象"が身近になってよく耳にするのが「SDGs」という単語ではないでしょうか。最近では、「SDGs週間!」と銘打った企画等もありますよね。ミライ研では今年1月に実施したアンケート調査で、「SDGs」という言葉についてお伺いしました。すると48%の方が内容までおおよそわかる、37%の方が内容はよくわからないが言葉は聞いたことがあると回答されました。聞いたことがないは15%にとどまり、世の中的にも「SDGs」という言葉が市民権を得てきていることが伺われます【図表1】。

【図表1】あなたは「SDGs」という言葉について、どの程度ご存じですか
(n=11,179)

48%:内容までおおよそわかる,37%:言葉は聞いたことあるが、内容はよくわからない,15%:この言葉を聞いたことがない

(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2022年)より作成

「SDGs」とは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で掲げられた国際目標「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。17のゴールと169のターゲットによって、地球規模での目指すべき到達点が描かれており、2030年までの達成を目指しています。

SDGsと金融機関の関わり

このSDGsに対しては、金融機関も自身が主体となりSDGsの17の目標に対する取組みを行っています。加えて、「金融=貸し手と借り手のお金を融通する立場」としてもエンジン役としての機能を果たしています。例えば企業にお金を融資する際、融資するタイミングのみならず、継続的にその企業が社会に貢献しているかどうかを確認しています。

その観点の1つが、ESGです。「ESG」とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字をとった略語です。企業を業績といった従来的な財務面で評価するだけでなく、非財務面であるE・S・Gを考慮したうえで投融資を行う考え方です。

現段階ではESGを測る指標は、多数の評価機関が独自の指標で行っています。しかし世界全体のESG投資額は、2年に1度、世界持続的投資連合(GSIA)が発表しています【図表2】。日本については欧米に比べて遅れていたものの、急速に増加している状況です。

【図表2】地域別のESG投資額

【アメリカ】2016年:8,723兆ドル, 2018年:11,995兆ドル, 2020年:17,081兆ドル 【ヨーロッパ】2016年:12,040兆ドル, 2018年:14,075兆ドル, 2020年:12,017兆ドル 【カナダ】2016年:1,086兆ドル, 2018年:1,699兆ドル, 2020年:2,423兆ドル 【オーストララシア】2016年:516兆ドル, 2018年:734兆ドル, 2020年:906兆ドル 【日本】2016年:474兆ドル, 2018年:2,180兆ドル, 2020年:2,874兆ドル

(出所)世界持続可能投資連合(GSIA)「GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW 2020」より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
※いずれの年においても、日本を除くエリアは前年12月31日、日本は同年3月31日までに報告された数値による
※米ドルへの換算レートは、各年報告時の為替レートによる
※ヨーロッパ:オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン、イギリス、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン

SDGsの実現に向けて

この「SDGs」は、本コラムの第4回でも触れた「金融教育」とともに教科書にデビューした項目でもあります。ミライを生きる子どもたちにとってはまさに自分事の課題かと思います。しかし大人である私たちも、目先の成長にだけとらわれ、地球規模での社会的・経済的・環境的な負債を抱えた「ミライ」を将来に遺すのでいいのでしょうか。そうではなく持続可能な「ミライ」を引き継ぐために、投資の面でもSDGs・ESGを意識して取り組んでみませんか。

「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は、人生100年時代に適応した資産形成や資産活用に関する調査・研究を中立的な立場で発信することを目的として、2019年に三井住友信託銀行内に設置した組織です。人生100年時代を安心して明るく過ごすために、資産形成・資産活用に関する情報をホームページや書籍を通してお届けしています。

今週の執筆者矢野 礼菜やの あやな

三井住友トラスト・資産のミライ研究所 研究員
2014年に三井住友信託銀行入社。堺支店、八王子支店にて、個人顧客の資産運用・資産承継に関わるコンサルティングおよび個人顧客向けの賃貸用不動産建築、購入に係る資金の融資業務に従事。2021年より現職。

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